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【安田記念 AI予想】波乱の立役者となりそう!? 波に乗るAIが今週も人気薄の伏兵を指名

  • 2024年05月27日(月) 18時00分

単勝オッズ46.6倍(9番人気)のダノンデサイルが優勝(撮影:下野雄規)



netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

2番人気以内の馬がしばらく勝ち切れていない点に注意


AIマスターM(以下、M) 先週は日本ダービーが行われ、単勝オッズ46.6倍(9番人気)のダノンデサイルが優勝を果たしました。

伊吹 もうお見事と言うほかありません。五分のスタートから積極的に出していき、早々に最内のポジションを確保。そのまま先団につけ、ジャスティンミラノ(2着)のすぐ内でレースを進める形に持ち込んでいます。3コーナーの手前で後方からサンライズアース(4着)やコスモキュランダ(6着)が押し上げてきたものの、ここで無理に動かず、インコースをキープしたままゴール前の直線へ。前を行くシュガークン(7着)、エコロヴァルツ(8着)に残り400m地点のあたりで内から並びかけ、残り200m地点の手前で完全に抜け出し、結局ジャスティンミラノに2馬身の差をつけて入線しました。ダノンデサイルが秘めていた潜在能力の高さと、横山典弘騎手の完璧なレース運びがしっかり噛み合っての完勝。長く語り継がれる一戦となりそうですね。

M ダノンデサイルはGI初制覇。皐月賞は発走直前の段階で競走除外となってしまいましたから、陣営にも期するところがあったのではないでしょうか。

伊吹 皐月賞では鞍上の横山典弘騎手が歩様に違和感があると申し入れたとのこと。陣営にとっては無念の決断だったと思いますし、トラブル明けの大舞台ということで、中間の調整が難しかったであろうことも想像に難くありません。もともとダノンデサイルは1歳時のセレクトセールで1億4850万円の値が付いた馬。母のトップデサイルは現役時代にBCジュベナイルフィリーズ(米G1)で2着となった実績があります。紆余曲折があった中で素質馬を仕上げ切った陣営の手腕も、レースの内容とともに語り継いでいきたいです。

M ちなみに、3着となったのは先週の当コラムでAiエスケープが注目馬に指名したシンエンペラー。単勝オッズ17.8倍(7番人気)の低評価を覆しての好走でした。

伊吹 こちらも素晴らしい見立てだったと言って良いのではないでしょうか。ヴィクトリアマイルのテンハッピーローズ(1着)、オークスのライトバック(3着)に続き、3週連続でAiエスケープの注目馬が馬券圏内を確保。良い流れが続いています。まぁ、AIに対して“流れ”という表現を使うのはおかしな話かもしれませんが……(笑)。まだ上半期のビッグレースは残っていますし、今後も楽しみです。

M 今週の日曜東京メインレースは、現役屈指のマイラーが一堂に会する注目の大一番、安田記念。昨年は単勝オッズ7.4倍(4番人気)のソングラインが優勝を果たしました。波乱の決着となった年もあるとはいえ、どちらかと言えば堅く収まりがちな印象があります。


伊吹 実際、2010年から2017年までの計8回は3連単の平均配当が26万9120円だったものの、2018年から2023年の計6回は5万1218円。以前よりも高額配当決着となる確率が下がったと見るべきでしょう。ただし、単勝1番人気の支持に応えて優勝を果たしたのは、現在のところ2015年のモーリスが最後。その後のここ8回に限ると、単勝1番人気馬だけでなく単勝2番人気馬も優勝例がありません。


M 単勝1番人気馬は過去10年の3着内率が8割。ある程度は素直に信頼して良さそうですが……。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2番人気から単勝4番人気の馬は2014年以降[4-4-3-19](3着内率36.7%)、単勝5番人気から単勝10番人気の馬は2014年以降[4-2-3-51](3着内率15.0%)、単勝11番人気以下の馬は2014年以降[0-1-1-58](3着内率3.3%)となっていました。妙味あるオッズの伏兵が上位に食い込んだ例はわりとありますから、そのうちまた大きな波乱があるかもしれません。

M そんな安田記念でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ダノンスコーピオンです。

伊吹 思い切ったところを挙げてきましたね。実績上位の一頭ですが、今回はあまり人気がなさそう。

M ダノンスコーピオンは3歳時にNHKマイルCを制したGIウイナー。しかし、次走の富士Sで3着となった後は8戦連続で4着以下に敗れています。前走の京王杯スプリングCでは勝ったウインマーベルから0.5秒差の4着に健闘したものの、さらに強力なメンバー構成となる分、注目度はかなり下がるのではないでしょうか。

伊吹 少なくとも上位人気グループの一角を占めるということはなさそうですし、今のところ単勝二桁人気クラスにとどまりそうな雰囲気。この馬が来たら高額配当決着になりそうですね。絶好調なAiエスケープが中心視していることを踏まえたうえで、私はレースの傾向から評価してみようと思います。

M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりでしょうか?

伊吹 安田記念はコース適性が明暗を分けがち。2017年以降の3着以内馬21頭中20頭は、東京の重賞で“着順が1着、かつ上がり3ハロンタイム順位が5位以内”となった経験のある馬でした。


M なるほど。東京の重賞を勝ったことがない馬は強調できませんね。

伊吹 東京の重賞を勝ったことがある馬であっても、先行力の高さを活かして勝ち切った馬は上位に食い込めていなかったので、該当馬は扱いに注意するべきだと思います。

M 先程も触れた通り、ダノンスコーピオンは3歳時にNHKマイルCを勝っているうえ、当時の上がり3ハロンタイム順位が4位。強調材料のひとつと見て良さそうです。

伊吹 あとは近走成績もしっかりチェックしておきたいところ。同じく2017年以降の3着以内馬21頭中19頭は、前年以降のGIで“着順が5着以内、かつ4コーナー通過順が9番手以内”となった経験のある馬でした。


M 前年か同年のビッグレースで善戦した実績のない馬は過信禁物、と。

伊吹 一応付け加えておくと、近年は極端に先行力が低い馬も期待を裏切りがち。好位やそれに準ずるポジションでレースを進められそうな実績馬を重視するべきでしょう。

M ダノンスコーピオンは2023年以降のGIを2戦していますが、いずれも13着に敗退。残念ながらこの条件はクリアしていません。

伊吹 さらに、生産者がNorthern Farm・ノーザンファーム以外の馬は2017年以降[2-2-1-68](3着内率6.8%)といまひとつ。3着以内となった5頭のうち3頭は、前年の安田記念において7着以内となった経験がある馬でした。


M ノーザンファーム生産馬と、既にこのレースである程度の結果を残している馬が優勢ですね。

伊吹 おっしゃる通り。どちらにも該当していない馬は、たとえ実績上位であっても疑ってかかるべきだと思います。

M ダノンスコーピオンはケイアイファームの生産馬で、昨年の安田記念も13着どまり。レースの傾向からは強調しづらい一頭ということになるのでしょうか。

伊吹 正直なところ、私は無印にする予定でした。この馬よりも好走確率の高そうな馬はたくさんいますし、苦戦する可能性が高そうです。ただ、他ならぬAiエスケープが有力視しているというのは気になる事実。まったくのノーチャンスという馬ではありませんから、連軸とする馬の人気も考慮したうえで、押さえるかどうか検討しようと思います。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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