スプリンターズSに3頭の精鋭を送る絶好調の安田隆行厩舎。重賞3連勝中のカレンチャン、昨年の雪辱に燃えるダッシャーゴーゴー、悲願達成の立役者トウカイミステリー。楽しみな一戦を前に、安田調教師を直撃します。
◆安田隆行
1953年3月5日生まれ、京都府出身。71年栗東・梶与三男厩舎で騎手候補生となり、翌年騎手デビュー。その名を広めたのはトウカイテイオーとのコンビ。新馬戦から無敗のまま皐月賞を勝利し、続くダービーも優勝。念願の「ダービージョッキー」となった。
94年2月、20年以上に及ぶ騎手生活にピリオドを打つ。通算成績は6401戦680勝。
95年に栗東で厩舎開業。00年にシルヴァコクピットできさらぎ賞を勝利し重賞初制覇。悲願のGI制覇はその10年後、トランセンドでのジャパンCダートだった。翌11年も同馬でフェブラリーSを制し、GI2勝目。また同年はGIを含め、重賞7勝(9月23日現在)と絶好調。スプリンターズSにも人気馬を続々送り込むなど、その勢いが止まらない。
◆「即答!10の質問」
ファンの皆様の質問にお答え!
Q1.スプリンターズSは、安田厩舎の皆様はとても楽しみなのではないでしょうか。正直なところ、何頭も出走できることはうれしいですか? 逆にライバルになってしまうので複雑なお気持ちですか?
正直言って、うれしいです。やっぱりそれだけ相手が減りますし、チャンスも増えますからね。うれしいことです。
Q2.カレンチャンとダッシャーゴーゴーは同い年。やっぱりライバルとして育てられてきたのですか?
いや、ライバルと言うより、たまたま同じ世代で上手く安田厩舎で顔を合わせたっていうことですのでね。
これまでの過程でライバルっていう意識は、正直言ってなかったです。夏は、カレンチャンは北海道で、ダッシャーゴーゴーはCBC賞まででした。だから今までは、顔を合わすことがほとんどなかったんですよ。
だけど今回は、ダッシャーゴーゴーにしろカレンチャンにしろ、人気はするでしょうしね。今度は、本当のライバルですね。
Q3.「カレンチャン」って、娘と同じ名前なんです(=∩_∩=) うちのかれんちゃんはお転婆なのですが、安田厩舎のカレンチャンはどんな仔ですか?
あはは(笑)。もうね、うちのカレンチャンはお利口さん! 本当にお利口さんですよ! 馬房にいる時なんか本当に大人しいですしね。頭を撫でてあげるとこうやって頭を下げて、手を出したらペロペロなめるんですよ。素敵なカレンチャンですよ、うちのカレンチャンは!
Q4.トウカイミステリーでの北九州記念勝利、本当におめでとうございました。先生の長年の夢が叶って、どんなお気持ちですか?
ジョッキー時代、小倉でたくさんの馬に乗せていただきまして。小倉大賞典、小倉記念、小倉3歳Sを勝つことができて、北九州記念だけは勝てなかったんです。
小倉競馬場長の計らいで、小倉で引退式をさせていただいたんですけど、その時にファンへ向けて「自分は北九州記念だけは勝てなかったんです。調教師になった暁には、自分の管理馬で北九州記念を狙って勝ち獲りたい。その時はまたよろしくお願いします」と、そんなコメントを言ったんです。
それが17年かかって、ようやく達成できたんですけどね。だからもう、感無量でしたね。
Q5.スプリンターズSは外国馬が何頭も参戦しますが、そのことによる難しさってあるんですか?
難しさというのはないですね。むしろペースを乱してくれる方が良いんですけどね。
ただ今年は、世界最高のスプリンター・ロケットマンが来るそうなので、内心はちょっとドキドキしています。「どんな競馬をするんだろう」「果たして太刀打ちできるのかな」と、そちらの方が大きいわけですね。
でも、世界最高のスプリンターが中山競馬場でどんな競馬をするのかなっていう興味もありますよね。
Q6.「絶対に出遅れる馬」と「絶対にかかる馬」、どちらの方が勝たせることができるものですか?
勝つ確率としては、出遅れる方が高いですね。ひっかかる馬っていうのは、騎手が引っ張って、馬は行きたがって、そこでケンカするわけです。その時のエネルギーの消耗ってすごいんですよ。そのエネルギーって、本当に莫大なものなんですね。
その点出遅れっていうのは、先行馬だと確かに辛いですけど、後方から行く馬だったらそれを上手く利用して馬をリラックスして走らせて。手綱がぶらぶらするくらいにリラックスして走っていたら、終いの脚を活かせると。そういうことで、僕は出遅れの方が大丈夫だと思いますね。
Q7.安田隆行先生は元騎手でいらっしゃいますが、今でも騎手目線でレースを見てしまうことってありますか?
騎手目線…そうですね、敗因として「騎手としてはこういう風なので仕方ないな」っていうのは分かります。「ああなってこうなって、あの時の気持ちってこうで」っていう内面的な事情は、やっぱり騎手であった限り分かりますね。でも、「あれはちょっとおかしいよ」っていうのも分かります。
Q8.ホーマンフリップがついに復帰。昨年の骨折はショックでしたが、いよいよこの時が来たかと、楽しみです。長期ブランク明けですが、これからの手応えを教えてください。
先日競馬を使いまして、7着だったんですけれども(仲秋特別、11/9/11、阪神芝1400m)、10か月ぶりにレースに挑んで、レース後に筋肉痛がひどかったんですよ。
骨は異常なかったんですけど、筋肉痛がひどいということで、2週間、もしくは3週間リフレッシュするために、ノーザンFしがらきに放牧に出しました。次の京都の後半くらいには行きたいなと思っています。
Q9.毎週末、出走馬を見て展開を予想するのが趣味です。それで馬券を買った騎手が、自分が考えていたのと同じレース展開をしてくれると、その騎手をその後も信頼して買い続けます。調教師の方から見て、「この騎手はいいな」と特に一目置くのはどなたですか?
う〜ん、常々いいなっていう人はいますけど、特定的なジョッキーの名前はちょっと伏せておきます。
ただ、いいなと思うのは、辛抱してくれるジョッキーですね。馬込みに入ってもジッと辛抱して、きるだけ追い出しを待ってくれるようなジョッキーはいいですよね。焦って無理やりガンっと出るようなのは、あれは良くないと思います。
Q10.もしもジョッキーが、競馬で納得できないレース振りをしたらどうされますか? 怒ったりしますか? それとも、優しくアドバイスしますか?
僕は、怒ったりしないんですけど、アドバイスもしないですね。うん、怒ったりもしないけど、アドバイスもしない。まあ、正直次は…。そこはシビアに、次は他のジョッキーに替えます。これが現実です、本当に。