先週まで解説していた
'09年菊花賞の
スリーロールスや万馬券を2点目で当てた
'09年アルゼンチン共和国杯の
アーネストリーなどは、前走条件戦で、その鮮度を利用して激走したMでは基本的なパターンだった。先々週
弥生賞で7番人気3着した
ダイワファルコンに至っては、前走500万を負けての格上挑戦だったのだ。同じ500万負け後のGII挑戦ということなら、
'06年セントライト記念で単勝67.8倍の
トーセンシャナオーを本命にして当てたときも、500万負け後を敢えて狙って予想したのだった。
500万を負けた馬が伝統のGIIを勝つ。格や経験なんかより、鮮度が如何に大切かと言うことを、これらの結果は端的に表している(トーセンシャナオーの場合は、以後、条件戦でも最高が5着だった。つまり、格や経験は元より、能力と比べても鮮度の比重の方が遙かに大きいのだ)。
逆に
中山記念では、前走条件戦で鮮度の高い
キングストリートが1番人気に支持されたが、今度は4番手評価に抑えて予想した。
このように、前走条件戦からの鮮度馬は、当たり前だが、激走するときもあれば、凡走するときもある。この違いが分かればMで穴を当てる確率をグッと上げることが出来るわけだ。
では、その境目は、一体どこにあるのか?
もちろん、そこには「精神的な問題」という、Mの基本が横たわっている。その境界線を、今までの鮮度馬を分析することで見ていきたい。
まず、1番人気で凡走したキングストリートのケースから見ていこう。
同馬の場合、前走が前半36.1秒−上がり33.5秒の超スローを先行しての勝ち。これでは、次走で激流になって揉まれたときに、前走より馬が辛く感じてしまう。今回は中山で前に行くメンバーが多い。しかも内枠。前走より競馬がハードに感じる確率は極めて高い。馬は「前走との落差」の中で、その落差を感じながら走るのだ。
この場合、格上げのフレッシュさを感じて走る喜びを得るより、辛さを感じる度合いの方が大きくなる。加えて、同馬の父はキングカメハメハ。キングカメハメハ産駒は、体力で走るタイプで、
C的要素(集中力)[注 1] は希薄。前走より激しく揉まれる形になることを好む血統背景はない。
ただ、同馬の場合、鮮度以外に1つプラスポイントがあったのだ。それは2走前。小回り中京で前半34.1秒の激流を凌いで勝っているのだ。つまりタフさに対する精神的備えが2走前にある。この記憶が、馬を奮い立たせるかも知れない。しかし、その2走前は14番枠と外枠だった。そして自身の上がりは34.4秒と速い。つまり、それほど揉まれず、また馬場レベルが軽く、ハイペースでもレース摩擦が少なかった部分も否定できない。この2走前のプラスとマイナスの両ポイントと鮮度を総合的に考慮して、私は今回は4番手評価が妥当と判断した。結果、激流になったので揉まれて7着。それでも、差し競馬の中で3角5番手以内の馬では2番目の入線だった。もし流れが緩めば、鮮度の方が勝って、あるいは2、3着になっていたかも知れない。
このように、鮮度のある馬も、前走と今走の「記憶の差」を考えなければいけないのだ。
記憶の落差の中で馬は生き、そして走る。その落差を考えたお陰で、私はこの中山記念で勝った13番人気
トーセンクラウンを本命にし、馬単408倍を当てることが出来たわけである。
[注 1]
C(集中力)集中して他馬との相手関係の中で走ろうとする性質。レース間隔を詰めたり、馬体重を絞ったり、ハイペース、内枠、強い相手との競馬など、摩擦の多い状況を得意とする。Cの由来は集中力を意味する英語"Concentration"の頭文字から。
お知らせ Mの法則の凄さをさらに体感するなら、毎週金曜日20時更新のコラム「
馬券の天才かく語りき」を是非お読みください。現在、種牡馬ごとの分析、ならびに直近のレースでの検証など、週末の予想からすぐに使えるテーマを連載中です。
※「馬券の天才かく語りき」は
netkeibaプレミアサービスのコラムです。
|
今井雅宏の新刊が好評発売中! 今井雅宏の新刊『競馬王新書 ポケット版大穴血統辞典』が好評発売中です。
天才・今井雅宏が穴党のためだけに構築した血統辞典『ウマゲノム版種牡馬辞典』の最新刊でもあり、持ち運び可能なポケット版となっています。競馬場でパラパラと見ながら馬券の参考にできるのが最大の特徴。
80頭分の父・母父の心身構造を、タイプ(M3タイプ)、走りやすいパターン(オプション)、好不調の波(リズム)、激走・凡走能力(指数)などでワンポイント解析します。
もちろん、netkeibaプレミアコラム「馬券の天才かく語りき」も完全収録しています!
|