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格上げ戦の狙い方(1)

  • 2010年03月17日(水) 17時20分
 先週まで解説していた'09年菊花賞スリーロールスや万馬券を2点目で当てた'09年アルゼンチン共和国杯アーネストリーなどは、前走条件戦で、その鮮度を利用して激走したMでは基本的なパターンだった。先々週弥生賞で7番人気3着したダイワファルコンに至っては、前走500万を負けての格上挑戦だったのだ。同じ500万負け後のGII挑戦ということなら、'06年セントライト記念で単勝67.8倍のトーセンシャナオーを本命にして当てたときも、500万負け後を敢えて狙って予想したのだった。

 500万を負けた馬が伝統のGIIを勝つ。格や経験なんかより、鮮度が如何に大切かと言うことを、これらの結果は端的に表している(トーセンシャナオーの場合は、以後、条件戦でも最高が5着だった。つまり、格や経験は元より、能力と比べても鮮度の比重の方が遙かに大きいのだ)。

 逆に中山記念では、前走条件戦で鮮度の高いキングストリートが1番人気に支持されたが、今度は4番手評価に抑えて予想した。

 このように、前走条件戦からの鮮度馬は、当たり前だが、激走するときもあれば、凡走するときもある。この違いが分かればMで穴を当てる確率をグッと上げることが出来るわけだ。

 では、その境目は、一体どこにあるのか?

 もちろん、そこには「精神的な問題」という、Mの基本が横たわっている。その境界線を、今までの鮮度馬を分析することで見ていきたい。

 まず、1番人気で凡走したキングストリートのケースから見ていこう。

 同馬の場合、前走が前半36.1秒−上がり33.5秒の超スローを先行しての勝ち。これでは、次走で激流になって揉まれたときに、前走より馬が辛く感じてしまう。今回は中山で前に行くメンバーが多い。しかも内枠。前走より競馬がハードに感じる確率は極めて高い。馬は「前走との落差」の中で、その落差を感じながら走るのだ。

 この場合、格上げのフレッシュさを感じて走る喜びを得るより、辛さを感じる度合いの方が大きくなる。加えて、同馬の父はキングカメハメハ。キングカメハメハ産駒は、体力で走るタイプで、C的要素(集中力)[注 1] は希薄。前走より激しく揉まれる形になることを好む血統背景はない。

 ただ、同馬の場合、鮮度以外に1つプラスポイントがあったのだ。それは2走前。小回り中京で前半34.1秒の激流を凌いで勝っているのだ。つまりタフさに対する精神的備えが2走前にある。この記憶が、馬を奮い立たせるかも知れない。しかし、その2走前は14番枠と外枠だった。そして自身の上がりは34.4秒と速い。つまり、それほど揉まれず、また馬場レベルが軽く、ハイペースでもレース摩擦が少なかった部分も否定できない。この2走前のプラスとマイナスの両ポイントと鮮度を総合的に考慮して、私は今回は4番手評価が妥当と判断した。結果、激流になったので揉まれて7着。それでも、差し競馬の中で3角5番手以内の馬では2番目の入線だった。もし流れが緩めば、鮮度の方が勝って、あるいは2、3着になっていたかも知れない。

 このように、鮮度のある馬も、前走と今走の「記憶の差」を考えなければいけないのだ。

 記憶の落差の中で馬は生き、そして走る。その落差を考えたお陰で、私はこの中山記念で勝った13番人気トーセンクラウンを本命にし、馬単408倍を当てることが出来たわけである。

[注 1]C(集中力)
集中して他馬との相手関係の中で走ろうとする性質。レース間隔を詰めたり、馬体重を絞ったり、ハイペース、内枠、強い相手との競馬など、摩擦の多い状況を得意とする。Cの由来は集中力を意味する英語"Concentration"の頭文字から。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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