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フランス・アルカナ社「オーガスト・イヤリングセール」

  • 2011年08月31日(水) 12時00分
 8月22日〜25日までフランスのドーヴィルで、アルカナ社主催の「オーガスト・イヤリングセール」が開催された。

 欧州の主要なイヤリングセールでは、開催時期が最も早いのがこの市場である。北半球のほぼ全域に金融不安が広がる中、ヨーロッパも例外ではなく、厳しい経済状況の下で今季のイヤリング・マーケットがどんな動き方をするのか、関係者が例年以上に注目するセールとなった。

 市況は、総売り上げが前年比17.2%アップの3,146万ユーロで、平均価格が前年比1.5%アップの95,924ユーロ。中間価格こそ前年を7.1%下回る65,000ユーロにとどまったが、バイバックレートは前年の32.4%から25.1%への大幅良化するなど、予想外の好結果となった。

 開催前夜、現地でさかんに囁かれていたのが、トップエンドの価格帯が暴落するのではないか、との懸念だった。近年の欧州市場における高い価格帯の主要プレイヤーのうち、ロバート・オグデン氏、モラタラ卿、シャドウェルらの不参加が確定。中間以下の価格帯を支えるプレイヤーの数に不足はなかったものの、マーケットの上の部分の崩壊が相場全体の足を引っ張ることが危惧されていた。

 バイバックレートの低下や、平均価格や中間価格に表れた手堅い数字は、ほぼ関係者の事前の予測通りのものであった。一方、予想外だったのが、上の価格帯も値崩れしなかったことである。

 最高価格は、2日目に上場された上場番号138番、父ガリレオ・母サンジダの牝馬に付けられた、170万ユーロだった。前年の最高価格が60万ユーロで、100万ユーロを越える馬はよもや出まいと見られていただけに、驚きの価格となった。

 購買したのは、豪州人馬主のポール・ファッジ氏の組織ワラター・サラブレッズだ。ポール・ファッジ氏と言えば、7月に来日しJRHAセレクトセールで2頭を購買された方だから、ご記憶の方も多いと思う。叔母に、昨年の仏オークス馬で、今年の凱旋門賞の有力馬となっているサラフィナがるというこの牝馬は、フランスで競馬をすることになる予定だ。

 ガリレオ産駒は、この馬を含めて13頭が、合計4,015,000ユーロ、平均30万ユーロを越える価格で購買され、市場を牽引することになった。

 ポール・ファッジ氏のワラター・サラブレッズは更に、上場番号133番の父ガリレオ・母ロイヤルハイネスの牡馬を市場3番目の高値となる50万ユーロで、上場番号31番の父インヴィンシブルスピリット・母エルギャラントの牡馬を市場5番目の高値となる44万ユーロで購買。高額価格帯を支える主要勢力となった。

 また、上場番号125番の父モンジュー・母プルーデンジアの牝馬を市場2番目の高値となる60万ユーロで購買したポール・メイキン氏もまた、豪州人馬主である。すなわち、高額馬トップ5のうち4頭を豪州人が購買したわけで、世界的に経済が停滞する中、数少ない「勝ち組」であるオーストラリアからの資金を取り込めたことが、予想外の好結果に結び付いたと言えよう。

 前年6頭だった日本人購買が今年は8頭と、日本人馬主も市場の活性化におおいに貢献した。このうち2頭はフランスで競馬をする予定だが、この馬たち含めて、好素材が揃っている。

 上場番号21番の父モンジュー・母ダンシングレディの牝馬は、母がG3リュテス賞2着馬。モンジューらしい体の柔らかさとバネを感じさせる馬で、クラシックを意識させる逸材だ。

 上場番号70番の父オーソライズド・母ロジカの牡馬は、G1香港ヴァーズ連覇を含めG1・3勝のドクターディーノを兄に持つという良血馬。伸びのある好馬体で、これもクラシックタイプ。

 上場番号90番の父ダラカニ・母ミッドナイトエンジェルの牡馬は、母がG1独オークス2着馬。いとこに昨年の日本ダービー馬エイシンフラッシュがいる牝系で、日本適性は高いはずだ。

 上場番号150番の父アナバー・母シルヴァリーベイの牡馬は、祖母シルヴァーマインがG1仏1000ギニー勝ち馬。トモの踏み込みが素晴らしい馬で、マイラーとして大成する姿が想像できる。

 上場番号170番の父オアシスドリーム・母サンビターンの牡馬は、下見の時から好馬体が目立っていた馬。スピードのある即戦力で、確実に走って来る馬だろう。小林智厩舎に入厩予定。

 上場番号237番の父アストロノーマーロイヤル・母クレームドクヴェーの牡馬も、フランスで競馬をする予定。祖母メリーリノアがG1マルセルブーサック賞勝ち馬で、いとこにヒルノダムールがいる牝系。

 上場番号359番の父キングズベスト・母パヴロヴナの牝馬は、おじにG1ガネイ賞勝ち馬コレカミノがいる牝系。母の父がシングスピールだから、日本適性は高いはずだ。

 上場番号444番の父ゴールアウェイ・母ヤングマジェスティの牡馬も、最終日の上場馬の中では屈指の好馬体の持ち主と評判だった馬である。

 フランス調教馬を含めて、今後の動向に注目したい馬たちである。

▼ 合田直弘氏の最新情報は、合田直弘Official Blog『International Racegoers' Club』でも展開中です。是非、ご覧ください。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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