札幌競馬場で行われる芝1800Mの条件となって以降、2頭のダービー馬(ジャングルポケット、ロジユニヴァース)を送り出した札幌2歳Sから、再びクラシックホース誕生の予感がする。
圧倒的な1番人気に答えて優勝を果たしたのは、グランデッツァ(牡2、平田)。半姉は今年の桜花賞馬となったマルセリーナ(牝3、松田博)であり、そのマルセリーナが桜花賞を勝利した時には、社台ファーム代表の吉田照哉氏から、「弟はアグネスタキオンの最高傑作となる」との言葉も聞かれていたほどデビュー前から注目を集めていた逸材が、期待通りの結果を残してくれた。
牧場での取材時には、育成スタッフからは背中の良さだけでなく、順調に来ていることを評価する声も聞かれていた。また、マルセリーナを手がけたことで、この血統の成長力を掴んでいたこともまた、馬に合わせた育成過程や、入厩後の活躍へと繋がった感がある。
勝ち時計となった1分50秒8は、2着に8馬身差を付けた2歳未勝利より0秒1だけタイムを縮めたこととなるが、最後の直線では並びかけてきたマイネルロブスト(牡2、高橋裕)の追撃を振り切り、しかも、上がり最速の脚を使ってきたゴールドシップ(牡2、須貝)を振り切っての優勝なのだから、非常に内容の濃いレースだったと言える。
レース後、社台ファームの関係者からは、「ただ勝ってくれただけではなく、強いレースを見せてくれたことは今後に繋がるのでは」という言葉や、「アグネスタキオンの代表産駒となるような活躍を残して、将来は種牡馬として父の血を繋いでもらいたい」
との言葉も聞かれていた。先日、今後のローテーションとして、ラジオNIKKEI杯2歳Sを使うことが陣営から発表されたが、ゴール前の脚色からしても、200Mの距離延長は不問なはず。このレースで父仔勝利を果たすようだと、来年のクラシック制覇、そしてアグネスタキオンの代表産駒となる期待も更に膨らんできそうだ。
そのグランデッツァとゴール前で競り合いを見せたマイネルロブストだが、ゴール後、株式会社サラブレッドクラブ・ラフィアンの岡田紘和代表と話をすることができた。
勝負所でグランデッツァに並びかけていくというのは、ジョッキーに指示を出していたと教えてくれた後で、「でも、交わしきれなかったところは血統も関係しているんですかね」と悔しそうな表情を浮かべていた。それでも見せ場を作ってくれただけでなく、自分から動きながら3着をキープしたのは紛れもなく地力の高さ。セリなどで馬を見つけ出し、坂路で鍛えながら馬を強くしていくという「マイネルイズム」が体言化されたような印象もあり、ゴール前で混戦となりそうなレースにおいて、力強く抜け出てくる姿も想像できそうだ。
父ステイゴールド×母父メジロマックイーンは、オルフェーヴル(牡3、池江)と同配合という魅力的な血統背景を持ったゴールドシップが使った末脚の切れは、オルフェーブルといったステイゴールド産駒共通の武器と言える。4着のベストディール(牡2、国枝)、5着のヒーラ(牝2、森)なども今後の活躍が楽しみと言えるだけのレースを見せてくれた。勝ったグランデッツアだけでなく、今年の札幌2歳Sに出走した13頭全てが、「伝説の新馬戦」ならぬ「伝説の重賞」と言われるような成績を残してほしい。
秋開催を迎えて赤本でのドラフト指名馬たちも続々デビューを重ねている中、血統面からも注目が集まっていたマトゥラーが10日に阪神競馬場で行われた2歳メイクデビューに出走。後方からのレースとなったものの、上がり3ハロンでは34秒4と言うメンバー中最速の脚を使い、大外を回りながら4着に入着した。
やんちゃなところは兄弟と共通と言えそうだが、レース経験を積みながら結果を残していくのもこの血統に共通したところ。能力の高さはあの末脚で充分に証明したと言えるのだから、来年のクラシックまで気長に応援していこうと思っている。
▼筆者:村本浩平
1972年北海道生まれ。大学在籍時代に「Number ノンフィクション新人賞」を受賞。現在はフリーライターとして活躍。特に馬産地ネタでは欠かせない存在。