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バレッツセール開催、高額馬TOP3は日本へ

  • 2012年03月14日(水) 12時00分
 北半球における2歳トレーニングセール・サーキットの幕開けとなる「バレッツ・マーチセール」が、3月5日にカリフォルニア州フェアプレックスパークで行われた。

 昨年秋から今年初めにかけて開催された繁殖牝馬市場が、どこも概ね好調に推移し、競馬産業界には光明が射し込んだ一方、一般景気の先行きには依然として不透明な部分が多く、期待と不安が交錯する中での開催となった。

 筆者は現場で取材にあたっていたが、序盤のマーケットは動きが鈍く、関係者をやきもきさせるものだった。最初の40頭が終わった段階での成績は、売却13頭、主取り20頭、欠場7頭。なんと上場馬の6割が売れ残ったわけだが、販売側のリザーヴが高すぎたわけではなく、これが今年最初の2歳市場だけに、購買者側に様子見の気持ちが強かったことが要因と見られている。

 ようやくエンジンが掛かりはじめたのは、上場番号50番台の後半に入った辺りからだ。購買者側に読めてきた場は、明らかに「買い」を示唆しており、一旦弾みのついた商いは最後までモメンタムを失うことがなかった。

 最終的には、総売り上げ前年比52.1%アップの842万6千ドル、平均価格が前年比8.7%アップの109,,429ドル、中間価格が前年比21.4%アップの85,000ドル、前年23.6%だったバイバックレートが今年は36.4%という市況となった。

 カタログ記載馬が前年より4割多かったため、ある程度の売り上げ増加は織り込み済みだったが、総売り上げ5割アップは、主催者側の事前の希望的観測にほぼ合致するものだった。平均価格と中間価格も、関係者にとって満足のいく数字が出たと言えよう。

 誤算は2つ。

 1つは、トップエンドのマーケットの伸び悩みだ。「これは間違いなく動きそう」という、奥行きもありそうな即戦力が登場しても、20万ドルを越えるあたりで値動きが鈍るケースを、幾度となく目撃した。最高価格馬は43万5千ドルだったが、これは1994年以降で最安のトッププライスである。アメリカで、現役馬に対して大きな投資を行なおうとする機運が薄れているのだとしたら、この後に続く2歳市場や、その後の1歳馬市場が気掛かりである。

 もう1つの誤算は、バイバックレートの急上昇だ。客観的に見れば、2歳馬市場における36.4%という主取り率は、それほど悪いものではない。バレッツ・マーチセールでも、バイバックレートが4割を越えた年が、過去10年間で3回あった。むしろ前年の23.6%というのが、2歳市場としては突出して良かったとも言えよう。だが一方で、昨今の一般景気を鑑み、販売側が努めて現実的なリザーヴ価格を設定していたことを考えれば、上場馬の3分の2以上は売れて欲しいところであった。

 前年は総額175万1千ドルを費やし12頭を購買した日本人は、今年は総売り上げの3割違い247万4千ドルを投資し16頭の購買に成功した。

 総売り上げの3分の2を日本人購買が占め、“バレッツ詣”なる造語が生まれた90年代半ばとは比ぶべくもないが、今年のバレッツセールを支えた重要なプレイヤーが、日本人であったことは間違いなさそうだ。

 なにしろ、高額馬トップ3は全て、日本行きが見込まれているのである。

 日本人によると見られる購買馬を、上場番号順にご紹介しよう。

 上場番号2番(母ソヴトゥール)は、今年のケンタッキーダービーの本命と目されているユニオンラッグスと同じディキシーユニオンの産駒である。フォールアスペンの牝系だから、成長力や底力も備えていそうだ。

 上場番号15番(母サマーワイルドファイア)は、G1フォンテンオヴユースS勝ち馬ソングアンドアプレイヤーの姪にあたる。叔父に、日本で走り京成杯で2着となったエフワンナカヤマがいるから、日本適性も高そうだ。

 上場番号24番(母ティグレサの牡馬)は、公開調教で2F=21秒8の時計を叩き出し、高い身体能力を実証した馬だ。動き、血統ともに、芝での活躍も可能なことを示唆している。

 上場番号44番(母アレイナズラヴ)は、2歳戦での勝ち上がり率が非常に高いことで定評のあるワイルドキャットエアの産駒だ。姉に2歳G1デルマーデビュータント2着馬フーラヴスアレイナがいる牝系も、1F=10秒フラットで駆け抜けた追い切りも、2歳戦から活躍する資質を裏付けている。

 上場番号47番(母シンギングセンセーション)は、バランスが良く、上腕や太ももなど付くべきところにみっしりと筋肉が付いた好馬体が、厩舎村で評判になっていた1頭だ。大きなフットワークで駆け抜けた追い切りの動きも良く、まさに即戦力といった印象の馬である。

 上場番号53番(母キャッチオヴザセンチュリー)も、馬体の良さが目立っていた1頭。姉にG1デルマーデビュータント2着馬がいて、近親に2歳チャンピオンのホールドザットタイガーやベルモントS勝ち馬エディターズノートらがいる牝系も一流だ。

 上場番号57番(母シティビューティフル)は、世紀の名牝ゼニヤッタらを輩出したストリートクライの産駒。祖母がG1オークリーフS勝ち馬シティーバンドと、牝系も名門だ。

 上場番号59番(母クラウズオヴゴールド)も、馬体と歩様の良さが目立っていた1頭。馬場の3分どころを真一文字に駆け抜けた追い切りでの動きも、力強さと柔らかさの両方を感じさせるものだった。遅生まれだけに、今後の更なる成長も見込めるはずだ。

 上場番号60番(母コートゥー)は、産駒がアルゼンチンで大ブレークしてケンタッキーに呼び戻されたインディゴシャイナーの産駒だ。バランスが良く、トモっ張りの良い好馬体の持ち主。馬体や歩様からは、高い芝適性を感じた。

 上場番号71番(母エンプティポートレイト)は、叔父にG1ピムリコスペシャル勝ち馬インクルードがいる。父の産駒にはカリカリしやすい馬が多く見られるが、本馬は気性が穏やか。持っている資質を存分に発揮出来る馬だろう。

 上場番号82番(母フォーチュネイトイヴェント)は、アメリカで昨年の3歳牝馬チャンピオン・ロイヤルデルタ、日本でフェデラリストらが出て、最もホットな種牡馬の1頭となっているエンパイアメーカーの産駒だ。踏み込みの良い歩様が印象的な馬である。

 上場番号109番(母ラカリーナ)は、2歳重賞G2デルマーフューチュリティ(現在はG1)を制しているホースグリーリーの初年度産駒だ。父の父ミスターグリーリーは北米供用ながら、芝での活躍馬を多数輩出しており、本馬にも芝で出世の期待がかかる。

 上場番号116番(母エルエックスプリティウーマン)は、BCジュヴェナイルフィリーズ勝ち馬キャッシュランらが出ている牝系の出身。このファミリーに、2歳重賞レムゼンSを制しているロックポートハーバーの配合だから、本馬にも2歳時から活躍の期待がかかる。

 上場番号126番(母マイグッドネス)は、公開調教で1F=9.8秒の最速時計を叩きだした馬。祖母カレッシングがBCジュヴェナイリフィリーズ勝ち馬と血統も一流。即戦力で、かつ、奥行きもありそうな馬である。

 上場番号133番(母アワファミリージュエル)は、ケンタッキーダービー馬マインザットバード、ベルモントSやトラヴァーズSを制したサマーバードなど、大物を出すことで定評のバードストーン産駒だ。1F=10秒2で駆け抜けた追い切りの動きも水準以上だった。

 上場番号144番(母リキャプチュア)は、G1キングズビショップS、G1フォアゴーSと、ダート7FのG1・2勝のポメロイ産駒だ。いかにもアメリカ型の力強い馬体の持ち主で、1F=10秒フラットを計時した追い切りの動きも出色だった。

 まずは、各馬無事にデビューに漕ぎ着けることを期待したい。

合田直弘氏イベント
「Uoooma Jockeys' Cafe」が3月20日開催
合田直弘氏が司会を務める競馬イベント「第1回 Uoooma Jockeys' Cafe」が3月20日(火・祝)11時より、東京都・港区の汐留シティセンターで開催されます。

同イベントでは、中央競馬の後藤浩輝騎手がプロデュースした料理、愛飲のスーパー栄養ドリンクが飲食できる他、競馬ゲーム「Champion Jockey」(PS3版)を使用したUoooma コーエーテクモ杯を開催。優勝者には、後藤騎手と同ゲームで対戦ができる権利とスペシャルな優勝レイ(GI仕様)が贈呈される。また、松永幹夫調教師もゲストとして出演する予定です。お誘い合わせのうえ、「ジョッキーをもっと身近に感じる」一日を体験してみてください。

▼ 合田直弘氏の最新情報は、合田直弘Official Blog『International Racegoers' Club』でも展開中です。是非、ご覧ください。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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