マイケル・タバートオーナーインタビューの最終回。今回は「第二のハナズゴール」を目指す、オーナー期待の2歳馬たちをご紹介します。オレハマッテルゼ産駒にいち早く目をつけたオーナーが、次に狙うオススメ血統とは。(7/16公開Part3の続き)
期待の2歳馬を教えてください
東 :ハナズゴールに続く、期待の2歳馬はいらっしゃいますか?
マイケル :同じオレハマッテルゼ産駒でハナズデラックス(牝2、母コスモカラット)。オータムセールで200万くらいなんですけど、オレハマッテルゼはめちゃくちゃいいですね。初年度で25頭ぐらいしか付けていないんですけど、付けた繁殖牝馬を考えるとすごく走っています。
東 :ハナズゴールみたいな馬が出て、種牡馬としての人気が出ますよね。
マイケル :だから今大変なんです。その年の種付け料から計算して安く買えると思って馬を見に行っても、「700万」とか言われると…。ハナズゴールが走れば他の馬を買えなくなる、自分で自分の首を絞めています。でも、本当に走りますよ。もっと有名な牝馬に付けたら、これからどんどん走ると思いますよ。
東 :2歳馬にも、やっぱり新種牡馬の産駒がいるんですか?
マイケル :ハナズタイガー(牡2、母メイショウサチカゼ)は、ジャイアントレッカーという新種牡馬の産駒です。これもサマーセールで200万くらい。サマーセールはいいですよね。5日間ずっといられたら、それ以上幸せなことはない。でも、問題は仕事をしているので…。
東 :セールは平日だから。
マイケル :そう。だから大体1日しか行けないので、その日に見た馬から選ぶしかない。でも、ハナズタイガーはすごく良く見えました。僕はこの馬が今年の世代で一番いいと思っています。まあでも、分からないですけどね。牡馬ですし。
花代 :これまで勝利をプレゼントしてくれたのは全て牝馬で、惜しいところまできているハナズルナピエナも牝馬。マイケルさんの好みの馬体は牝馬向きなんですかね? 2歳の牡馬が3頭いるんですけど、それが走らなかったらもう牝馬しか買わないって。いろんな意味でがんばって欲しいですね。
東 :残りの牡馬は、ハナズハント(牡2、父スパイキュール、母ノースソング)とハナズルオーテ(牡2、父チチカステナンゴ、母シャドウファイル)。ハナズルオーテはチチカステナンゴの初年度産駒ですか?
マイケル :そうです。チチカステナンゴ産駒は、とにかく1頭欲しいと思っていて。これは400万以上しました。今年買った中で一番高いんですけど、それでも絶対欲しいと思って。チチカステナンゴは、僕は絶対走ると思っているんで。
東 :それはどうしてですか?
マイケル :安い種付け料で、牝馬も10頭20頭しか集まらないのにすごい馬を出す種牡馬って、すごくいいと思うんです。チチカステナンゴは海外で、初年度で20頭ぐらいしか付けていなくて、その中からいきなりGI馬を2頭出したりして。
東 :そうなんですか!?
マイケル :はい。それで社台が購入したんです。買って来たのは正解だと思いますね。「社台はやるな!」という感じです。日本の芝に合うかは分からないですけど、子どもは間違いなく能力はあると思います。
東 :馬を選ぶ時のポイントはやっぱり血統ですか?
マイケル :血統は好きですね。まあ、血統が良かったら高いんで、馬体も見るようにしているんですけど。でもやっぱり、血統ですね。
東 :好きな血統のタイプというと?
マイケル :細かいところで言ったら、名牝のクロスがあるのがすごく好きなんです。なかなかいないですけどね。お父さんは大体みんな強いじゃないですか。それが血統表の半分を占めるわけで、牝馬が残り半分の血統表をどれだけの良くしているのかというところ。その中にいっぱい良い牝馬の血が流れているといいなって思うんです。
東 :なるほど。以前はペーパーオーナーをされていたということですが、今は?
リアルオーナー、POGは苦手!?
マイケル :今もしていますよ。昔はダンスインザダークを指名したりうまかったんですけど、最近は全然。去年も京大サークルの仲間でやって、20頭中5頭が自分の馬で、あとの15頭は全部社台にしたんです。それなのに1位と2位がハナズゴールとハナズルナピエナ。
花代 :才能ない…。
マイケル :終わってるやろ(苦笑)。
花代 :だってハナズゴールとハナズルナピエナって、自分の馬だから選んだんでしょ? 他の人は絶対取らない(笑)。
マイケル :そうそう。でも、こうやってハナズゴールの話を聞きたいって取材してもらったり、ハナズゴールを応援してもらえるとすごくうれしい。僕はいいんですけど、馬のファンが増えるのはすごくうれしいんです。
東 :ハナズゴールもそうですし、皐月賞を勝ったゴールドシップも日高の馬で、明るい話題になりましたね。
花代 :産地の方にも「元気になった」って言っていただいたんです。
マイケル :僕が言うのも変ですけど、日高にがんばって欲しい。もちろん社台はすごいと思いますけど、あまりに勝つから、こういう安い馬で盛り上がったらいいなって思うんですけどね。
東 :そういうのこそ、ファンがぐっと寄ってきますよね。
花代 :マイケルさん、netkeiba.comの掲示板をめっちゃチェックしているんです。
マイケル :見てます! 応援のコメントがあるとうれしいです。最近は書き込み少ないですけどね(泣)。
東 :秋になったらまた盛り上がりますね。ちなみに、いつかご自分の馬でオーストラリアのレースにも出したいという思いはありますか?
ハナズゴールでオーストラリア遠征
マイケル :ハナズゴールで行くかもしれないですね。
花代 :ええっ、そうなの? メルボルンC?
マイケル :それは無理だね。来年の秋かな。古馬になって一番可能性のあるGIはエリザベス女王杯かなと思っていて、そこからジャパンCとか有馬記念に出ることはないですから。それだったら秋はオーストラリアに。
花代 :やっぱり得意な展開になるレースに使ってあげるということ?
マイケル :それがいいと思う。それこそいろいろ考えるのは楽しいですから。でもまたいろいろ言うと、ダビスタ的な非常識なことを言ってるって書かれちゃいますけど。ダビスタみたいにめっちゃ連闘させたりするって思われているんでしょうけど、そんなつもりは全くなくて、馬は大事にしています。NHKマイルCを使ったのは賛否両論あるみたいですけど。
花代 :桜花賞直前のケガがなかったら、普通にチューリップ賞、桜花賞、オークスってなってたんじゃない?
マイケル :もちろん。ただ僕は、常識のローテーションにはこだわらないし、変な事を考えるのは間違いないので。本当を言うと、ケガの後は、青葉賞を使ってオークスっていうのが、僕が考えていたローテーション。回復が間に合わなかったけど、オークス前に2400mの距離を経験させてあげられるし、レース的には多分すごく合うはずだったんです。
東 :青葉賞ってインパクトありますね。
マイケル :スローで流れて上がり勝負だったら、牡馬にも勝つんじゃないかと。ハナズゴールは1000mで1分切ったレースは全部飛んでいるんです。でも、1分以上かかったレースは全部勝っているんですよ。
東 :コースより展開。視点が違いますね。
マイケル :あまり言うと、ハイペースでつぶされちゃいますから(苦笑)。まあ、年齢がいけば、対応できるようになると思いますけどね。何とか彼女の潜在能力をファンの皆さんに分かってほしいし、秋も楽しみですけど、来年は更に楽しみです。
花代 :だいぶ先まで楽しんでいる(笑)。でも、私はもっと先が楽しみ。ハナズゴールが無事に繁殖牝馬になって、その子が走るってなったら楽しみだなって。
マイケル :そうだね。そうやっていると、一生終わらへん!
◆マイケル・タバート
1975年1月12日、オーストラリア出身。シドニーの近くのニューカッスルの高校で日本語を学び、日本へ留学。大阪外国語大学の日本語コースで1年間勉強した後、京都大学経済学部経済学科に進学。卒業後は母国で会計事務所に入社。99年、東京事務所への転勤で再来日。01年からは大阪事務所へと移り現在に至る。09年に馬主資格取得。11年8月にノアノア号で初勝利。12年3月、ハナズゴール号でチューリップ賞を制し重賞初勝利を挙げる。冠名のハナズは奥様「花代」さんの名前からとったもの。