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良血揃い、英国・障害戦線の主役たち

  • 2012年11月14日(水) 12時00分
 11月10日のドンカスター競馬場での開催をもって、英国における今季の芝平地シーズンが終了。ここからは障害競走の季節が本格的にスタートする。そこで今回のこのコラムは、2012/2013年シーズンの障害路線で主役を務める馬たちを御紹介させていただきたい。

 まずは、G1チェルトナムチャンピオンハードル(16F110y)を頂点とするハードル部門の中距離路線から。

 中心となるのは、平地からハードルに転向して以降、16戦13勝、2着1回、3着2回と、抜群の安定感を誇るハリケーンフライ(セン8、父モンジュー)と見られる。平地を走っていた時代に重賞入着実績のある馬だったが、ハードル転向でさらに進化。11年のG1チェルトナムチャンピオンハードルに優勝している他、レパーズタウンのG1愛チャンピオンハードルを11年・12年と連覇。パンチェスタウンのG1チャンピオンハードルを10年・11年・12年と3連覇している。

 昨年は順調さを欠き、シーズン初戦が年明けまでずれ込んだ同馬。おそらくはその影響で、連覇を狙ったチェルトナムチャンピオンハードルで3着と敗退したが、今年は順調に調整が進み、11月20日にパンチェスタウンで行われるG1モーギニアハードル(芝16F)で戦列復帰と伝えられている。

 11月10日にウィンカントンで行われたG2エリートハードル(芝16F)で、すでに今季の初出走を済ませ、無事に白星でここを通過したのが、ザルカンダー(セン5、父アザムール)だ。08年の欧州年度代表馬ザルカヴァの弟という超良血馬で、平地では目が出なかったものの、ハードル転向後4連勝。スター誕生かと騒がれたのだが、昨季のチャンピンハードルで5着に敗れてハードル初黒星を喫すると、続くエイントリーのG1エイントリーハードル(芝20F)では、第6障害で自身初の落馬を喫し、残念な形で昨シーズンを終えることになった。スター街道を再び歩むことが出来るか、注目度の高い1頭である。

 昨シーズンのG1チェルトナムチャンピオンハードル勝ち馬ロックオンルビー(セン7、父オスカー)も、当然のことながら有力馬の一角を占める存在だ。

 続いて、G1ワールドハードル(芝24F)を頂点とするハードル部門の長距離路線。

 ここには、ワールドハードル4連覇を含めて、09年1月から負け知らずの17連勝を継続中のビッグバックス(セン9、父カドゥーダル)という絶対的存在がいる。この路線における歴代最強馬の呼び声も高い同馬。そろそろ年齢的な衰えが危惧される年を迎えているが、今年のチェンピオンハードルへ向けた前売りでもオッズ2〜2.25倍の圧倒的人気を集めている。

 14日にエクスター競馬場でレースコースギャロップを行った後、24日にヘイドックで行われるG3フィクストブラッシュ・ハンディキャップハードル(芝24F)か、12月1日にニューバリーで行われるG1ロングディスタンスハードル(芝24F110y)で、今季初出走の予定だ。

 ビッグバックスを脅かす馬が現れるとしたら、その可能性が最も高いとされているのが、ライトオヴパッセージ(セン8、父ジャイアンツコウズウェイ)である。現在は平地を走り、10年のG1アスコットGC(芝20F)や12年10月20日のG3ブリティッシュチャンピオンズ・ロングディスタンスC(芝16F)を制している馬だが、もともとはハードルを走っており、10年のチェルトナムフェスティヴァルでG1バーリングビングハム・ノーヴィスハードル(芝21F)で3着になった実績を保持する。

 大目標は来年のアスコットGCだが、管理するD・ウェルド師はワールドハードルも視野に入れていると伝えられており、参戦が実現すれば大きな話題を呼ぶことになりそうだ。

 続いて、G1クイーンマザーチャンピオンチェイス(芝16F)を頂点とする、スティープルチェイス中距離部門。

 この路線には、新興勢力に大物がいる。ハードルで2シーズンを戦った後、スティープルチェイスに転向した昨シーズンを5戦無敗の成績で乗り切ったスプリンターサクレ(セン6、父ネットワーク)がその馬だ。

 ハードル時代にも、チェルトナムのG1シュプリームノーヴィスハードル(芝16F110y)で3着となるなど、悪くない競馬をしていたが、スティープルチェイスの重賞初挑戦となったケンプトンのG2ワイワードラッドノーヴィスチェイス(16F)が16馬身差、G1初挑戦となったチェルトナムのG1アークルチャレンジトロフィー(芝16F)を7馬身差、シーズン最終戦となったエイントリーのG1マグハルノーヴィスチェイス(芝16F)が13馬身差の圧勝と、スティープルチェイス転向後の同馬が見せているのは、桁違いのパフォーマンスばかりなのだ。

 チャンピオンチェイスへ向けた前売りで、各社2.0倍から2.1倍のオッズを掲げている同馬の今季初戦は、12月8日にサンダウンで行われるG1ティングルクリークチェイス(芝16F)の予定。

 スプリンターサクレという「出る杭」を打つ役目を果たすとしたら、昨季のクイーンマザーチャンピオンチェイスを8馬身差で制したのを含め、スティープルチェイス転向後9戦7勝という戦績を誇る、フィニアンズレインボウ(セン9、父ティラーズ)をおいて他にあるまい。普通の年であれば、この馬こそクイーンマザーチャンピオンチェイスで大本命になっておかしくないのに、現状はオッズ5〜7倍に甘んじているあたり、いかにスプリンターサクレへの期待が高いかがおわかりいただけよう。

 最後に、G1チェルトナムゴールドC(芝26F110y)を頂点とする。スティープルチェイスの長距離部門。長年王者として君臨したコートスターが現役を退き、群雄割拠の時代を迎えようとしている。

 11年のチェルトナムゴールドC勝ち馬で、12年の同競走は3着だったロングラン(セン7、父カドゥーダル)を筆頭とした既成勢力に敬意を払いつつ、アンティポストマーケットでファンの食指が伸びるのは活きのいい新興勢力たちだ。

 その筆頭が、平地で4戦未勝利に終わった後、ハードルに転向して3戦3勝。さらにスティープルチェイス転向後は5戦5勝と、障害ではここまで負け知らずで来ているサーデシャン(セン6、父ロバンデシャン)だ。昨季のチェルトナムフェスティヴァルではG2ゴールデンミラーノーヴィスチェイス(芝20F)に出走し快勝。続いて出走したエイントリーのG1グロワイズチャンピオンノーヴィルチェイス(芝25F)ではなんと36馬身差の快勝を見せた逸材だ。

 今季初戦は12月9日にパンチェスタウンで行われるG1ジョンダーカンメモリアルチェイス(芝20F)の予定。

 スティープルチェイス転向後2戦目に白星を挙げた後、19馬身差で制したレパーズタウンのG1アークルノーヴィスチェイス(芝17F)や、11馬身差で制したフェアリーハウスのG1ゴールドCチェイス(芝20F)を含めて6連勝中のフレメンスター(セン7、父フレメンスファース)や、昨季のチェルトナムフェスティヴァルではG1RSAチェイス(芝24F110y)に出走して快勝したボブスワース(セン7、父ボブバック)などにも、ファンの買いが入っている。

 平地競走以上に「馴染みがない」とおっしゃる方が多い欧州の障害戦だが、追いかけてこそ面白いのは平地競走同様で、ぜひこの路線にもご注目いただきたいと思う。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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