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オルフェーヴルを阻むローテーションの記憶

  • 2012年11月23日(金) 12時00分
「凱旋門賞を勝った馬は、JCを勝てない」逆に「JCを勝った馬は凱旋門賞を勝てない」もはや世界の馬券格言ともいえる、この格言が成立するのはJCと凱旋門賞では同じ芝2400mでも「まったく異なる適性」が要求されるからです。

 JCがスピード、直線での伸びを競う一方、凱旋門賞は馬力、スタミナが問われます。両方の能力で世界最高の能力を持った馬は出にくいのですから、両方のレースを勝つのが極めて難しいのは当然でしょう。

 根本的な才能以外にも、凱旋門賞とJCの間には大きな壁があります。それは「ローテーションの壁」です。

 おそらく競走馬は、これから走るレースに対し、距離やコースへの明確な意思を持って走っているわけではありません。つまり、前走までのローテーションの記憶を頼りに、競馬を走らされている可能性が高いのです。

 ゆえに、凱旋門賞が行われるフランスに適応させるローテーションを記憶させることは、JCへの適性を遠ざけることにもなるのです。

 かつて、JCと凱旋門賞の連覇にもっとも近づいたのはエルコンドルパサーでした。1998年のJCを3歳で制すると、翌年春はフランスに遠征。欧州の芝レースを3度使い、満を持して凱旋門賞に出走。それでもモンジューに半馬身及ばぬ2着に敗れました。なお、モンジューは次走のJCでは、スペシャルウィークに2馬身以上ちぎられ、4着に敗れています。

 今にして「見てみたかったなぁ」と思うのは、エルコンドルパサーが凱旋門賞の後、JCに出走していたらはたして、どうなっていたか? ということです。

 エルコンドルパサーは3歳でJCに出走した後、実質フランスに移籍したようなものです。つまり、フランス仕様に馬をチューニングした後、もう一度JCを使っても、前年と同じように走れたでしょうか。

 ディープインパクトは凱旋門賞で敗れた後JCを制しました。ディープインパクトの場合、フランスで走ったのは、凱旋門賞のみです。フランス競馬へのチューニングはエルコンドルパサーほどには施されていません。それは凱旋門賞の敗因には多少つながったかもしれませんが、JCの勝因にもつながります。(もっともディープが勝った年のJCであれば、もう少しディープをフランス仕様に仕上げてもJCは勝てたと思いますが)

 また、2010年のナカヤマフェスタは、フランスでフォワ賞、凱旋門賞を使い2着の後、JCに2人気で出走するも、14着に敗れました。

 そして今年。オルフェーヴルはフランスで2戦した後、JCに挑みます。2006年のJCに出走したディープインパクトよりも不利な臨戦過程でも勝てるのか? は馬券における焦点のひとつにはなるでしょう。

 ボクのあまり当たらない予想では、勝つのはオルフェーブル以外になると見立てたのですが、はたして?

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血統馬券予想理論『血統ビーム』の提唱者で、『ブラッドバイアス』『大系統』『小系統』などの血統予想用語、概念の作者。血統ビームの革新性は20世紀末の競馬予想界に衝撃を与え、現在は競馬ファン、競馬評論家に多大な影響を与え続けている。また『競馬予想TV!』『競馬血統研究所』(ともにCS放送フジテレビONE)に出演するなど活躍中。Twitterはコチラ。
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