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英国スティープルチェイス界のスター回避で異変あり!?

  • 2012年12月19日(水) 12時00分
今週のこのコラムは、いよいよ1週間後の12月26日に開催が迫った、英国スティープルチェイス界シーズン前半戦のハイライト、G1キングジョージ6世チェイス(芝24F、ケンプトン)の展望をお届けしようと準備していたところ、週の冒頭にとんでもないニュースが相次いで飛び込んできて、いささか面食らっているところだ。

 キングジョージ6世チェイスの前売りで2番人気に推され、3月のG1チェルトナムGC(芝26F110y)でも有力視されていたアルフェロフ(セン7、父ドムアルコ)に故障が発生。キングジョージ6世チェイスを回避するだけでなく、今シーズン中の復帰は絶望的とのことなのだ。詳細に関する発表はないのだが、どうやらいずれかの脚に屈腱炎を発症した模様で、今後少なくとも12か月は様子を見る必要があるとのことだ。

 しかも、飛びこんできた驚きのニュースはこれだけではなかった。なんと、アルフェロフの同厩で、目下18連勝中というハードル界の“リヴィングレジェンド”ビッグバックス(セン9、父カドゥーダル)もまた、故障のため予定をしていた今週土曜日のG1ロングウォークハードル(芝25F)を回避。そしてこの馬もまた、今シーズン中の復帰は絶望的という、衝撃的な一報が伝わってきたのである。

 こちらも詳細についての発表はないのだが、馬主方面から聞こえてきた話では、いずこかの脚に靭帯もしくは腱の損傷を発症した模様だ。

 12月1日にニューバリーで行われたG2ロングディスタンスハドードル(芝24F110y)を制して、09年1月から継続中の連勝記録を18に伸ばしたビッグバックス。このまま例年通りのローテーションを歩めば、4月にエイントリーで行われるG1リヴァプールハードル(芝24F110y)で、1780年代にメテオが作った21連勝という、英国における最多連勝記録に肩を並べるはずだったが、今後の予定は白紙に戻ることになった。

 今回の故障そのものは、それほど大きなものではなさそうだが、年が明ければ10歳になるだけに、来季も現役に留まり改めて記録にチャレンジするのか、そうなったとして年齢的衰えは大丈夫か、ファンにとっては当分、気が揉めることになりそうである。

 さて、有力馬の1頭が戦線を離脱することになったG1キングジョージ6世チェイス。ブックメーカー各社が目下、3.5倍から3.75倍のオッズを掲げて1番人気に支持しているのが、ロングラン(セン7、父カドゥーダル)である。

 フランス産の同馬は、3歳春に祖国でハードラーとしてデビュー。ハードルで8戦し、オートイユのG1カンバセル賞(芝3600m)を含めて5勝を挙げた後、スティープルチェイスに転向。ここでもオートイユのG1モーリスギヨ賞(芝4400m)を制した後、英国のR・ヘンダーソン厩舎に転厩。10/11年シーズンのG1キングジョージ6世チェイスを制して一気にスターダムにのし上がり、続くG1チェルトナムGCを連勝してこの路線のトップに登りつめたのが、ロングランである。

 ハードル時代を含めてここまで23戦して13勝、2着6回、3着4回という成績を誇る同馬。すなわち、落馬が1度としてないだけでなく、4着以下が1度もないという、抜群の安定性を誇る馬である。

 前走今季初戦となった、11月24日にヘイドックで行われたG1ベットフェアチェイス(芝24F)では、いささか雑な飛越が目についたものの、シルヴィニアーココンティ(セン6、父ドムアルコ)の2着に入り、まずは順調にシーズンオフを過ごしたことを実証。直近の5戦に限ると1勝しかしていないという詰めの甘さが気になるものの、馬券の軸としては大きな信頼を置ける存在となっている。

 ブックメーカー各社が5倍から5.5倍のオッズで2番人気に推しているのが、キューカード(セン6、父キングズシアター)だ。

 4歳1月にナショナルハントフラットでデビュー。このカテゴリーで2戦2勝の成績を残した後、ハードルに進み、このカテゴリーで5戦してチェルトナムのG2シャープノーヴィスハードル(芝16F110y)を含めて2勝。昨シーズンからスティープチェイスに転向し、3月のG1アークルチェレンジトロフィー(芝16F)でスプリンターセクレの2着に入り、この路線でトップグループの一角に食い込む足がかりを作った。

 今季初戦となったのが、11月26日にエクセターで行われたG2ハルドンGC(芝17F110y)で、このレースを26馬身差で圧勝。さらに成長した姿を見せたことで、一気にファンの支持が拡大することになった。

 ブックメーカー各社が6倍〜7倍のオッズで3番人気に推しているのが、リヴァーサイドシアター(セン8、父キングズシアター)だ。

 スティープルチェイス転向2シーズン目となった10/11年シーズンのこのレースで、ロングランの2着に入って出世へのきっかけをつかんだ同馬。アスコットのG1アスコットチェイス(芝21F110y)を、10/11年シーズン、11/12年シーズンと連覇。昨年のチェルトナムフェスティヴァルでは、G1ライアンエアチェイス(芝21F)を制し、3度目のG1制覇を果たしている。

 ここが今季初戦となるリヴァーサイドシアターだが、鉄砲実績のある馬で、12月2日にケンプトンで行ったレースコースギャロップでも軽快な動きを披露。出走態勢は整っていると見て良さそうである。

 以下、スティープルチェイスのG1・5勝馬で、今季ここまで2戦2勝と10歳の暮れを迎えて衰えを見せていないサイジングヨーロッパ(セン10、父ピストレブルー)が、オッズ8倍〜10倍。11年のG1アークルチャレンジトロフィー(芝16F)勝ち馬で、前走今季初戦のG2アムリン1965チェイス(芝19F)を制して4度目の重賞制覇を果たしたキャプテンクリス(セン8、父キングズシアター)が、オッズ8倍〜11倍で続いている。

 暮れの英国競馬を象徴する存在となっているキングジョージ6世チェイスの行方に、みなさまもぜひご注目いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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