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POG取材始まる

  • 2013年04月03日(水) 18時00分
 先月下旬より、生産地では早くも今年デビュー予定の2歳馬を対象に取材合戦がスタートしている。POGの指名馬をリストアップする際に参考にされる関連本のための取材だが、今年はことの他日程が詰まっており、かなりタイトなスケジュールで各社とも動いている印象だ。

 去る3月38日は、浦河地区の吉澤ステーブルで合同取材が行なわれた。この日、同ステーブルに集合したのは約10社。単体でPOG関連本を刊行する各社に加えて、スポーツ紙も数社集まった。浦河地区では珍しい光景だが、そのわけはもちろんウオッカの初仔の存在が大きい。それに加えて、今をときめくゴールドシップの全弟もここで調教されており、極めて話題性が高いことから、異例の10社合同取材となったのだ。

 POG取材は大別すると「写真」と「各馬のコメント取り」に分けられる。通常、写真は立ち写真を意味しており、これはカメラマンの仕事だ。またコメント取りは、媒体の編集者や契約ライターなどが牧場の調教責任者などを囲んで1頭ずつもらう。

 牧場によってはこれらが“同時進行”する場合もあるが、ここでは写真撮影の後にコメントという手順になった。

ウオッカの2011の調教場面

ウオッカの2011の調教場面

 ところが、28日は空模様が良くなく、雲が厚くて光量が足りない。今にも雨が降り出しそうな天候だったことから、牧場側の判断で、撮影だけを翌日に延期し、この日はコメントだけをもらうこととなった。ただし、各社とも最大級の関心を寄せているのが、前記のウオッカ産駒。そこで、この馬に関しては、牧場内にある一周250mほどの屋根付きウッドコースにて調教場面を撮らせて頂くことになった。

 1集団18頭ほどのグループが次々に馬場内に入り、常歩から速歩、キャンターとメニューをこなして行くところを、カメラマンたちがウオッカの仔だけを狙ってカメラに収める。一部のスポーツ紙上には、翌29日付けの紙面で、この馬の調教場面が写真入りで紹介されていたのをご覧になった方もいよう。

 やはり注目度はダントツと言って差し支えなく、中には、この馬だけを目当てに取材に訪れた社もあったほどだから、いかに多くのファンの関心を集めているかが分かる。

 その翌日。順延となった立ち写真の合同撮影会が、午前8時半より開始された。吉澤ステーブルでは、厩舎と厩舎の間に撮影用の専用スペースが設けられている。そこに1頭ずつ馬を立たせて撮影する。

 真横から10社がほぼ一固まりになってカメラを向けることになり、脚の位置が決まって耳が前方を向けば一斉にシャッター音が響く。基本的に連写モードになっているため、突然カシャッカシャッカシャッという音が耳に入ってくることから、これだけで驚いてしまう馬もいる。

 とはいえ、ここの2歳馬たちは概して手がかからない印象で、撮影は予定通りにどんどん進んだ。1頭5分前後の間隔で次から次に2歳馬が出て来る。前日、取材陣に配布されたリストには25頭が厩舎別に記載されており、ウオッカ初仔は13番目に名前がある。

 撮影が進み、「次にウオッカが出ます」と牧場スタッフが取材陣に伝える。いよいよ登場か、といくぶん緊張感が漂う。

560キロと手元の資料にあるウオッカの2011

560キロと手元の資料にあるウオッカの2011

 のっしのっしと黒い大柄な馬体がこちらに向かって歩いてきた。馬体重は560キロと手元の資料にある。前日、調教を撮った時にもひと際大きいことは伝わってきたが、こうして裸で目の前に現れると、改めてその堂々とした体躯に驚かされる。

 性格はどちらかというと落ち着いていて、物に動じないタイプ、と前日には聞いた。果たして立たせる際にも、まったく悠々としており、動作が大人びている。チャカチャカした2歳馬がこの時期は多いのだが、この馬だけは別格のようだ。

 横から見た姿は、やはり大型馬だけあり骨量豊富で、すべてのパーツが大きい。手足も伸びており、ゴロンと肥満している馬ではない。

 牧場では、決して急ぐつもりはないという。見るからに雄大な馬格なので、このタイプの馬は急いでデビューさせようとしても簡単には仕上がらないだろうし、まずは体格に見合った基礎体力強化に重点が置かれることになるらしい。

 ファンならずとも、ウオッカの初仔というだけで大きな注目が集まるのは必至だから、より万全な状態で送り出したいというのが吉澤ステーブルの方針という。

 今の時点で、デビュー時期まで予測するのはかなり難しいのだが、早い時期から出てくる可能性は低く、秋(それも遅い時期の)になるのは間違いなさそうだ。

兄とは毛色が異なるポイントフラッグの2011

兄とは毛色が異なるポイントフラッグの2011

 BTC坂路でまだハロン20秒程度の時計であり、今後、調教を積んで行く過程でどう変わるかがポイントになろう。決して太くはないが、まだ緩い部分が多く、今後の成長を待ちたいと思う。

 さて、もう1頭の注目馬ポイントフラッグの2歳馬は、兄とは毛色が異なり、こちらは黒っぽい鹿毛の中型サイズだ。動きはなかなか俊敏で、性格的にも元気が良い。ステイゴールド産駒らしいヤンチャな部分を持ち、まだ成長途上だが今後が楽しみな素材である。

 こうして2歳馬たちを見ていると、つくづく1年が早く感じられる。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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