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2歳トレーニングセールでの注目馬(村本浩平)

  • 2013年05月31日(金) 18時00分
 来週から始まるメイクデビューを前に、2歳トレーニングセールが相次いで行われた。その皮切りとなったのが、4月23日に中山競馬場で開催されたJRAブリーズアップセール。その後、5月7日にJRA宮崎育成牧場で開催された九州トレーニングセール、5月17日に船橋競馬場で開催された千葉トレーニングセールと続いていき、5月21日にはJRA札幌競馬場で、今年行われた2歳トレーニングセールとしては最多の上場頭数(262頭)となるHBAトレーニングセールが開催された。

 このHBAトレーニングセールには赤本の取材でもお世話になっていた育成牧場でトレーニングを積んだ馬も多数上場されており、公開調教では軒並み好時計をマーク。上場馬の評価を高めただけでなく、同時に育成技術の高さも詰め掛けた関係者の前にアピールしていた。

 このセールで2ハロンの最速タイムを記録したのは、天皇賞・春の勝ち馬であるジャガーメイルをこのトレーニングセールで送り出した、大作ステーブルが上場したメジロフランシスの2011(牡、父スクリーンヒーロー)2ハロン合計の時計は10秒87、10秒93と公開調教を行った上場馬では唯一、1ハロンごとに10秒台のラップを刻んでいった。

 父はスクリーンヒーローということで、仕上がりの早さに驚かれた読者の方もいられるのではないかと思うが、このメジロフランシスの2011を手がけた大作ステーブルのスタッフの方だけでなく、産駒に共通している長所は「持続するスピード」だという。メジロフランシスの2011はトップスピードの高さも証明する形となったが、産駒全体に共通して言えそうなのは、やはり父のように直線が長いコースでばてない末脚を使ってくる姿なのだろうし、芝コースでさらにその真価は発揮されることとなりそうだ。

 メジロフランシスの2011を手がけた大作ステーブルでは、スクリーンヒーローと同じ、新種牡馬として今年、初年度産駒をデビューさせるディープスカイの産駒、アドマイヤイチの2011(牡)も上場。こちらも2ハロンの時計が22.18(10.98、11.20)という優秀な時計で札幌競馬場のダートコースを駆け抜けていた。ディープスカイの産駒は、まだこの時期緩いところがあるとの声も聞かれているが、アドマイヤイチの2011の走りを見ても、父譲りのスピード能力の高さが遺伝されていることは間違いなさそうである。

 この日、上場された262頭では2番目となる高額取引馬となったのが、エイシンベリンダの2011(牝、父アグネスデジタル)で2050万円(税抜き)。上場者はローレルゲレイロ(高松宮記念、スプリンターズS)、ヒルノダムール(天皇賞・春)を育成したグランデファーム。公開調教では2ハロンを22.30(11.51、10.79)で走破。整った馬体と柔らかい身のこなしもあって、セリでも多くのバイヤーから声がかかっていた。このセールでは同じアグネスデジタル産駒のウイズアフェクションの2011(牡、チームプレアデス上場)も1750万円(税抜き)で取引きされ、またレガシーラベンダーの2011(牡、門別牧場上場)も、1ハロンで10秒96をマークするなど、目立った動き、そして評価を得ていた産駒が多く見られた。この3頭だけでなく、今年のアグネスデジタル産駒は要チェックと言えるのではないだろうか。

 1ハロンの一番時計(10秒69)を掲示した、追分リリーバレーの上場したチェリーフォレストの2011(牝、父ゴールドアリュール)は、取引価格の面でも一番となる3000万円(税抜き)で落札された。この時計は終いの1ハロンで掲示されたものであるが、ゴール板を過ぎてからもまだスピードに乗った走りを見せていたように、実質は3ハロンで時計を出していたとも言える。父譲りのダート適正が確実に受け継がれた印象も受けるが、このスピードなら芝でも…とも思わされる逸材だ。今年の追分リリーバレー出身の育成馬も、動き、馬体ともに楽しみな2歳馬たちが揃っているだけに、チェリーフォレストの2011共々、活躍を期待したい。

 高額馬といえば、今年の2歳トレーニングセール全体を通して最高取引額馬となったのが、千葉トレーニングセールにて5100万円(税抜き)で落札された社台ファームの上場したスモークンフローリックの2011(牝、父マンハッタンカフェ)。社台ファームの関係者からも「自信を持って送り出せる馬」との声が聞かれていたように、公開調教でも1ハロンの一番時計となる10秒7を計時。取引額で改めてその評価を証明することとなった。仕上がりの良さは公開調教の動きが証明すみであり、半姉がワイルドフラッパー(牝4)という血統面からは成長力も期待できる。その姉とは違って、父がマンハッタンカフェとなったことで芝適正も持ち合わせていそうなだけに、POGの指名馬最後の一枠に入れておく価値は充分にありそうだ。

▼筆者:村本浩平
 1972年北海道生まれ。大学在籍時代に「Number ノンフィクション新人賞」を受賞。現在はフリーライターとして活躍。特に馬産地ネタでは欠かせない存在。

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