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ダート馬の行き場(須田鷹雄)

  • 2013年11月12日(火) 18時00分
 個人的な話で恐縮だが、アースコネクターという2歳馬に少しだけ出資している。赤本を読み返してもらうと分かるが、和田正道師はアメリカ2歳トレーニングセールの馬をほぼスベリ知らずで当てており、出資はそれに乗っかった格好だ。誌面でもポジティブに紹介してあったと思う。

 グリーンファームは赤本の広告クライアントでもあるので、推した馬が走らないと読者の疑念を呼びかねず、その点でプレッシャーはあった。しかし北海道2歳優駿で2着と重賞レベルに達したので、みんなハッピーな結果が得られたと自負している。

 しかし、だ。このようなダート向きの2歳馬をフォローしていると、2〜3歳戦のいびつな構造がいろいろと目につく。

 例えばアースコネクターは1勝馬の立場で地方重賞を2着したため、収得賞金が560万円になってしまった。当然500万条件には出られず、ダートのオープンはフルゲートだと真っ先に除外になる。今後のダートグレードに登録しても、中央枠に入るのは難しい。過去にはアースリヴィング(新馬勝ち→兵庫ジュニア2着)も同じ罠にはまったが、同馬はドバイ遠征したので「実害」は少なかった。ただ、海外遠征というのはあくまでレアケースだ。

 仮に通常のダート路線を歩んできたとしても、常に除外や番組選択肢の少なさがつきまとう。

 中央競馬における500万条件のレース数は、2012年実績だと芝21レースに対しダート12。オープン特別・重賞は芝29に対しダートは御存知の通りゼロ。3歳500万条件は芝79レース・ダート62レースで均衡してくるが、1〜6月のオープン特別・重賞は芝38レースに対しダート5レース。

 いくらダートグレードがあるといっても、中央枠は限られている。しかも最初に900万円を超える収得賞金を手にした馬は出放題だが、遅れてきた馬にとっては狭すぎる門。さらに芝からの転向馬が割り込んでくると、生粋のダートオープン馬は行き馬がない。

 芝で勝ち上がってダートの500万条件以上で勝負になる馬と、ダートで勝って芝の500万条件以上で勝負になる馬の比率、ということも変数としては考えなくてはならない。日本競馬の風習では芝から使っていく傾向が強いので、当然前者のほうが多い。そうなると、2歳500万条件の鞍数なども、ダートは見た目以上に不足していることが分かる。

 POGなら「だからダート馬は指名するのをやめよう」で済む話だが、現実の競馬はそんなわけにもいかない。

 ダート馬が無理やり芝に使うケースは実際に多い。しかもその舞台は500万条件よりオープンであることのほうが多く、ますます苦し紛れの一戦になる。馬にもよるが、合わない条件で大敗させることは、その後の可能性を削ぐことにもつながりかねない。その意味も含めて、いまのアンバランスさはさすがに検討の対象になっていいだろう。

 また実際、検討は行われているようだ。今後数年の流れとして「ダート馬の行き場」については改善されていく方向のようではある。一番ネックになっているのは「ダート馬がクラシックに登録してくるのを防ぎたい」ということのようだが、そのあたりは一般事項でどうにでも縛られるはず。考えてみれば昔のG1にはレーティング優先枠など無かったわけで、ルールさえデザインすれば、誰も損をしない結論が得られるはずだ。例えばJRAにしても、芝の2歳オープンを少頭数でやるより、ダートのオープンを多頭数でやるほうが売り上げ増になる可能性はある。

須田鷹雄+取材班が赤本紹介馬の近況や有力馬の最新情報、取材こぼれ話などを披露します!

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