馬主やPOGにも無関係ではない、馬場の変化(須田鷹雄)
◆2世代目はわりと走っているチチカステナンゴ産駒への効果
いつもはデータの話を書くことが多いが、今回はアナログっぽい話を書いてみる。
実はたまたまある媒体で馬場の特集を進めており、私はライターではなく編集っぽい立場で関わっている。
上がってきた原稿を読んでいたのがちょうどここ10日ほど。その間、有馬記念週にはかなりの雨が降り、有馬記念も先行馬総崩れとなるタフな形で行われた。
その間に感じたのが、「なるほど、馬場は変ってきている」ということだ。
現在JRAでは、厩舎サイドからの要請に応える形で馬場をソフトに変えつつある。ソフトといっても芝丈を伸ばすのではなく、路盤を掘り起こしたり空気を含ませたりしてソフト化するイメージである。
それによって数値に表れやすい骨折系の故障率ではなく腱がらみの故障も減ると期待されているようで、もしそうなるなら好ましいことではある。馬場に何が求められるかといって、理不尽に身体的ダメージを受ける馬が減ることが理想だ。
一方で、馬場が変わるということは好走する馬のタイプが変わることでもある。これは当たり前のことだが、ちょっと見落とされかねないことではないだろうか。
例えば、初年度産駒がコテコテに負けていたチチカステナンゴが、さらに産駒全体の傾向として特に中山芝に強くなっている。中山は以前の馬場とのギャップが大きく、東京に比べると水はけは良くないので、雨が降るとその影響を引きずりやすい。それが、チチカスのような血統にはプラスに出ているように私個人は感じている。
仮にそのような効果があると仮定しよう。特をする血統が出るということは、損をする血統も出るということである。そしてその「損をする血統」は変わる以前の馬場で結果を出していたわけだから、いま価値が高まっている血統ということでもある。
大雑把に言うと、スピードと瞬発力に満ちている血統が馬場の行方によってはその優位性を減退させ、いままで足が遅くてキレないと思われていたような血統にある程度チャンスが回るかもしれないということだ。
まだ馬場は試行錯誤の段階にあり、データにはっきりした好走血統の変化が表れているわけではない。それでも将来明らかな変化が出るとしたら、本物の馬主は仕入れの段階でそれを先読みしなければならないし、POGもそれを見越した指名をしなくてはならないということになる。
特にセレクトセールのような華やかで高価な市場だと、なにも考えずにいままでと同様の購買をすることは危険でもある。それぞれのプレイヤーがどのような戦略を持つか、あるいは戦略を持つ者と持たない者に分かれるのか、ここは見どころである。
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次回の更新は、年明けの1/14(火)になります。