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太は凡人のふりをした天才!? 笹田師とのスペシャル対談第三弾!

  • 2014年01月14日(火) 18時00分
太論


笹田調教師をゲストに迎えた『太論』スペシャル対談第三弾。今回は、なぜここにきて、アクションの大きい騎乗法が取り入れられ始めたのか、笹田師がその理由を解き明かすとと同時に、いわく「凡人のふりをした天才」だという“ジョッキー・小牧太”について、その魅力を語ります!
(取材・文/不破由妃子)


■このまま沈みたくはない

──馬の背中にお尻を付くことは、馬にとって負担なのではないかという意見もありますが、そのあたりはどう思われますか?

笹田 背中の負担になることはないです。キ甲だと話は別ですけどね。さっきも言ったように、座った状態から馬を推進するためには、お尻で背中を押さなきゃ進まないから、その延長線上の動きでああいった追い方になる。どうしてもアクションが大きくなるけれども、そのアクションを最小限にとどめているのが武豊ということ。

──なるほど。

笹田 昔は、前に体重をかけたほうが馬は走るという考えで、鞍も前のほうに置いていたんです。でも今は逆で、後ろに重心をかけたほうが馬の推進力につながるということで、鞍を後ろに置くようになった。つまり、鞍の置き方から変わってきているわけで、当然、乗り役の重心も変わってきている。

小牧 そうなんですよね。僕が使っていた鞍は昔のままの前鞍だったんですけど、みんなが使っている鞍にやっと変えたんです。ある調教師さんに「置きづらい」って指摘されまして。なるほど、そういう変化もあるんやなと思いましたわ。おそらく、前鞍を使っていたのは、僕だけなんちゃうかな。

笹田 今頃気づいた(笑)?

小牧 そうなんですよ(笑)。最近の僕の変化のひとつです。

笹田 気づくのが遅いねぇ。僕は調教師の試験に受かってすぐ、主流の鞍を作ったよ。調教師では僕が初めてだったと思うんだけど、それがすでに6年前だからね。

小牧 そうですよねぇ。僕が使っていた鞍は、もう売ってないかもしれない(笑)。昔は、馬は前に乗れって教わりましたからね。一歩でも前に前にって。

笹田 今はほとんどが後ろやね。とはいえ、前脚が出ないことには後ろ脚は絶対に動かない。だから、トントン追いになっているわけで。前、後ろ、前、後ろっていう動きでね。

小牧 わかります。みんないろいろ考えてるんですよね。

笹田 なかでもやっぱり、武豊はすごいよ。すごく努力をしている。彼はまず、アメリカのスタイルから入って、その後、ヨーロッパで経験を積んだ。アメリカンスタイルとヨーロピアンスタイルを融合して、そこにさらに日本のスタイルを加えて、彼なりのスタイルを確立したわけだから。

小牧 ユタカくんはすごいです。追いつけない。この前、中京で横山典くんと話す機会があったんですけど、彼も言うてましたわ。

笹田 ああ、武豊もすごいけど、馬乗りが一番巧いのは横山典だと思うわ。彼は本当に巧い。こだわりがあるから成績にムラがあるけど、普通に乗ったら、武豊も敵わないと思う。“天才”というなら、僕は武豊より横山典だと思うな。
太論

「馬乗りが一番巧いのは横山典だと思う」


小牧 僕も彼は天才だと思います。彼は力を全然使わない。とにかく軽いんです。掛かって引っ張っているところとか、見たことがないですもんね。本当に巧いと思う。

笹田 そうそう、本当に巧く馬を御すよね。彼こそ天才。

小牧 僕は凡人だから、余計にわかりますよ。

笹田 太はね、凡人のふりをした天才だよ。だからいつも僕、太に言うでしょ? もうちっと本気を出せって。もちろん、本気を出すときは出しているけど、こういう人間だから、遠慮してしまっているところもある。地方であれだけの成績を挙げているジョッキーなんだから、もっとがむしゃらにいけば、もっともっと勝てるはずなんやけどな。

──ということですが、小牧さん、いかがですか?

小牧 はい…いつも言われてます。僕もいろいろ考えてますけどね。今一番思うのは、とにかくケガをしたらダメだということ。去年(2012年)の暮れに骨折したでしょう。だから今年は苦労しましたわ。乗り馬がことごとく取られていきましたからね。一度手を離れたら、なかなか戻ってきませんから。

笹田 ユタカにもそういう時期があったわけだよな。

小牧 そうですよね。実力勝負の世界やから、勝っていかなアカンのですよね。さっきも話しましたけど、11月に落馬したあと、しばらく膝が痛かったんです。だから、乗り数もボチボチでいいかなと思っていたんですけど、そのボチボチがどんどん悪循環にハマっていって。これじゃあアカンと思いました。体は全然衰えていませんからね。

笹田 そうだよな。太は大丈夫だと思うけど、自分で衰えたと思ってしまったらガクンと落ちるから、それは絶対に思ったらアカンよ。つねに若いつもりでいなくちゃ。

小牧 わかっています。今は、どの調教師さんからも“乗ってほしい”と思ってもらえるくらいの技術を見せていかんことには、始まらないと思っています。また1からのつもりです。このまま沈みたくはないですからね。

笹田 そうだよ、太。だから僕だって、チャンスのある馬を太に頼むんやから。太のすごいところは、ちゃんと勝てるポジションにいること。それは長年培ってきた経験で、レースを読めているから。周りがよく見えてるなと思うよ。

【次回の太論は?】
笹田調教師をゲストに迎えたスペシャル対談もいよいよ最終回。笹田師の調教師としてのポリシーに感銘した小牧騎手が、調教師転身にまさかの意欲を見せる!? さらに、「もう一度、GIを勝ちたい」と抱負を語った小牧騎手に、笹田師が放った男前なひと言とは?
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太論 / 小牧太
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。2024年には再度園田競馬へ復帰し、活躍中。史上初の挑戦を続ける。

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