▲エピファネイアで挑んだ2013年のダービー(撮影:下野雄規)
◆“勝てなかったダービー”から学んだこと
今年のダービーは、牝馬のレッドリヴェールで挑むことになった。
依頼がきたときは正直、驚いたけど、レッドリヴェールは桜花賞で改めてその強さを感じた1頭だった。ハープスターが大外を回ってきたとはいえ、同じような位置から競馬をしてあの着差(クビ差)。“3歳牝馬ではこの2頭が抜けているな”というのが、桜花賞の素直な感想だった。まさかダービーでそのうちの1頭に自分が乗ることになるとは思わなかったけどね。
調教は、1週前と本追い切りに騎乗。400キロちょっとという小ささを感じさせない躍動感のある走りだった。小柄でも、実際に乗ったときにそのサイズを感じさせない馬はいい。
デビュー3年目の98年を皮切りに、ダービーには14回騎乗してきて、一昨年にはワールドエースで1番人気も経験した(4着)。うまく乗れた年もあったし、もちろん思ったように乗れなかった年もあったけど、すべてがいい経験として今に生きている。
なかでも印象に強く残っている年といえば、やはりキングヘイロー(2番人気14着)の98年と、エピファネイア(3番人気2着)の昨年。キングヘイローのときは、前の週のレースが終わった時点で、一気に緊張が襲ってきたことを覚えている。スペシャルウィーク(武豊騎手)、セイウンスカイ(横山典騎手)と3強と言われた年で、ダービー週は取材も多く、今思えば、そこで発する自分の言葉がどんどん自分を追い込んでいったような気がする。今でもエピファネイアのときのように、自分で自分を追い込む癖はあるけれど、乗り越えてみせるという強い決意のもとに、意識的にそうしているところがある。
でもあのときは違った。その状況と自分の言葉に完全に飲み込まれてしまった。
レース当日も極度の緊張状態にあって、なにしろ返し馬ではひとりだけ違う方向に行ってしまったし、レースでも持っていかれて逃げるかたちに。にもかかわらず、