エピファネイアは攻めの調教
朝晩の冷え込みがきつくなりましたね。先日、栗東トレセンは早朝に5度を記録していました。すれ違う人々と合言葉のように「寒いねー」と話していましたよ。わたしは取材をする側だから歩いたり立ち止まったりするだけですが、乗っている人はたいへん。「耳が凍りそう」と藤岡佑介騎手が言ってましたけど、そう感じてしまうくらいなのですよー。ほんと、おつかれさまです。
にもかかわらず、太陽がのぼるとガクンと暑くなるからややこしい。朝一番の寒さにそなえたなら午前8時過ぎにはかなり暑いですし、日中にあわせた格好をすれば一番乗りの時間に風邪ひきそうになるし。困ったもんですよ。
“ちょうどいい”のが理想なのですが、なかなかそうもいきません。
そして、この秋は“それは馬の性格も一緒かなぁ…”と思わされるシーンがしばしばあります。
先日、東京競馬で大胆な逃げ切り勝ちを演じたエイシンヒカリ。ゴール手前で大外へ向かって走っていったことで一躍有名になりました。普段はすごく大人しくて人懐こくて可愛らしい。ある意味、すごく“ちょうどいい”心地の競走馬なんですが…。
普段は人懐こくて可愛らしいエイシンヒカリ
ちょうど今朝、岩田さんがいたのでエイシンヒカリについて聞いてみました。
――エイシンヒカリ、走りますね。
岩田「とにかく相当な能力がありますよ」
――スタートもすごくいい。
岩田「よすぎて、グーンっといっちゃう。だから逃げる形になってしまうんです」
――それでも、3戦目の三木特別、4戦目のムーンライトハンデでは岩田さんがなだめながら“折り合い”をつけていたんですよね?
岩田「折り合い? いやいやいやいや」
――エイシンヒカリなりに折り合いがついていたのでは?
岩田「もうもう、気がよすぎて」
いつもなんですが、岩田さんは身振り手振りで話してくれます。折り合いの話になったとき、手綱を抑えながら必死な顔をする岩田さん。馬の行きっぷりが良すぎて、乗っていてガツンとくる感じで、抑えるのに必死だったようです。一般的にいう“折り合いがついた”というところまではいかなかったようですね。とにかく、岩田さんのアクションからエイシンヒカリのパワフルさが伝わってきました。
岩田さんは以前、エイシンヒカリについて「後ろから行けるようになったらもっと走りそう」とコメントしていましたが、折り合いがついたら逆に持ち味が生かせなくなるケースもありますしね。どうなんでしょう?
たとえば、この春のエピファネイアがそうでした。春のソロッとした折り合い重視の調教から一変して、秋は昨年同様、攻めの調教を重ねているそうです。この秋、それがどんな結果に結びつくのか、興味津々です。
攻めの調教を重ねているエピファネイア
スプリンターズSで負けてしまったハクサンムーンのようなこともありますしね。一時期、クルクルとまわる癖があったのは有名でした。厩舎の馬房でもひたすらクルクルまわっていたし、レース当日はそれでは競馬で力を発揮できないからと桜井助手がずっと馬房に付き添い、引き手を持ってハクサンムーンがまわり過ぎないようにケアしていました。でも、最近のハクサンムーンはそこまで手をかけずに済むようになった。しかしながら、結果も出なくなったという…。まぁ、クルクルまわったから競馬で必ず走るわけでもないんですが。なかなか“ちょうどいい”からといって結果が出るわけでもない。競馬って本当に難しいです。