▲騎手として2児の母として、“仕事、結婚、出産、育児”の体験談を明かします
2011-12年シーズンに、ニュージーランドでリーディングジョッキーに輝き、2013年には通算1000勝を達成。ジョッキーとしてトップクラスの活躍を続ける一方で、2児の母としての顔も持つL・オールプレス騎手。女性にとって仕事、結婚、出産、育児は難しい問題です。今回は彼女の体験談や、サポートしてくださる旦那さんのことを語っていただきました。(取材:赤見千尋)
(つづき)
欠かせない「キウイ・ハズバンド」の存在
赤見 日本の競馬ファンのなかでも、リサさんの人気は高いですね。競馬場に行くと声援がすごいですもんね!
リサ ウレシイ! 皆さん、いつも温かい応援をありがとうございます!
赤見 残りの期間は福島で騎乗ですか?
リサ はい。福島で騎乗する予定です(7月26日まで)。もっともっと勝利を積み重ねて、皆さんに恩返しができるように頑張ります。
▲競馬場でファンの声援に応えるオールプレス騎手
赤見 ちょっと話はさかのぼりまして、最初の来日が2002年でしたが、この時のきっかけは何だったのですか?
リサ その当時、シンガポールで騎乗していたんですけど、オーストラリアから来られていたハイランド真理子さん(※)にお会いしたんです。彼女に日本の競馬のことをいろいろ聞いて、「よかったら日本で騎乗してみない?」とオファーをいただいたの。それで行ってみたいと思って。その前の年の自国での成績(リーディング3位)も良かったので、JRAから免許を交付してもらうことができました。
(※オーストラリア在住。アナウンサー、コピーライターを経て、週刊競馬ブック等で執筆)
赤見 最初の時の身元引受人は、美浦の鈴木伸尋調教師でしたね。
リサ ええ。鈴木先生もハイランド真理子さんに紹介してもらったんです。今回お世話になっている二ノ宮先生もそう。おふたりとも、とてもいい先生です。
赤見 最初の来日を終えて、日本の競馬で得たものというとどんなことでしたか?
リサ それはたくさんあります。レースでのペースや位置取りとか、日本の競馬のスタイルはニュージランドとは違うので、とても勉強になりました。そういう騎乗の幅を広げられることが、海外で騎乗する意義でもありますからね。だからチャンスがあれば国際レースに乗ったりとか、海外でも騎乗したいって、当時からずっと考えていたんです。
前回の来日の後は、日本で学んだことを活かしながら自国で一生懸命乗りました。その結果、タイトルも獲れたし、年間1000鞍以上乗ることもできて。そうやって一生懸命頑張ったことで、リーディングを獲ることもできたんです。いろいろな経験を積んで、自信も付けられましたね。
赤見 キャリアアップですね。
リサ ええ。さらに自国での実績があると、今度は海外でのライセンスも取れるでしょう。だからシンガポールへも行けたわけですけど、そこではインターナショナルレースにもいっぱい乗れたんです。国際競走ってその国だけじゃなく、世界中のホースマンが競争に来るわけじゃないですか。そういう経験が、本当に自分の糧になっていると思います。
赤見 また、シンガポール以外にも、世界中に遠征されていますよね?
リサ いろいろ行きましたね。イングランドのシャーガーCに出場したり、マレーシアとかいろいろな所からもオファーをいただいて、たくさんの国で騎乗できたのもすごくいい経験です。
赤見 そういうジョッキーとしてのご活躍と同時に、女性としては、2度の出産も経験されています。お子さんが生まれてからも、ジョッキーを続けているのがすごいと思います。
リサ それは、主人の献身的なサポートのおかげです。主人のおかげで私はレースに集中できるし、ジョッキーも続けていられる。家族のチームワークがうまくいっているのも、主人のおかげですしね。本当に感謝しています。ニュージランドでは、そういう夫のことを「キウイ・ハズバンド」っていうのよ!
赤見 キウイって、あの鳥のキウイですか??
リサ そうそう! キウイのオスは家族のためによく働くので、そういうの。チヒロも最近結婚したんでしょう? 旦那さんに「キウイ・ハズバンド」になってもらってね(笑)。
赤見 がんばります! リサさんの旦那さんは、結婚した当初からそうだったんですか?
リサ 結婚してからというか、婚約中からそうだったかな。その頃は、騎乗の依頼を受けてくれたり調整してくれたり、そういう面からもサポートしてくれていたので。
▲働く女性にとって「キウイ・ハズバンド」の存在の大きさを語るふたり
赤見 なんて心強い。妊娠と出産についても少しお聞きしたいんですけど、いつまで乗っていつから乗るかっていうのも悩まれたのかなって思うのですが?
リサ そうね。自分の体と相談しながら、乗れるところまで乗って。妊娠中はつわりでちょっと辛かったんですけど、生まれてからは、最初の子はあんまり手が掛からなかったので、6週間で競馬に戻ることができたの。
赤見 6週間で!?
リサ 最初はね。2人目の時は夜泣きとかもあって1人目よりは手が掛かったので、競馬に戻るまでに4、5か月かかったんですけど。でも、戻りました。
赤見 復帰する時に、体力的に辛いということはなかったですか?
リサ それはなかったです。もともと、ジムで筋力トレーニングをするといったことはしていなくて。筋力を付けるより、体を動かすことが大事だと思っているので、出産後もジョギングで長い距離を走ってコントロールしたり、ストレッチして体を柔らかく保つことを心掛けていました。
赤見 お子さんが生まれたことをきっかけに、ご自身の中で“引退”という選択肢はあったのでしょうか?
リサ いえ、それはありません。だって、せっかくジョッキーになったんですから! 本当はね、最初は獣医さんになりたかったの(笑)。
赤見 獣医さんに。
リサ ええ。でも学校に入ることができなくて、その夢は諦めたんです。乗馬をずっと続けていたから、それでジョッキーを目指すことにしたの。若い頃から体重も変わってないし、幸いなことに、これまで大きな事故とか怪我もなく続けてこられています。体力面でも精神的な面でも、自分はジョッキーに向いているんだと思いますね。この仕事がとても好きです。(つづく)