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予告通りの男泣き 橋口弘次郎厩舎最後の一日

  • 2016年03月09日(水) 18時00分
小牧太

橋口調教師と歩んだ13年、感謝の涙があふれた一日


先週は土日で4勝! そのうち2勝は橋口慎介厩舎で挙げ、見事初陣に花を添えました。さて、今回の太論は、「橋口弘次郎厩舎、最後の一日」について。予告通りの“男泣き”が話題になった小牧騎手が、改めて一日を振り返ってくれました。
(取材・文/不破由妃子)


「お」の字を発した瞬間からもう涙が止まらんようになって…


──2月28日、ついに橋口弘次郎厩舎が長い歴史に幕を閉じました。小牧さんにとっても長い長い1日だったのでは?

小牧 そうやねぇ。もう泣いても笑っても最後やったから。現にもう競馬場に先生の姿はないわけで。

──ずいぶん早くから込み上げてくるものがあったようで…。

小牧 そうやねん。最終レースは、いつもだったら(連続騎乗なので)パドックには行かないところなんやけど、最後だし行かなアカンと思って慌てて行ってね。先生に「お願いします」と言うところ、「お」の字を発した瞬間からもう涙が止まらんようになって…。グワーッと込み上げてきてしまった。だから恥ずかしかったですよ。慌ててゴーグルをはめたけど、絶対みんなに見えていたはずやから。「小牧、頑張れー!」っていう声援がいつもより多くて、あれはきっと僕が泣いてたからやな(笑)。

小牧太


小牧太



──そんな小牧さんを見て、先生はなんと?

小牧 いや、先生とはそれ以上、目を合わさんようにしたから。合わせられんかった。厩務員さんには「小牧さん、まだ早いで。レースも終わってないのに」って言われたわ(笑)。

──レースは阪急杯のミッキーラブソングが4着、最終のキタサンウンゲツが10着。どちらも人気になっていましたし、小牧さんも気合いが入ったのでは?

小牧 あの日は“橋口馬券”がずいぶん売れてたねぇ。阪急杯は、とにかく結果が欲しくて勝ちにいったつもりやし、実際、4コーナーでは勝つんじゃないかと思ったけど…まぁ残念やったね。でも、いいレースはできたと思うよ。最終レースは、積極的に行くつもりが、ちょっとスタートで挟まれてしまってね。でも逆に、内に入らんようにと思って、悔いのないように乗ってきました。

──先生も「納得のいくレースだった」とおっしゃっていましたね。その後は花束の贈呈式があって…。

小牧 花束を渡すときに、「13年間、先生のおかげでここまでやってくることができました。ありがとうございました」と、感謝の気持ちを伝えました。先生は「慎介を頼むぞ」と、息子さんのことを僕に託されて。

小牧太



──そうだったんですね。あのシーンでは、思わずもらい泣きしてしまいました。

小牧 もともと僕は涙もろいからねぇ。うちのオカンもグリーンチャンネルかなんかでそのシーンを観たみたいで、「あんた、顔をぐしゃぐしゃにして。皺がまた増えたんじゃないの?」って(笑)。

──最後は目がすごく腫れていましたね。

小牧 ずっと泣いてたから(笑)。久しぶりに“泣き虫ジョッキー”が出たね。競馬であんなに泣いたのはGIを勝って以来やわ。

──その日の夜は、どんなふうに過ごされたんですか? 厩舎のみなさんで飲みに行ったりとか?

小牧 いや、飲むには飲んだけどプライベートで。いつも以上に飲んだわ。記者さんたちが調整ルームの前で出待ちしてはって、「最後にひと言お願いします」と言われてね。「今日は吐くまで飲みます!」と。だから宣言通り、浴びるほど飲みました(笑)。

──なるほど(笑)。それにしても、橋口慎介厩舎はデビュー週にいきなり3勝。そのうち2勝を小牧さんが挙げられて、大活躍でしたね。

小牧太

橋口慎介師と小牧騎手のコンビ初勝利となった、ピークトラムの武庫川S



小牧 うん。本当に良かった。そういえば、レースが終わったあと、初めて先生からメールをもらいました。「ありがとう」って書いてあってね。だから、橋口慎介厩舎で勝つことが、先生への恩返しになるんじゃないかと思ってる。先生は結局、今年未勝利やったけど、ピークトラムもグレイスフルリープも息子さんへのお土産や。「慎介を頼む」と託された以上、先生への恩返しだと思ってこれからも支えていきたいと思ってます。
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。2024年には再度園田競馬へ復帰し、活躍中。史上初の挑戦を続ける。

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