今年だけで合計「7重賞」
3月のドバイで好走したリアルスティール(ドバイターフ1着)、ドゥラメンテ(シーマクラシック2着)に呼応するように、4歳牡馬
アンビシャス、
キタサンブラックが快走した。
現4歳牡馬陣の活躍は素晴らしいものがあり、古馬の中〜長距離路線では、今年に入ってからだけでも、ヤマカツエース(中山金杯)、レーヴミストラル(日経新春杯)、サトノクラウン(京都記念)、アルバートドック(小倉大賞典)、ドゥラメンテ(中山記念)、シュヴァルグラン(阪神大賞典)が勝ち、そして今回のアンビシャス(大阪杯)である。合計「7重賞」を制している。
牝馬限定戦はべつに、5歳以上馬の古馬中〜長距離重賞の重賞の勝利数は合計して「4つ」にとどまっているから、ドゥラメンテが代表する4歳牡馬陣の層は厚い。
この世代、ふつうは「もっとも強くなるのは充実の4歳秋」の定説があるくらいだから、これからさらにパワーアップし、勢力図の上位に台頭してくる新星も加わるはずである。
スローの流れが予測された2000m、ほかが何も行かないのを確認して、武豊騎手のキタサンブラック(父ブラックタイド)が主導権をにぎった。こういうレースの主導権の取り方は、ふだん使われる「逃げ」という形容はほとんどふさわしくない。べつに格下馬が夢中で逃げまわっているわけではない。自分で主導権をにぎり、先頭に立ってレースを作ったのである。
みんなスローになるのは分かっていた。ベテラン横山典弘騎手のアンビシャス(父ディープインパクト)が、考えた作戦というより、ごく当然のように2番手につけた。スタート直後は馬群から少し離れてわざと外を進み、行きたがる気性に「ムキにならなくてもいい」と納得させたあと、キタサンブラックのペースに合わせて2番手につけた。追い込み一手のカンパニーで先行して中山記念を連勝し、やがて8歳時のG1連勝に結びつけたときもこんな方向転換だった。
レースの流れは、前半「36秒8-48秒9-61秒1-」。GIホースが5頭もそろった阪神内回り2000mとしては、明らかに緩いペースである。各馬あまり離れることはなく、一団にも近い形で流れると予測した人びとが大半だったろう。まして、気分良く先頭に立ってレースをリードしているのは武豊騎手であり、2番手で折り合って流れに乗っているのは、ペース判断というなら武豊騎手と双璧の横山典弘騎手。
ところが、3番手以下はなかなか間合いを詰めるように接近して行かないのである。たしかにここは次の目標の1戦に向けたひとたたきではあるが、武豊のキタサンブラックと、横山典弘のアンビシャスが楽々と先行しているのに、これを射程に入れた位置を取りに出ないのはステップレースとしても、ちょっと物足りないように思えた。緊張感をもってレースを見ていたのは、先行しているどちらかを中心にしているファンだけで、ほかの馬が中心では、さらに差が広がりかけた3コーナーすぎでレースは終了していた。レースの後半は「-58秒2-45秒7-33秒6」だった。G1級がこの上がりになっては、簡単に順位は変わらない。
前の2頭に追いすがったのは、みんな上がり「33秒台」でフィニッシュしている中、わずかにレース上がりを上回って「33秒3」で伸びたジャパンCの勝ち馬
ショウナンパンドラ(父ディープインパクト)だけ。凡戦などということは少しもないが、拍子抜けの印象は残った。
勝ったアンビシャスは、これで6月の条件再編成で、4歳だからクラス分けに相当するベースの賞金額が半額になっても大丈夫。放牧に出て、(宝塚記念に使う可能性は残るが)秋の毎日王冠→天皇賞・秋を目標にするのではないかとされる。
3200mの天皇賞・春を予定するキタサンブラックは、菊花賞のような好位のインで仕掛けを待つ形もOKなら、小回りの有馬記念ではマークがきつかったが、京都3200mなら自分でレースを作る形もできる変幻を改めて確認できた。58キロも問題なかった。マークしてくるはずのゴールドアクターがいるから、自在の立ち回りが求められるのが天皇賞・春である。
大事を取って有馬記念を回避した牝馬ショウナンパンドラは、次は東京1600mのヴィクトリアマイルか。絞り込んだ馬体が回復し456キロ。昨年も大阪杯が当時は自己最高の452キロだったから、ヴィクトリアマイル→宝塚記念に向けて確実に調子を上げていくだろう。ただ、1600〜1800mはここまで【0-3-0-3】。前半から速い流れ追走の1600mの経験は乏しく、体型はマイラーだが、ジャパンCを振り返るとマイル戦ベストとはいえない面もある。今回、もう少し早めのきびしい追撃を試したかった。
ラブリーデイ(父キングカメハメハ)は、こういう上がりの速いレースは得意なタイプだけに、前半の位置取りと行きっぷりが悪かったのが誤算。もちろん、次走の香港(クイーンエリザベス2世C)では良化すること必至だが、トップのオープン馬にしては珍しく、5歳時の昨年10戦もしている。あれは予定通りで、それでパワーアップしたタフなチャンピオンだが、2400m以下ではまず凡走しないはずが、今回はあまり惜しくない4着。次走どれだけ変われるかだろう。
ヌーヴォレコルト(父ハーツクライ)は、追い切りは騎乗者の判断だったというが、さすがに直前の調教がきつすぎた面もあるのではないか。トップジョッキーは、レースでは一流でも、調教は加減しすぎて調教にならなかったり、逆に走らせすぎたり、なぜか調教でも一流の乗り手とは限らないケースが多いとされる。もっとも、今回のような高速上がりのレースはもともと得意ではなく、タフなレースのほうが合っているのだから、タフネスぶりが生きる香港で期待したい。
イスラボニータ(父フジキセキ)は、強気にスパートすると思えた3コーナー過ぎで、他馬より反応が悪かったのか下がったように映った。まだまだこれから巻き返して当然だが、3歳秋のセントライト記念を勝ったあと、【0-0-4-4】。いくらも負けていないが、結果が出ない。ここががんばりどころだろう。まだ自信を失ってはいないはずである。