あと400mくらいは問題なし
近年は、トライアルを使って本番の「オークス」2400mで好結果を出す馬は非常に少ない。だが、今年は桜花賞1-2着のジュエラー、シンハライトはともかく、他のトップグループに東京の2400mなら…と期待をいだかせる馬が少なかったうえ、1番人気で4着にとどまったメジャーエンブレムは距離適性を考慮し、NHKマイルCに向かうことになった。桜花賞当日の「忘れな草賞」を勝ったロッテンマイヤー(母アーデルハイトは、ブエナビスタの4分の3妹)も注目を集めるが、このフローラSからもオークス候補が誕生することが期待されていた。
大外18番枠から巧みに折り合って進み、1分59秒7「前後半59秒7-60秒0」のレースレコードで3馬身差の圧勝劇を展開した
チェッキーノ(父キングカメハメハ)は、東京2000mでこの強い勝ち方を示したとなると、古馬になりさらに距離が延びるならともかく、文句なしにオークスの有力馬の1頭だろう。
14番
クィーンズベスト、16番
クロコスミアなど外枠から先行策に出た馬がいたため、2コーナーで外に振られることなく中位におさまったチェッキーノは、道中スムーズに折り合って進み、ペースが上がった3-4コーナーの中間でもC.ルメールは他と一緒にスパートしなかった。前の
パールコード(父ヴィクトワールピサ)を見ながらしばらく待った瞬間があった。このあたりが中距離のビッグレースを得意とするルメール騎手の真価で、とくに気分良く行きたがることが珍しくないハッピートレイルズの一族には大きなプラスとなった。
エンジン全開となった400m-200mの地点で10頭近くを一気に交わした際の推定1ハロンは「11秒3-4」。レース上がり36秒1に対し、チェッキーノの上がりは「34秒6」。全体に流れの厳しいレースだったから、最後の1ハロンはチェッキーノ自身も推定「12秒0-1」となったが、バテていないからここで後続を3馬身も離している。
母ハッピーパス(父サンデーサイレンス)は、京都牝馬Sなど全5勝が1200-1800m。桜花賞4着→オークス7着。また、全兄コディーノも全勝ち星が1800m以下であり、皐月賞3着→日本ダービー9着。一族全体にマイラー型の印象が濃いが、祖母ハッピートレイルズの父ポッセは、今年旋風を巻き起こすアルゼンチン血統の代表格になる種牡馬フォルリ産駒であり、フォルリは大種牡馬サドラーズウエルズの祖母の父として知られる。さかのぼるとマイラー系の印象はなくなる。
チェッキーノの3代母はハイトップ産駒、4代母の父はセントクレスピン。兄コディーノや、母ハッピーパスより、明らかに「穏やかな気性(藤沢調教師)」なので、あと400mくらいはとくに堪えないのではないか。そういう距離展望に賛成したい。
ただ、藤沢調教師の管理馬のオークス成績は、99年のスティンガーから、14年のバウンスシャッセまで「4、4、7、5、4、3」着である。01年の母ハッピーパス、その半姉シンコウラブリイの産駒レディミューズなど、だれも凡走はしていない。だが、快走もない。
また、「フローラS1-3着」馬の、最近10年間のオークスの成績は、27頭の出走で【1-3-3-20】。決して本番に結びつくトライアルではないのも事実である。
メジャーエンブレムがNHKマイルCに回るので、同じノーザンFの生産馬で、同じサンデーレーシング所属のチェッキーノは、C.ルメール騎手だろうか。カギはここか。
中山のミモザ賞2000mを勝ってきたパールコードは、デビュー時の524キロからしだいに絞れて今回は502キロ。脚長でスッキリ映る体型になると同時に、スピード感が出てきた。タフな芝向きの馬が好走するケースが多いミモザ賞組は、同じ2000mでもフローラSで快走することは少ないが、完敗とはいえ2分00秒2で乗り切って2着は立派である。前回のミモザ賞は2分02秒3だった。直線に向いて坂下、直後にいたチェッキーノにあっという間に離されてしまったが、それでもバテずこの馬もレース上がりは大きく上回って、自身の上がりは「35秒3」。
本番がスローで高速上がりの決着になるのは歓迎ではないが、ジュエラーと同じヴィクトワールピサ産駒で、母の父に登場するロストコードは、社台グループでは、小柄ながらダートの鬼として一時代を築いたダイナレター、輸出されて世界で活躍する種牡馬ハットトリックの母方に流れていたリボー直系の種牡馬である。一般に成功することは少ないなどといわれるが、社台グループとは先代の吉田善哉さんの時代から相性がいい。ビッグレース向きの血である。
3着
アウェイク(父ディープインパクト)は、同じ美浦の斎藤誠厩舎にいた外国産馬ゴスホークケン(父バーンスタイン)の半妹。朝日杯FSのあとはなんでもない馬のようになってしまったゴスホークケンの下と聞くと印象は良くないが、当時の輸入外国産馬にしばしばみられたケースの典型で、本当は、距離や成長力の問題ではない。種牡馬バーンスタイン(父ストームキャット)自身は、たしかに短距離型だった。だが、アルゼンチン(今年はなぜか再三出てくる)にシャトル種牡馬として渡って、同国最大のカルロスペレグリーニ大賞2400mを2回も制したストームマヨールの父となっている。
アウェイクは、父が代わってディープインパクト。母が輸入されているから、アウェイクは日本産であり、幼駒時に怪しい育成をほどこされたアメリカ産馬ではない。成長するはずである。
4着
フロンテアクイーン(父メイショウサムソン)は、素晴らしい状態だった。ただ、前半1000m通過59秒7の息の入れにくい流れに、自身も行く気にはやって追走してしまったところがある。1600mを1分33秒3のクイーンCのあと、休養明けでの2000mもきつかったろう。父メイショウサムソンはスタミナ十分でも、きついペースは得意ではなかった。石橋守騎手(現調教師)が快勝した日本ダービーを思い起こしたい。賞金額から出走はOKと思える。ここをたたいて落ち着き、本番が緩い流れになり、折り合いがつくならまだ捨てきれない。