▲亀谷敬正×南関公認予想士「競馬予想の本質」に迫る新企画がスタート!(全3回)
血統ビーム研究所所長の亀谷敬正氏が、南関予想士をゲストに迎えてお送りする対談企画がスタート!(全3回) 第1回は『南関東公認競馬予想士協同組合』の理事長かつ、人気No.1予想士「夢追人」の屋号で活躍する高瀬孝也さん。中央競馬と地方競馬で畑違いながらも「競馬予想」というジャンルで繋がるふたりが、「競馬予想の本質」に迫りました。(取材協力:TCK、南関東公認競馬予想士協同組合ホースレースリサーチ東京)※今週より、『血統ビーム的傾向と対策』は毎週金曜19時公開になります。宝塚記念編は24日(金)に配信予定。お楽しみに!
前走のレース内容は当たりに直結する
亀谷 今回はTCKさんとの共同企画ということで、南関東公認予想士の方々との対談を通じて、「競馬予想の本質」に迫っていこうと思います。どうぞよろしくお願いします。
夢追人 いえいえ、こちらこそよろしくお願いします。
亀谷 お互いに「競馬予想」を生業にしている訳ですが、高瀬さんは中央競馬もご覧になるんですか? いきなりテクニカルな話になっちゃいますけど、最近は中央からの転入も多いから気になっていて。
夢追人 いやぁ〜私は見ないですね。正確に言うと見れない。もう7,8年前になるかな。実は半年間ぐらい未勝利戦と500万のダート競馬を中心にめちゃくちゃ勉強したことがあったんですよ。
亀谷 中央のダートも地方に似てるんじゃないかと。
夢追人 それもあるし、もしかすると中央競馬の勉強が自分の予想にも役立つかな? ってね。でも、途中でやめてしまいました。これは言い訳になってしまうんだけど、競馬場で毎日8時間くらい仕事した後、記憶が鮮明なうちにその日のレースを復習するんですね。その後に次の日のレースのための予習・分析、この時に毎回100レース近くを見直すんです。これに計7時間くらい掛かってしまうので、とてもじゃないけど時間が取れなくてね。
亀谷 それはキツイですね。
夢追人 それでも「負けるもんか!」って、中央の勉強を週末に詰め込んでいたら、半年で頭がパンクしそうになってやめました(笑)。向こうの馬については馬柱を分析するという、古くからのやり方で割り切って予想していますね。
▲「毎日、競馬場で8時間、自宅での予習・復習に7時間。終わったらヘトヘトですよ(笑)」
亀谷 休みは大事ですよ(笑)。僕も仕事なんで、土日は酒も飲まずにレースを観るんですけど、その日の傾向はとにかくメモしますね。内・外の有利、あのレースでは不利を受けた馬がいた、とかは欠かさずに。
夢追人 私もレースはよく研究しますが、前回のレース内容というのは、当たりに直結する一番重要な材料だと思っているんです。もちろん不利があったとか、ないとか、そういう細かいところもレース内容の中には入るのだけど、私はそれよりも流れに乗れていたのか、それとも逆らっていたのか。点数をつければ、騎手は100点満点の何点くらいで乗って、その結果だったのか。それを自分の目で見て、正確に評価する。毎日それを積み重ねてできたその馬の評価を土台に、今日一番力を出せそうなのはどの馬か、というのをパズルのように当てはめていく……私の予想スタイルはそんな感じかなぁ。
亀谷 わかります、そういう意味で復習は欠かせないんですよね。僕は弟子も採っているんですが、弟子たちには復習の意味でレース映像をよく見させます。それで競馬を見る目がだんだん養われていく。
夢追人 でも今はインターネットのおかげで大分便利になりましたよ。我々の先輩たちと比べたら、「お前ら、今パソコンあって、インターネットあって楽じゃないか」って言われるでしょうね。
亀谷 昔だったら1時間かけて作業することが、今なら1分で終わっちゃうことも多いですよね。その分、時間もできて昔の人たちに比べれば10倍、20倍の量を分析できているはずなんですけど……当たらないんですよね(笑)。
夢追人 そう、当たらないんですよ(笑)。
中央の予想家も許認可制の導入を!
亀谷 でもやっぱり大井に来たら飲んだり食べたりしながら競馬を楽しみたいな。予想士さんの話を聞いて、それに丸乗りして馬券買ったりして。僕が子どもの頃は、中央にも後楽園とかに、予想家さんのテントみたいなのがあったんですけどね。
夢追人 あぁそれはおそらく非公認の方たちですね。私たちは一年ごとの許認可制なんですよ。
亀谷 予想ブースごとに免許が下りているんですよね。あとひとつ聞いた話なんですが、予想士さんって馬券を買ってはいけないって本当なんですか?
夢追人 そうなんです。
亀谷 本当だったんですね。大井の職員さんと同じ扱いを受けているということですか。
夢追人 そういうことですね。要するにインサイダーを疑われるとか、あとは何か特別な情報があってやっているんじゃないか、という誤解を避けるためですね。我々は主催者から給料を貰っているわけではないですが、やはり"オール大井"の一員ですから。決められたルールは厳守しようという思いで皆んな仕事をしています。
亀谷 僕はその一丸となっている感じが凄くいいなと思って。実は中央にも予想家の許認可制みたいなのがあったら、もっと盛り上がると思っているんですよ。予想士さんは遊園地で例えると、キャラクターみたいなものだと思う。あの解説は娯楽として聞いてるだけでも面白いし。
夢追人 ありがとうございます。
亀谷 中央には予想ブースがなく、ネットの予想サイトが多いのですが、「振り込め詐欺まがい」と組んだり、バナーやメールで誘導するサイトとかも多いんですよ。もちろん僕はそういうところでは仕事してないです。僕らは、予想を楽しむツールやコンテンツを提示して、ご納得いただいたファンと楽しみたいだけです。
編集部 netkeibaでもコンテンツを提供されているんです。
亀谷 おかげさまで(笑)。ただ、一般の方には「振り込め詐欺」への誘導サイトと「予想ツール、コンテンツ提供」サイトの違いがわかりづらいようなんです。
夢追人 なるほど。
亀谷 今の中央には「ネット上のコーチ屋」(※開示した予想が的中した場合に、コーチ料の名目で高額な金銭を要求する詐欺行為を行う者)はあるけど、公認の予想ブースはない。その点、地方の予想ブースはいいですよね。競馬の楽しみを深めるために欠かせない場所だと思って、この対談企画を始めたんですよ。
夢追人 そう言ってもらえるのはとても嬉しいですね。
亀谷 予想ブースも、競馬場というアミューズメントパークの大事な風景だと思うんです。
▲「中央にも予想ブースはあったほうがいいと思います」
夢追人 本当ですね。さっきのお話と似たような思いを抱くことがあって、予想ブースも最初の呼び込みみたいなのがありますよね? あれを聞くこと自体はタダなんです。どんどんタダで聞いてほしいんですよ。最近は自分でツイキャス(※Twitterを使った音声ライブ配信)っていうの始めて、無料配信しているくらいですから。でも、さっき仰ったように、その延長線上に「予想を売りつけようとしているんだ」って誤解されている方もいるんだけど、本当にそうじゃなくて、少しでも競馬を楽しんでもらって、また来てもらえればね。
亀谷 あの呼び込みだけでも本当に面白いですからね、レース前の……口上? なんて呼ばれているんですか、専門用語的なものがもしあれば。
夢追人 我々は品よく聞こえるように、「それでは解説はじめます」っていう。
亀谷 粋ですね(笑)。あの呼び込みはやっぱり重要ですよね。買い目の書いてある紙はいくらなんですか?
夢追人 1レース200円、1日分(全レース)をまとめて書いてあるものは1,000円です。売上げも結果的に伸びれば嬉しいんですけど。それ以前に私は運良く常連のお客さんが多いので、その方たちに一レース、一レース、「きょうはこういう展開になりそうだ」とか、「クラス的に恵まれた、この馬の存在が光っている」とか、そのレースのポイントを丁寧に説明すること、伝えることがやり甲斐というかね。
亀谷 本当にレースって生き物で、レースによっては数字で表せるようなポイントがあるし、それを伝えるのが私たちの役割でしょうね。
予想のファクターはレースごとに変わる
亀谷 高瀬さんは、予想において血統はどれくらい考えるんですか?
夢追人 正直言うと、まったく考えないですね。始めたての頃は妙にミルジョージの子が走るとか、今だとサウスヴィグラスの子はスピードあるな、というのはもちろん感じますよ。でも大局的な部分で、世界の主流はこうで、ヘイルトゥリーズン系はどうだ、ノーザンダンサー系がどうだ、とかまでは追っていないですね。あと血統に限らず思うんですけど、競馬のファクターっていっぱいあるじゃないですか?
亀谷 そうですね。
夢追人 それですべてを気にする人は私、競馬下手だと思っているんです。自分が、何が一番当たりにつながるファクターなのかというのはいくつかに絞るんだけど、例えば今日の1レースは展開なのかもしれないけど、2レースは格で、3レースはまた前走のレースぶりでめちゃくちゃよかった馬がいるというふうに、レースによってファクターって変わっていくと思うんです。それで、そのレースごとのファクターを見抜く目は経験からしか生まれないと思っている。その見抜く目を育てるということが予想家として、予想士として成長していく上で大事な部分だと思うんですね。
亀谷 自分の狙い球を、得意ゾーンを見極める。
夢追人 ええ。「どうせ競馬なんて運なんだ」と言って、真面目にやらない人と比べたら、絶対当たりに近づくんですよ。ただ、「大事なんだ」「これが当たりのファクターなんだ」というものは、皆さん違うし、たぶん亀谷さんと私でもすごく違うと思うんです。
亀谷 そうですね。僕のそれが血統だったり、傾向だったり。ただ、お客さんもそういうのを追求している人は本当に見てくれているなと思うんですよ。お客さんの方が僕に詳しい。僕の理論、僕の姿勢に。「あっ、俺ってそんな一生懸命、競馬をやっているんだ」ってお客さんに気づかさせてもらうことが、多々あります。
夢追人 なるほど、なるほど(笑)。
亀谷 その反面、「調子悪いね」って渋い顔で言われると、なかなか辛いものがありますよね。でも一番辛いのは、調子悪いときに「信じて乗り続けます!」って言われること。嬉しいけど、あれが一番辛いですね。
夢追人 私が感じるのはね、競馬とかをほんとに好きでやられる方って、最後は自己責任ということをけっこう知ってくれている方が多いと思うんです。
亀谷 そうそう。そういうお客さんだけが残っていきますよね。続いている方は特にそうで、外れたのを人のせいにしたりする方は意外と少ない。
夢追人 やっぱり競馬をされる方っていうのは潔いし、粋だし、私が迷惑かけていても、「いや、そういうときもあるさ」って言ってくださる方もいる。なんだか競馬やる人間っていいなぁって、競馬そのものも好きだけど、競馬をほんとに好きで楽しんでくれているファンの方がいて、それを直に感じられる「競馬予想士」という職業はすごくやり甲斐がありますよね。
競馬予想に"バント"は禁物?
亀谷 予想家同士だとわかる話って、例えば3連敗、4連敗とかして、自分のフォームを貫かずに当てに行く、みたいなのがあるじゃないですか。なるべくそういうことはしないように意識してるんですけど……
夢追人 わかります。今は私もないんですけど……
亀谷 若い頃はどうでしたか?
夢追人 亀谷さんはわかると思うんだけど、いくら考えても「答えの出ないレース」があるでしょう? どんなにやっても。
亀谷 あります、あります。
夢追人 答えが出ないときに限って、なんだか"バント"しに行っちゃったりとか。
亀谷 そうそう、バント! バントっていう表現、やっぱりありますよね。
夢追人 それが当たればいいんですよ、まだ。
亀谷 そうそうそう(笑)。バントしに行って、空振っちゃうときがある。予想家同士だと"バント"っていう表現が共通認識としてあるんですよね。
夢追人 でもやっぱりいくら考えても、ほんとに答えがないレースがあって、そういうレースは、結果的にバントしちゃってるのかな? コイツを書いといたほうが当たるかって予想して空振る。それが一番後悔する瞬間なんですが。
亀谷 競馬って面白いもんで、多くの競馬予想家やファンが揃ってバントしちゃってるようなレースってあるんですよね。そういうレースで狙ってた馬がいれば、思いきって勝負するようにしているんですけどね。
予想士・予想家から見た競馬の魅力
夢追人 でも私も亀谷さんもこの仕事やってて辛いときももちろんあると思うけど、やっぱり一番はファンと接して、ファンの役に立てるというところ。失礼になるかもしれないけど、まともに仕事されているファンの方が競馬やろうと思ったら、十分なデータは絶対に揃わないし、十分な知識を勉強する時間もないわけだから、少なくともその手助けをできればね。
亀谷 誕生日馬券とかで漫然とお金を使われるよりも、ちょっとは納得を提供できればいいですよね。忙しいファンの方々に。
夢追人 そうですね。さっき言った通り、話を聞いていただくだけならタダなんですよ。今は馬券を100円、200円でしか買わないけど、そのうち人間として社会でビッグになったら、今度万札で買うようになるかもしれないんだから、そういうふうになったときに初めて予想を買ってくださってもいいわけで。
亀谷 いやあ、いいですねー。若い人にもたくさん予想を聞いて競馬を楽しんでもらう。そして若い人たちがビックになったら、たんまりご祝儀をもらう(笑)。
夢追人 大井競馬場の魅力についても私なりに考えたんだけど、こんなすばらしい立地条件で、仕事の後にパッと来られる。ナイターの時間に競馬やっているというのが最大の魅力なんでね。仕事で上司に怒られて面白くなかったら、競馬で憂さもはらせますよ。でも、それがいつも負けていたら、誰だって来たくなくなるし。せっかくこの仕事で今まで生きてきて、もう自分の売上どうこうというより、そういうところで競馬ファンの方に手助け、恩返しをしたいですけどね。ちょっとかっこつけすぎかな(笑)。
亀谷 いやいや(笑)。大井は素晴らしい場所です。競馬って節度を守れば本当にお金の掛からない最高のレジャーですよ。僕は予想家同士をライバルと思ってないんです。ディズニーランドとか、そういうところに負けない楽しみを提供する方法を皆で追求すべきじゃないかと。ゴルフとかと比べても一番お金が掛からなくて、頭の健康にもよくて、適度にスリルもある。一番いい娯楽なんじゃないかといつも思っています。
夢追人 本当ですね。カジノになんか負けてられないですよ!
亀谷 負けられないですよ! 羽田空港の横でしっかりアピールしないといけませんね(笑)。 (本編、了)
▲「夢追人」の屋号で活躍される高瀬さん、ご協力ありがとうございました!
※次回はジャパンダートダービー週にお届けします。
南関東公認競馬予想士・メンバー紹介▲現在の南関東公認競馬予想士は総勢13名(写真は12名)。計3回に分けて全メンバーをご紹介します!
▼夢追人(下段左から2番目)
今回の対談にも登場した、場内人気No.1の予想士。大井・川崎・浦和の3場で営業し、レースごとに一頭ずつ馬の解説をすることから、いつも人だかりができている。馬券スタイルは、軸1頭からの流しが基本。相手馬は最大で6頭、絞ることもある。競馬予想士歴は30余年で、予想士たちが所属する『南関東公認競馬予想士協同組合ホースレースリサーチ東京』の理事長も務める。⇒
<夢追人『それでは解説はじめます』ツイキャスで配信中!>▼まつり(上段左)
粋の良さでツキを呼び込む江戸っ子予想士。大井・川崎の2場で営業しており、馬券スタイルは、馬複・馬単が中心。若いファンの心をつかむ気風の良い語り口は“一聞の価値あり”で、組合きっての男前フェイスは“一見の価値あり”!
▼ラッキー社(上段右)
競馬のあるなしにかかわらず、毎日7〜8時間の研究を重ねる“競馬仙人”。大井・川崎の2場で営業している。資料の豊富さと競馬にかける情熱は、予想士仲間からも一目置かれている。
▼マーサ(上段右から2番目)
持ち前のセンスと、真面目な性格、地道な努力で多くの熱狂的ファンを獲得。「点数を多く買えば、当たる確率は上がるが利益は減る、点数を絞れば、利益は大きくなるが確率は下がる」…長年の経験からのバランスで、3連単のフォーメーション12点買いを中心に予想をしている。南関東全場で営業。