長距離路線の充実は今年も継続、しかし昇格重賞の目玉は短距離路線
欧州パターン委員会(EPC)から、2018年の重賞格付けに関する発表が1月26日にあり、23競走の昇格と9競走の降格が発表された。
ステイヤーたちの市場における価値を向上させることを主目的に、長距離路線の充実に取り組んでいるEPCは、昨年度、距離16FのグッドウッドCをG2からG1に、ロイヤルアスコットを舞台とした3歳限定のクイーンズヴァーズ(芝13F211y)を準重賞からG2に昇格させたが、その方向性は今年も継続されており、複数の長距離戦がアップグレードされている。
例えば、グッドウッドを舞台とした牝馬限定重賞リリーラントリーS(芝14F、8月2日)が、従来のG3から今年はG2に昇格。ヨークのシルヴァーC(芝13F188y、7月14日)、レパーズタウンの牝馬限定戦スタネーラS(芝14F、7月20日),グッドウッドの3歳限定戦マーチS(芝14F、8月25日)、サンクルーの牝馬限定戦ベルデニュイ賞(芝2800m、10月27日)が、それぞれ準重賞からG3に。更に、ヨーク競馬場に牝馬限定のG3ブロンテC(芝13F188y、5月26日)が新設されることになった。
この他、5月6日にドイツのケルンで距離3000mの準重賞が、5月9日にはアイルランドのゴウランパークで牝馬限定の距離14Fの準重賞が、7月26日にはアイルランドのレパーズタウンで3歳限定の距離14Fの準重賞が新設されることになっている他(レース名はいずれも未定)、5月3日にロンシャンで行われる牝馬限定戦ゴールドリヴァー賞(芝2800m)も準重賞として施行され、ステイヤーたちの活躍の舞台が広がることになった。EPCは、今後も長距離路線の充実を図っていくとしており、2019年には更なる長距離重賞の昇格があることを示唆している。
長距離戦の充実を謳いつつ、しかし、2018年の昇格重賞の目玉は短距離戦となった。アイルランドのカラ競馬場を舞台としたフライングファイヴ(芝5F)が、従来のG2から今年はG1に昇格することになったのだ。1985年にフェニックスパークを舞台とした5F戦として創設されたのがフライングファイヴで、創設4年目の1988年に、早くもG3の格付けを得ている。フェニックスパークが1990年をもって閉鎖になると、1991年からフライングファイヴはレパーズタウンに移転。
更に、カラに開催地が変わった2002年にG2に昇格したが、2004年にはG3に降格。2014年から、アイリッシュチャンピオンズウィークエンドの一角をなすレースとなり、2015年に再びG2に昇格していた。その2015年にはソールパワー、2017年にはカラヴァッジオと、短距離路線のトップホースがこのレースを制し、レースレーティングを向上させていた。
ヨーロッパには、6F路線と5F路線を「別物」と見る者が多く、例えば、2017年のヨーロッパ短距離路線における2トップと誰もが認めるハリーエンジェルとバターシュは、前者が6F路線、後者が5F路線を歩み、2頭が顔を合わせたことは1度もなかった。その一方で、6F路線にはG1が2歳戦を除いて5レース、2歳戦を含めると9レースあるのに対し、5F路線にはG1が3レースしかなく、5Fが最適距離のスプリンターたちは、いささか冷遇されていたと言えよう。
フライングファイヴ(9月16日)がG1になったことで、ロイヤルアスコット初日の6月19日に行われるG1キングズスタンドS(芝5F)、8月24日にヨークで行わるナンソープS(芝5F)、10月7日にロンシャンで行われるG1アベイユドロンシャン賞(芝1000m)とともに、5Fの路線らしきものが整備されることになった。また、9月15日・16日に両日に開催される今年のアイリッシュチャンピオンズウィークエンドは、2日間に6つのG1競走が集結し、益々豪華な開催となっている。
この他、前述したリリーラングトレーSの他に、5月11日にチェスターで行われる4歳以上のハクスレイS(芝10F70y)、8月18日にドーヴィルで行われる2歳牝馬によるカルヴァドス賞(芝1400m)、9月15日にレパーズタウンで行われる2歳馬によるゴールデンフリースS(芝8F)の3レースが、従来のG3からG2に昇格になった。
一方、今年はG1からG2への降格、G2からG3への降格はなく、カラを舞台とした2歳戦のカラS(芝5F)、ボルドーを舞台とした3歳以上のアンドレバボワン賞(芝1900m)の2競走が、G3の格付けをはく奪されている。EPCはまた、12の重賞競走が今年のレース内容如何で2019年には降格となる危機に瀕していると警告。リストには、7月2日にハンブルグで行われるG1独ダービー(芝2400m)、10月29日にローマで行われるG1リディアテシオ賞(芝2000m)という、2つのG1が含まれている。