▲複雑な1日となった日曜日について語ってくれた小牧騎手
日曜日の阪神2Rで今年3勝目をマークし、うれしい報告といきたいところですが、残念ながらゴールと同時に騎乗馬のモズカプリッチョが骨折。「素直に喜ぶことはできん」と、小牧騎手も心痛める結果となってしまいました。今回は、ゴール直後の経緯と心境、そしてアスタールビーで挑んだフィリーズレビューを振り返ってくれました。(取材・文:不破由妃子)
本当に残念やけど、ようあそこまで踏ん張ってくれた
──本来であれば、張り切って3勝目(3月10日・阪神2R・3歳未勝利・モズカプリッチョ1着)のうれしい報告をしたいところではありますが、日曜日は複雑な一日になってしまいましたね。
小牧 馬がね…。可哀想なことをしたね。11月の新馬戦で2着して、「次は勝てるな」と思っていた馬やった。
──「あの馬は走るよ」とおっしゃっていたのを覚えています。
小牧 うん。当時からちょっと歩様がコトコトしている感じやったんやけど、追い切ったらいいスピードがあって、これはいいなぁと思っていた。実際、デビュー戦でもいい競馬をしてくれて、この状態で2着にくるんやったら次は勝つなって思っていたら、やっぱりレース後に硬さが出てね。それでここまで休んでいたんやけど。
──今回、追い切りには騎乗されていませんでしたね。
小牧 追い切りも乗りたかったんやけど、「歩様も全然問題なくなったので大丈夫です」ということでね。それくらい厩舎の人たちも自信を持って送り出したんやと思う。
──そうだったんですね。当日の気配はどうだったのですか?
小牧 返し馬にいったら、たしかに初出走のときは全然違った。すごく良くなってたよ。これなら、と思った。
──故障を予感させるような要素はなかったんですね。
小牧 うん、なかった。ただね、もともと硬さがある馬だから。たぶん生まれつきやね。
──レースは2番手から虎視眈々と。直線もジワジワと逃げるシーシャープを追いつめて…。
小牧 ゴール板でちょうどやもんね。かわしたと思った瞬間でしたわ。
──ガクッときたんですね。
小牧 きたね。「かわった!」って声に出して言った途端にガクッときて、鐙が外れてしまってね。倒れそうやったから、早く下りてあげたかったんやけど、鐙が抜けたからなかなか下りられなくて。可哀想なことをしてしまったね。下りてすぐは、馬を見ることができなかった。でも、ああいう場合って、自分で鞍を外さなきゃいけないんですわ。
──ああ、後検量がありますからね。
小牧 そう。でもなかなか気持ち的に難しくて…。馬をよう見らんくて、係員さんにお願いして外してもらったんです。あとで裁決委員に注意されたけどね。難しいところですわ。
──ルールとはいえ、そのときの小牧さんの気持ちは、察するに余りあります。もっともっと上に行ける馬だと思っていたので残念です。
小牧 うん、僕も上にいける馬やと思ってた。本当に残念やね…。ただ、ようハナ差でも勝ってくれたなと思って。ようあそこまで踏ん張ってくれたよ。あれで負けていたら、それこそやり切れんわね。まぁ勝ってくれたことはうれしかったけど、素直に喜ぶことはできん。でも、引きずっていたらね、そのあとのレースもあるから…。できるだけ思い出さないようにしてた。
──そのあとのレースといえば、フィリーズレビュー(アスタールビー14着)では不利がありましたね。
小牧 あれ、危なかったでしょう。
──はい。思わず「危ない!」と声が出ました。直線で小牧さんが外の馬の動きを確認してから追い出したように見えたので、あ、まだ脚があるんだなと思って見ていたんですよ。
小牧 そう、まずまずのペースで逃げたけど、まだ余裕があったから、伸びそうやなと思って追い出しのタイミングを計っていて。でも、不利がなかったとしてもちょっとスタミナが足りんかったかな。前走の小倉で大きく体が減っていて、そこからさらに減っていたからね。でも、あの馬は走るよ。乗り味がいい。
──スムーズなら14着という馬ではないですよね。
小牧 うん、もうちょっと前にはきてるね。この前は完全に戦意を喪失してしまったから。
ただね、彼(坂井瑠星騎手)からすれば、あそこしか行くところがなかったのは間違いない。僕が逆の立場だったとしても、あそこに入っていくと思うわ。だから、裁決室でも危なかったことは伝えたけど、ほかにはなんにも言わんかったよ。まぁ気持ちはわかるからね。僕も調教で乗っていた馬やから、力があるのもわかっていたし。
──(普段、小牧騎手が調教を手伝っている)笹田厩舎の馬ですもんね。
小牧 うん、走りそうな馬やなと思ってた。元ジョッキーの岸(滋彦)くんが担当している馬やしね。
──複雑な1日ではありましたが、小牧さんご自身のリズムとしては乗ってきた感がありますね。
小牧 うん。いい馬と巡り合って、4勝目、5勝目とポンポンといきたいところやね。
僕が逆の立場だったとしても、あそこに入っていくと思うわ