黄金色に輝く夕陽の中、淀のスタンドに「まつり」が響き渡った。
クラシック最終戦・第76回
菊花賞(GI、3歳、京都・芝3000m)は、
キタサンブラック(牡3、
清水久詞厩舎)が制覇した。
所有する歌手の北島三郎さん(名義は有限会社大野商事)は、「失礼かなと思ったんですが、競馬好きなみなさんとGIを勝ったら一節歌うと公約していたので」と笑みをこぼした。
多くのファンが手拍子で祝福する中、サブちゃんは「これが“競馬”の祭りだよ〜」と歌い上げた。
馬主となって半世紀。ついに手に入れたGIタイトル。
「まもなく80歳ですが、こんなに感動した日は初めてです。頑張ってくれた厩務員、調教師、そして素晴らしい腕の
北村宏司騎手のおかげです。北村騎手はおそらく、
キタサンブラックの背中で『ここは我慢してくれ』って思いながら道中乗っていたんじゃないかな」
サブちゃんの言葉に、隣で北村騎手は大きくうなずいた。
レースはスタンド上階から観戦した。
「ガラスがあったので、双眼鏡や放送、テレビも見ながらでした。途中いいポジションにいたのでがんばってほしいと思っていました。内から抜けてきた時は『行けー!』と叫んでいました。ゴールしてバンザイと共に涙が込み上げましたね」
勝負服と同じ茶色と黒のスーツ姿で戦いを終えた愛馬を迎えた。
「
キタサンブラックは、勝った後の写真撮影でもうるさいところを見せず、ちゃんとポーズを決めます。だから、心臓が強いんだなって思っていました。目も顔も男前で惚れて購入しましたが、ちょっと細い目に見えた牧場時代からこんなに立派になったのか、と思いました」
次走は未定、としながらも清水師は「来年、再来年と、オーナーに恩返ししたいです」と今後へのさらなる期待を口にした。
(取材・写真:大恵陽子)