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追悼・田中章博調教師 「わたしは諦めるのが嫌い」

  • 2016年07月25日(月) 13時00分
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 7月24日午前9時23分、田中章博調教師が病気のため亡くなった。62歳だった。

「祖父・良雄も、父・良平も騎手であり、調教師でした。わたしは父系で三代目の調教師なんです」と話していた田中章師。トレセンがなく競馬場で馬を管理していた時代は厩舎に多くの来客があった。祖父が名伯楽・伊藤勝吉師の弟子だったため、田中章師は幼少時から伊藤一門の下で多くの競馬関係者に囲まれて育った。

「馬主さんに喜んでいただきたい。それが一番です」

 競馬の勝ち負けで歓喜する人々の中で育った田中章師ならではの言葉だった。

 調教では、馬たちに対して極力ストレスを溜めないように努め、そのためにいろんな手段を考えて実践してきた。たとえば、極端にゲートを嫌がる馬にはゲート内で縛るという手法をとる場合があるが、田中章師はそんなときはあえてその馬をプールに連れて行った。

「ゲートに入らない馬を無理にゲートに押し込めるのはストレスにつながります。でも、プールで狭い場所に慣れさせるとストレスも少ない上に効果も上がりやすいんですよ。栗東トレセンのプールは円形と直線の2種類がありますが、直線のほうは退路のない狭いかたちで山と逆の形で徐々に深く浅くなっていきます。その一番深くて狭い場所で馬をとめ、シャワーを当てるなどして刺激するんです。すると、馬は狭い場所に留まることに慣れるのか、以前よりゲートでの駐立がスムーズにいくようになるんです」

 そんな田中章師が病魔に襲われた。非常に例の少ない珍しい病気で、長い間、闘病を強いられた。それでも「わたしは諦めるのが嫌い」と力強く話し、持ち前の負けん気で真っ向から病気と闘い続けた。

 管理馬キングズガードはこの春、3連勝ののちに重賞3着。さあこれからという時の訃報。ご本人は無念極まりないはずだ。

 心優しい田中章師、心よりご冥福をお祈り申し上げます。合掌。

(文:花岡貴子)

みんなのコメント 17件

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  • カキタンさん

    「極端にゲートを嫌がる馬にはゲート内で縛る」という訓練法は最近本サイトで知りました。素人ながら、あまり良い方法には思えなかったのですが、
    プールを利用する方法を田中調教師が取られていた事を知り、納得できました。

    人間も馬も極度のストレスは健康を害するだけです。

    馬にも人にも、全てに優しく出来る世の中になればいいなと思います。

    心よりご冥福をお祈り申し上げます。

  • お弟子さん

    諦めずに工夫するその精神に感服します。(>_<)
    ご冥福をお祈り致します。

  • ききょうさん

    競走馬に優しく。自分に厳しい立場を貫かれた田中調教師。
    ゲートに入るのが好きな馬は少ないでしょうし、公平なスタートを切る為とは言え難しいしつけですね。 ゲート内で固定するのもひとつの方法ですが、馬の気持ちを考えプールで狭いスペースに慣らす。なんていい方法でしょう。人間だって狭い個室に入れられるより、温泉やお風呂でな珍ら狭くてもリラックス出来ますから。
    障害馬の育成手腕の確かさ、馬の行動にこんちくしょうと思ったこともあったでしょうが。それでも、優しく接して調教するのは本当の強さがあった調教師でなければ出来ないはず。言葉も文章もつきませんが、やさしく今後の競馬会を見守ってくれると信じています。 

  • アルフィーサードさん

    ゲートが苦手と言っても、入らない、駐立出来ない、出ないと色々パターンがあるから、この場合は入らない馬の狭いところへの苦手意識の克服方法の一つなんだろう。こういう工夫話をもっと聞かせてほしかった。

  • ウマ次郎さん

    本当に心優しき方だったのかと思います。馬主、馬、関係者等々を本当に大事にされて創意工夫されて頑張っていた矢先の訃報はとても残念でなりません。謹んでご冥福をお祈りいたします。

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