天皇賞・春を前にして、
アドマイヤデウスの梅田調教師がこんなことを言っていた。
「近藤(利一)オーナーは積極的に勝ちにいく競馬をさせてくれるからありがたい。勝負にいく姿勢を見せれば、たとえ負けたとしても納得してくれる。こっちとしてはすごくやりやすいんだ」
その言葉通り、
アドマイヤデウスの春天はまさに“勝ちにいく競馬”だった。スタートから積極的に位置を取りにいって、道中は
キタサンブラックを徹底マーク。勝負どころを前に、ひと呼吸入れるどころか、おっつけてエンジンを再点火し、キタサンを負かしにいく姿勢を見せた。結果0秒3差4着に敗れはしたが、3着
サトノダイヤモンドに先着しようかという見せ場をつくったのだから、まさに称賛されるべき敗者。オーナーが好むレースの典型だった。
そんな積極的に勝ちにいく近藤オーナーのアドマイヤ軍団が、近年はGIタイトルから遠ざかっている。2014年に豪
コーフィールドCを
アドマイヤラクティが制覇した例はあるが、
JRA・GIに限れば、08年
天皇賞・春の
アドマイヤジュピタが最後になるのだから“長い沈黙”である。だが、そんな「沈黙期」に終止符を打つ絶好機がやってきた。
ヴィクトリアマイルの
アドマイヤリードだ。
「道悪の前回(
阪神牝馬S2着)は馬場の悪い内からよく伸びてきたよ。さばきから道悪もこなすとは思っていたけど、上がり32秒台の切れ味を使えるくらいだから、良馬場に越したことはない。直線の長い東京マイルはピッタリなんじゃないかな」とは須貝調教師。
なんでも1週前追い切りに騎乗したルメールは「前回とは馬が違う」とラ
イバル陣営の関係者にデキの良さを吹聴していたとか。その話を聞いた須貝調教師もより自信を深めたようで、「あとは長距離輸送した後も、今の状態、落ち着きを保っていられるか。課題はそこだけ」とVをハッキリ意識している。
アドマイヤ軍団久々の
JRA・GI勝利に向け、
ヴィクトリアマイルではまさに陣営一丸となって「勝ちにいく競馬」をしてくれることだろう。
(栗東の坂路野郎・高岡功)