競馬記者の間で交わされる「バレた」という言葉の主な使用例は以下のようなケースだ。
こっそり狙っていた馬が、調教で猛烈に動いてデキの良さが白日の下にさらされてしまった時や、陣営の感触がやたらといい馬に、ルメールや
ミルコ・デムーロあたりの騎乗が決まった時、この「バレた」という言葉を使う。
厄介なのは“バレた後の対処”だ。当初の見込み以上に人気になってしまっても大勝負の姿勢を貫くか、妙味がなくなったと考えて買い控えるか、その判断が実に難しい。
前走の
七夕賞に続いて、GIII
小倉記念(6日=小倉芝2000メートル)に格上挑戦する
タツゴウゲキの鞍上がM・デムーロに決まった時、「これでバレてしまったな」と意気消沈してしまった。こっそり買うつもりだったのに…。
とにかく
七夕賞は最悪な競馬だった。道中は好位内の絶好位を確保したが、3角で同じ鮫島厩舎の
フェイマスエンドが下がってきた時にうまく避けられず、4角では最後方まで位置を下げる大きなロス。さらには直線でも前が壁になって外に進路を切り替えるロスがありながらも、勝ち馬
ゼーヴィントとは0秒4差。まともなら馬券になっていた可能性が非常に高い。
仮に地味な騎手?が騎乗しての再度の格上挑戦なら、そこまで人気にならないはずだが、鞍上デムーロでは妙に沸いてしまうのは確定的。過剰人気になってしまえば、一気に購買意欲を失ってしまいそうだが…。
「競馬をちゃんと見ていた人は“次は”と思ったでしょうね。前走後は1週間短期放牧に出して、ここ目標にやってきました。自己条件への出走? それは全く考えていませんでした。以前よりトモに張りが出て、見違えるほど馬は良くなりましたし、ハンデも前回と同じ52キロ。あとはスムーズな競馬ができれば、と思っています」と担当の折間助手は当然のように、やる気満々だけに、やっぱり買いたくてたまらなくなる。
ちなみに先週の新潟の自己条件・佐渡S(1600万下、芝外2000メートル)の登録馬は10頭。出走を考えていれば確勝級だったはずだが、登録すらしない徹底ぶり。それだけ今回の
小倉記念にかけているのだろう。
デムーロ騎乗で人気沸騰? いやいや、それも上等。デムーロなら、より確実に馬券圏内に導いてくれるはずと前向きに捉え、買いの姿勢を貫くことに決めた坂路野郎である。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ