競馬サークルでは、先々のローテーションについて質問すると、「あくまで今回の結果次第」という答えが返ってくることが多い。競馬ぶりが良ければ、大きい舞台に使いたくなるだろうし、前哨戦ごときで結果が出ないようでは、予定を変更してひと息入れることもある。どう転ぶか分からないのが勝負の世界。あくまで柔軟に選択肢を残しておくわけだ。
しかし、
金鯱賞にエントリーしている
エアウィンザーのオーナーサイド(ラッ
キーフィールド)は、前走の
チャレンジCの時、そういうやり方をしなかったという。
事前に厩舎サイドに「勝っても負けても休養を入れる」と申し入れ、実際、勝った後、すぐ休みに入った。好位から上がり最速の脚を繰り出して、2着に3馬身差。あんな完璧な勝ちっぷりを見せられたら、普通は
グランプリ・
有馬記念に使いたくなるもの。
担当の上村助手も「自在性のある馬で距離も持つだろうから、仮に
有馬記念に使っていたとしても、面白かったと思いますよ」と当時を振り返るが…。その誘惑を断ち切り、宣言通り休養を入れた。ここにオーナーの“大事に使う”信念を見た思いがする。
「まだ14戦しか使っていない馬ですからね。ずっと緩さがあって、精神的にもきつかったのか、以前は競馬でハミを取らないことが多かったんですよ。昨年からようやく緩さが解消してきて、競馬でも真面目に走るようになった。オーナーが大事にしてきてくれたおかげですよね」(上村助手)
馬がしっかりしたことで、この中間は火曜や金曜の普段の調教でも、ウッド→坂路という密度の濃い調教メニューをこなしているという。
「今度はGIIだし、しっかり負荷をかけていこうということです。今は体もパンパンに張り詰めてますよ。右手前のほうが好きな馬なので、おそらく左回りのほうがいい。4走前の東京(
むらさき賞)でも、無理かなってところから差し切りましたから」
GI馬5頭が揃い、豪華な戦いとなった先日の
中山記念は結局、非GI馬の
ウインブライトが快勝した。同じようにGI馬5頭が登録してきた
金鯱賞も、非GI馬の
エアウィンザーが強豪をなで斬りにしてしまうかもしれない。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ