「
スプリンターズS・G1」(10月2日、中山)
キーンランドCを
ステップに、
スプリンターズSへ駒を進めてきた
ウインマーベル。勝った
ヴェントヴォーチェの決め手に屈したものの、しぶとく粘って2着を死守した。その戦いを感慨深く見届けたのが、3着
ヴァトレニを管理する元ジョッキーの長谷川師だ。
ウインマーベルの
母コスモマーベラスは、現役時代に長谷川騎手の手綱で新馬戦を快勝し、
萌黄賞もV。「気が強くて活発な馬でした。本音を言えばめっちゃ元気でうるさかった(笑)。担当者もよく蹴られたりしていましたし、大変でした。小気味いいスピードが持ち味でしたね」と懐かしそうに振り返る。
キーンランドCで目の当たりにした息子の姿に「
マーベラスよりも大きいと思いました」と師。父が
アイルハヴアナザーで、ウインにとって思い入れのある配合だが、「この血統は母系の強さも出ていると思います。スピードだけではなく、
パワーもありますからね」と解説してくれた。
種牡馬としての
アイルハヴアナザーはとても成功したとは言えないが、その父フラワーアレイは13年マイルCSを制した
トーセンラーや、14年
天皇賞・秋の覇者
スピルバーグの半兄。日本の芝に適応できる下地はあった。
米国へ売却後、
ウインマーベルが産駒初の芝重賞・葵Sを制し、母の父として
キタウイング(父
ダノンバラード)が新潟2歳Sを制したのは何とも皮肉だが、米国で“幻の3冠馬”と呼ばれたその能力がどこかで爆発する可能性は秘めている。
故・岡田繁幸氏が「ポスト・
サンデーサイレンス」と期待を込めて購入した経緯を思えば、SS系
コスモマーベラスとの配合で産まれた
ウインマーベルはまさに夢の結晶と言えよう。産駒初のGI制覇で、総帥の夢をかなえるか。はたまた、トレーナーとなった長谷川師が
ナムラクレアで新たな時代を切り拓くか-。期待したい。(デイリースポーツ・松浦孝司)
提供:デイリースポーツ