30日、2003年3月から
地方競馬所属騎手による
JRA移籍のパイオニアとして、地方所属時代から「アンカツ」の愛称でその剛腕を知らしめ、移籍後は約10年に渡り圧倒的な手綱捌きでGI・22勝を挙げた安藤勝己騎手(52歳、栗東・フリー)が、明日31日をもって騎手免許を返上、現役を引退することになった。
引退式は、2月3日(日)の京都競馬場・最終レース終了後に行われる予定となっている。
安藤勝己騎手は、1976年に笠松所属として16歳でデビュー。それから36年と約4か月、
JRA所属に変わって約10年。数えきれない敏腕、剛腕、随所に光る頭脳プレーに加え、ゴール前で唸る独特の「風車ムチ」…。
中央競馬に新たな価値観を投じた独特の手綱捌きは、ファンならずとも多くの関係者にも衝撃を与え続けた。
また、同騎手の功績は、自身の技術以上に、のちに続く
小牧太騎手(45歳、栗東・フリー)、
岩田康誠騎手(38歳、栗東・フリー)、
内田博幸騎手(42歳、美浦・フリー)ら、地方所属トップ騎手の
JRA移籍へと繋げる「パイオニア」として、歴史的な役割を果たしたことが挙げられる。
JRA移籍前は、地元笠松競馬所属時代の
オグリキャップの主戦騎手を務めたほか、1995年には笠松の
ライデンリーダーで4歳牝馬特別を制した。その後も、笠松(東海)所属馬とともに
JRAに頻繁に参戦。1999年
京阪杯(GIII)を
ロサードで制し、
JRA所属馬で重賞初優勝。2003年春に
JRA移籍を果たすまでに重賞10勝。
2003年3月には、「過去5年間に
中央競馬で年間20勝以上の成績を2回以上挙げた騎手」という、当時の安藤騎手のために設けられたような新ルール(2010年から一部変更)を無事にクリア。晴れて
JRAへの移籍の夢を叶えると、翌週には
オースミハルカで
チューリップ賞、
タガノマイバッハで
中京記念をいずれも4番人気で制して、連日の重賞ジャック。移籍から1か月も経たない3月30日。
ビリーヴとともに挑んだ
高松宮記念を見事に制し、
JRA所属騎手として悲願のGI制覇を果たしたほか、その後も、同年
菊花賞では
ザッツザプレンティでクラシック競走初制覇。移籍初年度は、いきなり112勝(3月からの計算)を挙げた。
2004年には、
キングカメハメハで
NHKマイルC、
日本ダービーを制して「ダービージョッキー」の称号も手にするなど、2004年はGI4勝、年間127勝。
以降の活躍は枚挙に暇がなく、特に
桜花賞は2006年
キストゥヘヴンを皮切りに、2007年
ダイワスカーレット、2009年
ブエナビスタ、2011年
マルセリーナで実に4勝。中でも、
桜花賞含めて、通算12戦でGI4勝、重賞6勝を挙げて2着4回と連対率100%で競走生活を終えた
ダイワスカーレットには、デビュー以来全てのレースに騎乗。同世代の牝馬にして最大のラ
イバル・
ウオッカとの激しいつば迫り合いを演じて、ファンを魅了した。
年齢が50歳台に差しかかった近年は、減量苦もあって騎乗数を極力減らす方針を取っており、2011年4月の
桜花賞・
マルセリーナを最後にGI勝利からは遠ざかる形。それでも、同年の
日本ダービー、
菊花賞、
神戸新聞杯などで
ウインバリアシオンの手綱を任され、3冠馬
オルフェーヴルを相手にいずれも2着。敗れはしたが、次々に策を打ち出してラ
イバルホースを相手に
ファイティングポーズを取り続ける、「アンカツ魂」をアピールした。
その後も少数精鋭の騎乗
スタイルは崩さず、その中で2012年も重賞4勝を挙げた。ただ、昨年11月24日の
京阪杯(
パドトロワ・15着)を最後に騎乗しておらず、今後の去就がにわかに注目されていた中で、今日午後の正式引退発表となった。
■安藤勝己騎手(52歳、栗東・フリー)
NAR初騎乗:1976年10月20日
NAR初勝利:1976年10月23日
NAR所属時代の通算成績:14056戦3299勝(勝率23.5%、連対率40.5%)
JRA初騎乗:1980年5月11日
JRA初勝利:1980年5月11日
JRA所属時代の通算成績:6593戦1111勝(勝率16.9%、連対率30.3%)
※成績は2013年1月30日現在。
(参考)中央移籍後のNARでの騎乗成績:203戦54勝(勝率26.6%、連対率42.4%)
【主な勝ち鞍】
1995年4歳牝特別(GII)
ライデンリーダー1999年
京阪杯(GIII)
ロサード2001年
大阪杯(GII)
トーホウドリーム2003年
チューリップ賞(GIII)
オースミハルカ2003年
高松宮記念(GI)
ビリーヴ2003年
菊花賞(GI)
ザッツザプレンティ2004年
日本ダービー(GI)
キングカメハメハ2005年
天皇賞・春(GI)
スズカマンボ2007年
桜花賞(GI)
ダイワスカーレット2008年
有馬記念(GI)
ダイワスカーレット2011年
桜花賞(GI)
マルセリーナ2012年
キーンランドC(GIII)
パドトロワ