スマートフォン版へ

武豊騎手インタビュー『2013年は勝負の年、復活を諦めていない!』

  • 2013年03月09日(土) 20時00分
 1996年のドバイワールドC誕生から、今年で17年。2000年以降はドバイミーティングとなって定着した超高額賞金を誇る開催は、世界のレーシングカレンダーの重要なひとつとして組み込まれ、複数の日本調教馬によるドバイ遠征は春の風物詩となった。今年は4冠牝馬ジェンティルドンナの海外初戦に最大の注目が集まるが、競馬界を牽引してきた第一人者、武豊も悲願のドバイワールドC制覇を目指し、腕を撫している。2013年春のドバイ遠征へ懸ける思いを訊いた。(取材・写真:沢田康文)

「あっどうも、お久しぶりです」

 日中の気温は30度以上まで上昇する3月のドバイ。スーパーサタデーを翌日に控えた武は、決戦の地となるメイダン競馬場に颯爽と現れた。

「久しぶりにクラシックでやれる確かな手応えもありますし、こうして日本とドバイを行ったり来たりするのもジョッキーらしくて良いものですよ」

――2013年の武豊はどうですか?と問うと、そう答えて白い歯をこぼした。1月には前人未到のJRA通算3500勝を達成。「大きな区切りとなるひとつの通過点でした」と振り返るが、自身が想像していた以上にファンの方々が喜んでくれたことが、なによりも嬉しかったという。人々を惹きつける爽やかなユタカスマイルは変わるところがないが、今月15日で44歳を迎える。

「最初にドバイに来たのはもう20年以上前。ナドアルシバ競馬場が完成した時、騎手招待競走に呼んでいただきました。そのころのドバイは馬よりもラクダの方が多かった(笑)。ダート戦で後方を進んでいると、口に入る砂がしょっぱくて、後で理由を聞いたら『真水は貴重だから海水を散水している』って」

 キャリアの初期から海外の競馬にも視野を広げ、世界各国での騎乗に力を入れてきた武。ドバイではこれまでにGIひとつを含む重賞3勝をマークし、最高峰のドバイワールドCでも2着する(01年トゥザヴィクトリー)など輝かしい実績を残してきた。

「ドバイが面白いのは、欧州勢も米国勢もみんながアウェーというところ。それに、世界中からトップジョッキーが一堂に会すところもいいですね。腕比べじゃないけれど、そういう開催の競馬場の雰囲気ってジョッキールームからすごくいいんです」

 日本時間9日深夜の“スーパーサタデー”では、マクトゥームチャレンジR3(GI・AW・2000m)、マハーブ・アル・シマール(準重賞・AW・1200m)でトレイルブレイザーファリダットの手綱をそれぞれ握る。ドバイ初戦を迎えるトレイルブレイザーは、今回の結果次第でドバイワールドC参戦が視野に入れられており、とりわけ力が入る一鞍となるだろう。

「トレイルは有馬記念13着以来で状態がどこまで戻っているか心配していたのですが、先週、今週の追い切りの動きは抜群に素晴らしいものでした。何度もお話ししているように、この馬は調教での動きがそのまま実戦に結びつくタイプ。そして体調さえ良ければ、世界のトップホースとも互角に戦える能力を秘めた馬なので、明日のレースは本当に楽しみが持てそうです」

 枠順は内目の3番枠。昨年のドバイワールドC覇者モンテロッソBCターフで後塵を拝したリトルマイクなど強豪が揃ったが、最大のポイントとなるのはやはり初のAWコースへの対応か。トレイルブレイザーは昨秋、ハリウッドパーク競馬場のAWコースで一番時計を連発し、それが今回のドバイ遠征のきっかけともなったのだが、武は慎重な姿勢を覗かせながらこう語った。

「実はファリダットも調教では動いていたのですが、先週のレースでは案外でした。僕自身AWでのレース経験はまだ少ないので、どんなタイプが走るのか、感覚を掴めていないというのも正直なところなんです。それでも、トレイルは本当に攻め馬ではメチャクチャ動きますからね。“これなら”という気持ちの方がずっと強いですし、走ってくれるはずだと信じています」

 ここ数年は勝ち鞍が減少してしまい、歯がゆいシーズンを送っている武だが、2013年を騎手人生にとっての“勝負の年”と位置づけている。「復活をあきらめてもいないし、気合も入っていますし、体のコンディションも良い。各路線に楽しみなパートナーもいますし、いい春が待ってくれている予感がします。ドバイでは何年も騎乗していますが、やっぱりワールドCは数あるGIの中でも別格の存在。そこに向けても、日本のクラシックに向けても、今週弾みをつけたいですね」

 中東のメトロポリスで今夜、武は渾身のムチを振う。(取材・写真:沢田康文)

いま読まれています

みんなのコメント

ニュースコメントを表示するには、『コメント非表示』のチェックを外してください。

ミュート・コメント非表示の使い方
  • 非表示をクリックし「このユーザーの投稿を常に表示しない」を選択することで特定のユーザーのコメントを非表示にすることができます。(ミュート機能)
  • ※ミュート機能により非表示となった投稿は完全に見えなくなります。このため表示件数が少なく表示される場合がございますのでご了承ください。なお、非表示にしたユーザーはマイページからご確認いただけます。
  • 『コメント非表示』にチェックを入れると、すべてのニュース記事においてコメント欄が非表示となります。
  • ※チェックを外すと再びコメント欄を見ることができます。
    ※ブラウザを切り替えた際に設定が引き継がれない場合がございます。

アクセスランキング

注目数ランキング

ニュースを探す

キーワードから探す