地方競馬でもTCK大井競馬から海外との交流が活発化してきた。もともと
大井競馬場はアメリカのサンタ
アニタ競馬場と友好関係を結んで、
大井競馬場で
サンタアニタトロフィー、サンタ
アニタ競馬場で東京シティカップというレース名の重賞をそれぞれ実施。また騎手招待レースを行うなど、早くから海外との交流を進めてきた。
2011年には
東京大賞典が国際GIに格付けされ、それに先立つ同年8月3日の
サンタアニタトロフィーには
地方競馬としては史上初めて北米調教馬1頭を招待し、国際交流レースを実施した。
そして今年行われることになったのが、
大井競馬場と韓国・ソウル競馬場による交流競走。9月1日、ソウル競馬場の第21回SBS ESPN杯が、韓日競走馬交流
グッドウイルカップとして行われ、大井所属馬が3頭遠征。また11月26日には
大井競馬場に韓国調教馬3頭を迎えて交流競走が行われる予定となっている。
今回ソウルに遠征した大井所属馬は以下の3頭。
トーセンアーチャー(牡9)
的場文男騎手 橋本和馬調教師
ビッグガリバー(牡5)
柏木健宏騎手 藤田輝信調教師
ファイナルスコアー(牡8)
真島大輔騎手 荒山勝徳調教師
1番人気に支持されたのは、29戦22勝で地元ソウルの現役最強といわれるタフウィン(セン6)で単勝2.4倍。
ビッグガリバーが3.3倍、
ファイナルスコアーが5.6倍と大井所属馬が続き、中央在籍時の08年10月以来勝ち星がない
トーセンアーチャーは12.8倍で5番人気だった。
しかし勝ったのは、大井から遠征3頭の中でもっとも評価の低かった
トーセンアーチャー。6日後に57歳の誕生日を迎えようという
的場文男騎手が目の覚めるような大外一気で決めて見せた。
地元馬2頭が競り合って流れが速くなり、スタートダッシュがつかなかった
トーセンアーチャーは12頭立ての後方3番手あたりを追走。2番手を追走していた地元の
ワッツヴィレッジが直線単独先頭に立ち、そのまま押し切るかに見えた。しかし4コーナーを回って徐々に外に持ち出した的場騎手の
トーセンアーチャーが、まず届かないだろうという位置からゴール前でとらえ、1馬身差をつけての勝利となった。
そして1馬身半差の3着に入ったのが、現在ソウルで短期免許で騎乗している
倉兼育康騎手(高知)のインディ
アンブルー(牝3)。道中は勝ち馬の前に位置し、同じような脚色で伸びてきていただけに、「くやしぃ〜!」と倉兼騎手は検量室に戻ってきた。地元最強のタフウィンは1馬身差で4着。そのほか大井所属馬では、
ビッグガリバーは中団から徐々に位置取りを上げたものの5着。「外枠だったので普通の位置がとれて、けっこう前が速くなりました。7着くらいまでは展開ひとつで結果は変わったと思います」と
柏木健宏騎手。
ファイナルスコアーは3番手を追走したもののゴール前で失速して6着。「返し馬から物見をして、レースでも集中しきれない感じで、4コーナーからはついていけない感じでした。実力はぜんぜん出せていません」と
真島大輔騎手。
さて、勝った
トーセンアーチャーだが、「汗ひとつかかないで、ゲートのうしろで厩務員には、夏負けしてるからダメだよって言ってたんです」と的場騎手。それでもやるだけのことはやってくるぞと思ってゲートに入ったという。
トーセンアーチャーはすでに5年近く勝ち星がなく、しかも昨年12月以降の8戦は、いずれも勝ち馬から1秒以上の差をつけられての敗戦が続いていた。そうした状況ながらソウルまで遠征して勝ったことについて、「年をとってあんまり痩せなくなってきていたので、まず馬体重が減ったというのがよかった(前走比マイナス18キロ)。どんなときも物怖じしないですから、環境が変わってもこの馬はだいじょうぶだという感じはありました。遠征に適性があると思っていたし、左回りの1400mがいちばんいいと思っていました」と
橋本和馬調教師は分析した。
レース前日、KRA韓国馬事会のある方が、世間話の中で「大井の馬に10馬身でも20馬身でもちぎってもらって、こちらの競馬関係者の意識を変えてもらいたい」というようなことを言っていた。
大井の馬がぶっちぎって勝つことはなかったものの、この10月で騎手生活40年になる大ベテラン
的場文男騎手は、なんと海外での騎乗は今回が初めて。それでいて大胆不敵な騎乗ぶりは、韓国の関係者に衝撃を与えるに十分だったのではないだろうか。
日本から同行した関係者や我々マスコミから出たのも、「的場さん、やっぱりすげぇ」という言葉だった。(取材・写真:斎藤修)