またしても世紀の番狂わせが起こるかもしれない。
金鯱賞を制した
カレンミロティックが、勢いに乗って暮れの大一番に挑む。「ここまでよく来てくれた。ヤンチャだったが、セン馬にしてから落ち着きが出て、体調も安定した。相手は強いけど、どれだけ通用するか」。管理馬を初めて
有馬記念に送り出す平田師は決戦の日を心待ちにする。
「やりよった!」。ゴールの瞬間、当時調教助手を務めていた平田師は膝をたたいて立ち上がった。91年12月22日の
有馬記念。頂点に立ったのは担当馬の
ダイユウサクだった。15頭立て14番人気という低評価を覆し、絶対王者として君臨していた
メジロマックイーンに1馬身1/4差をつける大激走は“これはびっくり、
ダイユウサク!”という実況とともに今も語り継がれている。
当初は
金杯に出走予定だったが、あえて予定を前倒しで臨んだ
グランプリ。陣営の思い切った采配がズバリとはまった一戦だった。「マイルから2000mならともかく、2500mは長いと思っていた。ただ、具合は最高に良かったからね。こちらが思った以上に走ってくれた」。その愛馬は老衰のため8日に死亡したばかり。「毎年、12月になると
ダイユウサクのことが頭をよぎっていた。もう少し長生きしてほしかったな…」と指揮官は静かに目をつぶった。
22年の時を経て、平田師の前に立ちはだかるのは
メジロマックイーンの血を引く
オルフェーヴル。これを運命と言わずして何と言おう。上がり馬が王者に挑む構図、そして出れば勝機十分の
金杯ではなく、あえて暮れの大一番を選択したことも、かつての
ダイユウサクと重なる。
「(22年前と)無理に結びつけるのはどうかとは思うけど、今回も
オルフェーヴルという存在がいて、こちらは挑戦者の立場。楽しみではあるよ」。くしくも決戦の日は22年前と同じ12月22日。劇的な結末を予感させる。