1996年の
スプリンターズS(GI)2着馬で、1994年の
セントウルS(GIII)、1996年の
CBC賞(GII)に優勝した
エイシンワシントン(セン)が、7月8日朝、鹿児島県姶良郡湧水町のホース
トラストで、右後肢脛骨骨折のために息を引き取った。23歳だった。
ホース
トラストにやって来たのは、2009年の10月のことだった。ホース
トラストに来る直前まで種牡馬として繋養されていたために、去勢されても牝馬が大好き。鹿児島にやってきたばかりの頃は、興奮して牝馬を追いかけていたという。
「年を重ねてきて落ち着きは出てきましたが、イレ込みやすく、とても臆病で怖がりでした。それがレースでの逃げ脚につながっていたのかなとも思いますね」と、ホース
トラストの大野恭明さん。スピード溢れる華麗な逃げ脚は、同馬の性格にも起因していたようだ。
そして人間よりも馬が好きというタイプだったようで、放牧中は、いつも仲の良い馬と一緒に過ごしていたという。
ホース
トラストにやって来て5年弱、
ワシントンはのんびりと余生を過ごしてきたが、7月7日に右後肢に体重をかけられない状態であるのが確認され、右後肢脛骨骨折で予後不良と診断されて、翌朝、静かに天に召されたのだった。
「ホース
トラストの預託料は1頭3万円なのですが、功労馬の助成金が3万円から2万円に減額になった時に、その不足分を補うためにスポンサーホースとしてスポンサーを募集しました。
ワシントンはすぐに満口になりました。地元でスポンサーになってくれている方が
ワシントンが亡くなった時に来てくださったのですが、すごく泣いていらっしゃったのを目にして、それだけ愛されていた馬だったのだなと思いましたね」(大野さん)
フラワーパークに僅か1センチのハナ差で敗れた
スプリンターズSは、今も語り草となっており、ファンの多い馬でもあったのだ。
現役時代はGIという大きな勲章こそなかったが、その余生は馬にも人にも愛されて、ホース
トラストでの日々は穏やかなものだったと思う。
「
ワシントンが仲良くしていた馬の中には、先に旅立った仲間もいます。今頃彼らと天国で会っているのかなと思います」大野さんのその言葉を聞いて、
ワシントンと仲間たちが、楽しそうに天を駆け巡っている姿が見える気がした。
(取材:佐々木祥恵)