1997年の
安田記念(GI)に優勝した
タイキブリザード(セン)が、8月18日に鹿児島県湧水町のNPO法人ホース
トラストで息を引き取った。23歳だった。
タイキブリザードは、1991年3月12日にアメリカで生まれ、1994年2月14日に美浦の
藤沢和雄厩舎からデビュー。好走はするものの、なかなかGI勝利に手が届かず、もどかしいレースも多かったが、1997年の
安田記念で念願のGI制覇を果たした。またブ
リーダーズCクラシックに2年連続挑戦し(1996年カナダ13着、97年アメリカ6着)、注目を集めた。
1997年の
有馬記念(GI・9着)を最後にターフに別れを告げて種牡馬入り。北海道のブ
リーダーズ・スタリオン・
ステーションやレックススタッドで種牡馬生活を送っていたが、2005年に種牡馬を引退。観光施設・日高ケンタッキー
ファームで余生を過ごしていたが、同
ファームの閉鎖にともない、2009年1月からホース
トラストで功労馬として余生を送っていた。
「ホース
トラストに来た当初は、噛む、蹴るとうるさくて、私も2回噛みつかれました。年を重ねるにつれて穏やかになり、猫が背中に飛び乗っても平気なほどでした。とても賢い馬で、イ
ベントでウインズ八代にも2回行きましたが、自分の役割をちゃんと理解していました」と、ホース
トラストの小西英司
マネージャーは
タイキブリザードの在りし日の様子を教えてくれた。
「年を取ると背中が垂れてくるものですが、
ブリザードはそのようなことはなかったですよ。骨格も筋肉もしっかりしていて、さすがGIレースを勝った馬だなと思いました」(小西
マネージャー)という言葉を聞いて、頭を低く下げて迫力満点のフォームでターフを駈けていく雄大な馬体が脳裡に甦った。
訪ねてくるファンの数も、ホース
トラストの中で1番多かったと聞く。ファンにもスタッフにも愛され、
ブリザードは穏やかに日々を過ごしてきた。
8月18日も無事に1日を終えるはずだった。だが16時少し前に、放牧地にいた
タイキブリザードの異変にスタッフが気づいた。
「私が
ブリザードの元に駆け付けた時には、既に倒れ込んでいました。異変に気づいてからわずか20分足らず…あっという間に逝ってしまいました。解剖の結果、腸はきれいだったのですが、胃が破裂していてそれが死因とのことでした」
その死はあまりに突然だったが、広い放牧地で仲間たちと伸び伸びと暮らしたホース
トラストでの5年7か月は、
ブリザードにとって至福の年月だったに違いない。小西
マネージャーが噛みしめるように大切に話をしてくれた生前のエピソードの1つ1つからも、それが伝わってきた。
(取材:佐々木祥恵、写真提供:ホース
トラスト)