メルシーエイタイム(牡)が、3月1日に急逝した。13歳だった。
同馬は、一昨年の
中山大障害で左第2趾関節脱臼を発症して競走中止し、その後、美浦トレーニングセンターで手術が行われた。手術は無事成功し、競走馬登録抹消後は、滋賀県東近江市の忍者ホースクラブで余生を過ごしていた。
「朝、飼い葉をつける時に、
エイタイムの脚の異変に気付きました」と忍者ホースクラブの宮本佳英さん。
「ここ最近は、左後ろ脚も地面に着けられるようになっていましたし、立ち上がるわ、噛みつくわで元気一杯でした。ただ広い場所に放牧して何かあってもいけませんし、馬房の裏庭みたいな狭いところで我慢してもらっていました。その一方で、脱臼した箇所に負担がかからないかなと心配でもありました」(宮本さん)
そして今朝、左後ろ脚が再び悪化。あっという間に天国へと旅立ってしまった。
異変が起きたらすぐに駆けつけられるようにと、
エイタイムの馬房のすぐ隣の部屋で寝泊まりを続けてきたという宮本さんは「彼がいたから頑張らなければと思いましたし、勇気づけられました」と話した。
削蹄時にヤンチャ振りを発揮して、装蹄師やスタッフを手こずらせていた様子が、亡くなる前日のブログにもアップされている。
「今朝も脚の状態が悪いのに、痛がりもせず、飼い葉もペロッとたいらげ、下に落ちた飼い葉まで食べ、牝馬を見ればいつも通り鳴いていました。それだけに今は唖然として、実感が湧かないというのが正直なところです」(宮本さん)
エイタイムは、最後まで人に弱みを見せず、強気に生き抜いたようだ。
「この馬のおかげで人の輪が広がりました。これは
エイタイムが来るまでは考えもしなかったことです。そして彼は、相棒のような存在でした。今は感謝しかありません」
エイタイムが忍者ホースクラブにやって来て368日。苦楽を共にしてきた宮本さんの言葉からは、お互いにとってこの1年がいかに濃密なものだったかが伝わってきた。
辛いはずの怪我と前向きに闘ってきた1頭の勇気ある馬の冥福を心から祈りたい。(取材:佐々木祥恵)
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