9番人気の伏兵スクリーンヒーロー(デムーロ騎手)が抜け出してそのまま押し切る大殊勲の勝ち星。単勝41倍はジャパンC史上最高配当だった。
レースの主導権を握りそうな馬の見当たらない組み合わせ。最初からスローが予測されたが、天皇賞・秋で先行したトーセンキャプテンは出遅れ。外枠のアサクサキングスは最初から先行する構えを見せず、ネヴァブションが押し出される形になった。ふつう横山典弘騎手はそれなりの馬だとあまり意味のないスローには落とさないが、ネヴァブション(単勝112倍)はスピードがないからどうしようもない。さすがにハロン12秒台のラップこそ続けたものの、ちょうど半分の前半1200m通過は「1分14秒6」。
中間の1200m通過をペース判断の基準とすると、ジャパンC28回の歴史の中、まったく行く馬がなくステイゴールドが先導し、テイエムオペラオーが勝った00年の「1分15秒4」に続く史上2番目の超スローペースだった。
道中行きたがる素振りを見せる馬が多い中にあって、スクリーンヒーローはごくスムーズに好位追走。デムーロ騎手の馬の背中に貼りつくような低い騎乗姿勢がそう思わせたのかもしれないが、オープン馬になったばかりのスクリーンヒーローにとっては、ここまでのいつものレースのペースと同じだった。これが最大の勝因だろう。
もちろん急速に力をつけているのは間違いない。最後の追い比べになって一歩も引かなかったのは展開うんぬん、ペースうんぬんではない。前回のアルゼンチン共和国杯より格段の強敵相手のここで、定量57kgの国際GIを制したのだから素晴らしい。有馬記念・2連覇のグラスワンダー産駒。ごく自然に「年末を目指すことになるでしょう…鹿戸調教師」となった。
ディープスカイは折り合って中団の外。この流れの中、外を回ってメンバー中最速の上がり33.8秒を記録したが、流れに乗ったスクリーンヒーローが予想以上に粘り強かった。しかし、負けたとはいえ破壊力は文句なし。海外遠征を展望する来季への期待はまた一段と大きく広がった。さらにパワーアップすることだろう。
ウオッカは好スタートから好位のインをキープすることになったが、天皇賞・秋とは一転のスローペースに再三リズムを崩してしまった。懸命になだめたものの道中のスタミナロスは大きかったに違いない。浮ついたフットワークになり、直線に向いてスムーズにエンジン全開のストライドに切り替わらなかった。自在の戦法を取れる名牝にはなったが、久しぶりのあまりのスローペースに対応できなかった。こなせる距離の幅は広いが、スピードレースに出走直後の長距離2400mは不利だったろう。
マツリダゴッホは、昨年も調子を上げたこの季節になって絶好の気配。当日輸送も気にならなくなり、結果、東京コースでも能力減はまったくなかった。切れるというタイプではないため今回のような流れが一番歓迎ではなかったのがこの馬だった。連覇のかかる有馬記念に向け手ごたえは十分と思える。
オウケンブルースリは、逆にこういうスローの流れは歓迎と思えたが、爆発力不足というより強敵相手のレース経験のない弱み。馬群の中でやや気後れしたようなところもあった。まだ脚はあったから、もちろん次はさらに…の期待をしていい。
メイショウサムソンはスムーズに射程内にいたが追い比べになってもう一歩。一応は完敗だが、自分からスパートするような形に持ち込めるペースではなかった。ずっとインから出せない位置でもあり今回は仕方がない。有馬記念の季節は合わないタイプだが、体調下降がなければ最後にメイショウサムソンらしいレースをして不思議ない。
期待した伏兵トーホウアランは、最終追い切りを手控えたのに残念ながらちょっと馬体重が減ってしまった。そのうえレースでも終始かかり気味。いいところなく終わってしまったが、まだ14戦。巻き返しのチャンスなしとは言い切れない。
凡走に終わった外国招待馬の中では、9着パープルムーン(有馬記念に選出されている)にはまだ脚があり、エンジンがかかったのはゴール寸前だけだった。
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