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道営ホッカイドウ競馬開幕

  • 2002年04月10日(水) 00時00分
 4月10日より道営競馬が開幕する。11月21日まで83日間の開催。門別を皮切りに札幌、旭川と転戦し、また門別に戻る日程だ。

 とにかく累積赤字158億円にも達する道営は、各地の地方競馬が不振を極める中でもとりわけ収支バランスの悪い主催者として注目を集めてきた。昨年だけでも28億5千万ほどの単年度赤字を生み、常に存廃問題が取り沙汰されている。

 たぶん、ここまで金額が膨らむと他の地方競馬ならば当然のように廃止となっていただろうが、北海道が軽種馬の主要な生産地であることと、道営競馬で馬を走らせている馬主の多くもまた生産者であることから、財政論だけでは片付けられない特殊事情を抱えた地方として認識されてきたのである。

 だが、昨今の厳しい地方財政ではこれだけの赤字を抱えてしまうと、なかなか道民に理解を求めるのも難しくなっているようだ。昨年は184億円の売上目標に対して実際の売上げはそれより60億円も下回り、「はたして道営競馬は必要なのか」という論議に発展している。

 それで考え出されたのが「産地競馬」というスローガン。もともと、2歳馬のレースがかなりの割合を占める道営は、以前より各地の地方競馬などに2歳馬を転売することでその存在意義を認められてきた。トーシンブリザード、フレアリングマズル、アローキャリー、ヤマノブリザード、プリンシパルリバー、等々、全国区の知名度を持つ道営出身馬は少なくない。いわば、スターホースの供給地として存在してきたことを逆手に取り、それを積極的に売りにして行こうという試みだ。実際、もはや財政競馬としては事実上役目を終えたとも言えるのだから。

 年間約700頭にも及ぶ2歳馬が道営からデビューする。昨年を例に取ると、そのうち越年して道営に残っている馬は半分ほど。残りの半分は他の地方競馬や、少数とはいえ中央へもトレードされて行っている。こうした「流通」を前提にして、今年は6月から10月まで毎月セリングレース(レース後に出走馬をそのままセリにかける)を繰り返す計画だという。

 昨年11月、その実験的な試みを一度だけ行い、現役馬40頭がセリにかけられた。結果は11頭が売却され、価格も高い馬が500万円を少し超えた程度に終わり、主催者の期待ほどの数字を残せなかったのだが、今年は早期から実施することでより高素質馬を集めたい意向のようである。

 理想的には、道営所属馬で販売希望の2歳馬は全頭セリングレースに出走することが望ましいだろう。

 従来より、肝心の流通の部分がほとんど庭先で行われていて甚だ不透明だったのも事実で「噂ではOOOはOOO万円だったらしい…」というような話ばかりが聞こえてくるだけで、結局当事者しか値段を知らないことが多かった。また仲介に何人もの「馬喰」の手が介在することで生産者馬主が手放した販売価格と最終的にその馬を所有した人の購入価格が著しい差額のあるケースも珍しくなかったと聞く。しかし、こういう不透明な流通形態を改善し、価格や取引方法に透明性を持たせることで結果的に道営出身馬をより付加価値の高いものにして行けるのではないか。まずは認定競走を勝ち、セリングレースに出走してできるだけ高い価格で転売したいとおそらく多くの生産者馬主は考えているはずだ。

 私ごとながら、久々に私の生産馬も今年、道営に入厩した。名前はニットウピース。父ブラッシングジョン。牡の鹿毛。先ごろ能力検定もパスしたらしい。果たしていつ頃デビューできるだろうか。まずは認定競走を勝つのが第一関門だ。

 (送稿した後、アローキャリーが桜花賞を制覇した。縁の下の力持ちとして、この馬を仕上げた道営関係者にも敬意を表したい)

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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