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週刊サラブレッドレーシングポスト

  • 2002年05月01日(水) 00時00分
 昨年のNHKマイルCに出走した外国産馬はわずか4頭。それでも、結果的にはマル外が1・2着したが、このレースの創設当時は出走馬の大半が外車で、掲示板独占も当たり前という時代からすると、外国産馬の勢力が急速に後退したことを感じさせてくれたレースだった。

 あれから1年。火曜日現在、出走が確定しているだけで外国産馬は8頭。800万下の抽選待ちにも4頭の外車がいるから、昨年に比べると今年の外国産馬は随分と勢力を盛り返していることになる。盛り返した1番の要因は、日本人購買者が仕入れ先を工夫したことにあると思う。

 かつて外国産馬と言えば、アメリカのイヤリングセールで言うならキーンランドのジュライかセプテンバー、2歳トレーニングセールで言うならバレッツかファシグティプトン・コールダーというのが通り相場だった。ところが、今年のNHKマイルC出走予定馬の出自を辿ると、実にバラエティーに富んでいるのである。

 ベンジャミンSを勝ってここへ臨むサードニックスは、99年のキーンランドノヴェンバーにおける購買馬である。ということは、当歳時に購買されて日本にやってきたのだ。しかも価格はわずか1万6千ドル。今回の出走馬の中では最も購買価格が高いスターエルドラード(110万ドル)の68分の1のという廉価である。こういう事実を知ってしまうと、日本人としてはスターエルドラードよりもサードニックスを応援したくなる。

 ニュージーランドTをひと叩きされて出てくる、昨年のG2・京王杯2歳S勝馬シベリアンベドウは、00年のファシグティプトン・ケンタッキーセールの出身馬だ。ファシグティプトン・ケンタッキーセールというのは、キーンランド・ジュライと同じ7月に、場所も同じレキシントンで開催される、俗に言われるところ『キーンランド・ジュライの裏開催』である。2000年で言うと、キーンランドの平均価格62万ドルに対して、こちらは7万7千ドルという安いマーケットなのだが、その中でもシベリアンメドウは購買価格6万ドルという廉価だった。これが、ジュライのミリオンホースと互角以上の競馬をするのだから、競馬は面白いのだ。

 抽選待ちの1頭ウォーターゴーランは、2001年のバレッツ・メイセールの出身馬。バレッツと言えばマーチセールが有名だが、マーチをセレクトセッションとすると、一般市場にあたるのがメイ・セールである。ところが、どこのマーケットでもセレクトセッションからばかり活躍馬が出るわけではなく、このメイセールからも昨年アメリカでディキシードットコム、フリーダムクレストといった重賞勝馬が誕生。そして日本でも,この馬が出たというわけだ。

 ブランド化しているメジャーな市場では出来なかった買い物の補填を、こうしたマイナーなマーケットに足を運んで行った結果が、今年の3歳世代の外国産馬勢力回復につながったのである。日本人による外国産馬の購買も、賢くて理にかなったものになってきたと言えるだろう。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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