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2年目産駒を狙え!

  • 2009年12月18日(金) 11時00分
 今年の阪神JFを制したのは、キングカメハメハ産駒のアパパネだった。POG取材ノートを見返してみると、ソルティビッドの07に関する表記が見当たらない。

 取材不足だと攻められたのなら、お笑いコンビの響がコントで演じる「みつこ」のように、「どうもすみませんでした!」と逆ギレ風に謝るだけなのだが、ひょっとしてスタッフの方から話を聞いていたとしても、「父がキングカメハメハだからなあ…」とメモを取るのをためらってしまっていたのかもしれない。

 しかし、キングカメハメハ産駒はこのアパパネだけでなく、牡馬でも東京スポーツ杯2歳Sを優勝したローズキングダムが、今週行われる朝日杯FSの本命ともなっている。

 よく考えてみれば、昨年は新種牡馬第一号となる重賞勝ち馬(函館2歳Sを制したフィフスペトル)を送り出し、フレッシュサイアーでもネオユニヴァースに続く2位となった実績がある。しかし、初年度世代が3歳を迎えた時の今ひとつ感に、自分が勝手に評価を落としてしまっていたのかもしれない。キングカメハメハに対しても、「どうもすみませんでした」と、こちらは丁寧に頭を下げたい。

 では、どうしてキングカメハメハの2年目世代が結果を残しているかについての推測なのだが、過去にPOGの約束事としてこんな実例が残されていた。それは、「サンデーサイレンス系種牡馬は、2年目産駒を狙え!」である。フジキセキ、ダンスインザダーク、そしてスペシャルウィークと、産駒がクラシック戦線で目立った活躍を見せ始めたのは、2年目産駒、もしくはそれ以降の世代となっている。この傾向は今年のリーディングサイアーをひた走る、マンハッタンカフェにも当てはまる。

 一般的には繁殖牝馬の質も揃い、何よりも多くの繁殖牝馬を集めることで、デビュー前からフレッシュサイアーは確実とされる、サンデーサイレンス産駒の種牡馬たち。しかし、期待されたような産駒実績が残せないと、2年目から一気に評価を落とすか、もしくは次の年に産駒デビューを控える種牡馬たちへと話題や繁殖牝馬も奪われることとなる。

 とはいっても、2年目世代もそれほど繁殖の質は落ちてはおらず、何よりも種付け頭数で極端な減少は見られない。むしろ初年度産駒の仔出しを見てから配合されることもあって、より配合面で吟味されたのが2年目産駒以降と言えるのだ。

 時代は変わって、サンデーサイレンス産駒の大物がスタッドインする流れから、今は非サンデーサイレンス系種牡馬が、生産地に迎え入れられるようになってきた。

 その中でも大物中の大物がキングカメハメハだった。マイルとクラシックの両GIを勝った能力、そして世界的な名種牡馬であるキングマンボを父に持つ血統背景と、種牡馬としての期待はどんどんと膨らんでいたはずだ。

 しかし、想像していた期待の詰まった風船よりも、初年度産駒が残した現実という風船の大きさの違いに、誰もが勝手なマイナスイメージを作ってしまっていたのだろう。

 それでも、過去のサンデーサイレンス産駒の種牡馬たちにおける、2年目産駒以降の巻き返しを忘れていなければ、キングカメハメハ産駒への注目を怠らないことも可能だったのである。

 自分への反省をふまえた上で、来年ブレイクをするであろう、来年2年目産駒を送り出す種牡馬の名前を挙げたい。その種牡馬の名前とはゼンノロブロイ。この阪神JFでもアニメイトバイオが2着し、来年の牝馬クラシックも沸かせてくれそうだが、来年デビューを迎える2年目産駒は更に粒が揃っているとの評判がある。


 ゼンノロブロイ自身は古馬となってから才能を開花させたイメージがあるが、初年度産駒を見る限り、2歳戦からでも十分に競馬ができている。しかも距離もマイルから更に融通も効きそうで、この辺もクラシックを考えた時には心強い。

 ディープインパクト、ハーツクライと話題の産駒たちがデビューを迎える来年のPOG戦線。しかし、今年の反省を忘れることなく、「で、ゼンノロブロイ産駒での注目馬は?」との質問を忘れないようにしたい。

筆者:村本浩平
 1972年北海道生まれ。大学在籍時代に「Number ノンフィクション新人賞」を受賞。現在はフリーライターとして活躍。特に馬産地ネタでは欠かせない存在。


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