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トレーニングセール始まる

  • 2002年05月15日(水) 11時30分
 いよいよ今年最初の2歳馬によるトレーニングセールが始まる。〆切の関係で、その詳細な結果を今回お伝えできないのがやや残念だが、昨今の競馬を取り巻く厳しい環境を思うと、期待よりも不安の方が先行してしまう。

 今年最初のトレーニングセールは5月13日と14日の二日間にわたって開催される「ひだかトレーニングセール(ひだか東農協主催)」だ。

 来週には日高軽種馬農協主催の「トレーニングセール・サラブレッド2歳」と「プレミア2歳トレーニングセール」も開催されるのだが、民間会社のプレミアの方はともかくも、「ひだかトレーニングセール」と「トレーニングセール・サラブレッド2歳」の名称は、どうも混同してしまいそうな紛らわしい名前だ。主催も「ひだか東農協」と「日高軽種馬農協」というように、実態はまったく別個の団体ながら、名前は酷似している。余談ながら、せめてセールの名称だけでも一工夫できないものか、と思う。

 さて、今年の「ひだかトレーニングセール」は、初日に公開調教、二日目に比較展示・せりという日程になった。昨年は5月と6月に二分割して実施したせりを、今年は一度にやってしまおうというものだ。売却率や平均価格に差が出てしまった昨年の反省から、こうなったと考えられる。

 すでに上場予定馬の名簿は、競馬週刊誌などにも掲載されているので目を通した方もおられるだろう。150番までのうち、早々と欠場を決めている馬も少なくとも9頭は確認できたので、当日は全体で140頭を切る上場頭数になるものと思われる。

 欠場の理由は、それぞれ違うが、調教を進める段階で故障発生という例が珍しくない。1ハロンのタイムが10秒台から11秒台にもなると、今の時期の2歳馬にとっては大きな負担を強いる結果になる。血統的に奥手だったり、やや体質が弱かったりすると、なおのことだ。それを裏付けるように、セールの名簿に添付された「ひだかトレーニングセール市場取引馬の実績」という資料によると、意外に2歳戦でデビューする頭数が少ないことが分かる。

 例えば、昨年の場合、5月と6月の双方のセールで売却された2歳馬は計93頭。そのうち、2歳戦に出走できた馬は、中央で42頭、地方で19頭。「即戦力」として購買されながら、3頭に1頭は、その年のうちにデビューを果たせなかったことになる。

 また、勝利数はというと、中央が42頭で7勝、地方が19頭で10勝という結果だ。もちろん、年が変って3歳になってからデビューする馬もいれば、勝ち上がる馬もいるだろう。しかし、思いのほか、公開調教での動きの良さがそのままレースに直結しているわけではないことが伺える。

 この、2歳時でのデビュー率と勝利数は、一昨年(平成12年)もそれほど大きくは変らない。売却70頭で、中央が出走頭数37頭、勝利数10、地方が出走頭数6頭、勝利数4。

 とはいえ、公開調教の時には、どうしても1ハロンのタイムが速くなければ購買者の注目を集めない。おそらくは、割に平気で調教に耐えてきた馬と、無理に無理を重ねてタイムを縮めてきた馬の差はどこかに現れているはず。それをセールで見抜くのもまた「プロ」の仕事なのだろうが、タイム偏重のきらいがなきにしもあらず、という気がする。

 ともあれ、次回はせりの結果をお伝えできると思う。本年最初のトレーニングセール。果たして「吉」と出るか、「凶」と出るか…。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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