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セリ価格と成績の相関関係

  • 2010年02月19日(金) 11時00分
 とある筋から頼まれた原稿というかリサーチの関係で、あるグループに属する馬たち20年分のセリ価格と成績の相関関係を調べていた。

 詳しくは書けないが、そのグループに所属する馬は高馬がイマイチで安馬が好成績という逆転現象が起きており、やはりモノは調べてみないと分からないという結論になったのである。

 この、「セール価格と成績の相関関係」というのは興味深いテーマである。ちなみにアメリカの2歳トレーニングセールだと、50万ドルくらいまでは「さすが高馬のほうが走る」となるのだが、そこを超えると追加費用のほうが勝ってしまうという傾向になっている。

 日本のセレクトセールでは、「1億円超は値段先行、3000〜5000万円ゾーンはバイヤーの競争が激しすぎて費用対効果は悪い。その間と、『セレクトセールにしては安い馬』が良い買い物」という傾向が長らく続いていた。

 私もその切り口から原稿を書いたことはあるのだが、そろそろ考えなくてはならないと思っているのが、特定の価格帯の馬の、世代による成績の流れである。

 昔と今とでは、セールの売れ行きも違う。例えば3000万円の馬とひとくちに言っても、その相対的な立ち位置は変わっている。そこを意識しないといけないと思うのである。

 今回は、購買時期や性別を無視した乱暴なやり方ではあるものの、いくつかの価格帯について、4〜13歳の10世代の成績を調べてみた(平地競走のみが対象)。

 活躍の度合いを分かりやすく計れる1走あたり賞金で見てみると……。

 まず1億円以上馬だが、時期による傾向はなく、世代によって当たり外れがばらばら。これはサンプルが少ないため仕方ない。

 セレクトセールのスイートスポットでもあった5000万円以上1億円未満ゾーンは、古い世代から現8〜9歳世代に向けて成績が向上した後、近い世代ではまた低下している。

 かわって浮上しつつあるのが3000〜5000万円ゾーン。1走あたり賞金で見てもそれなりに最近は安定しているし、単純に勝利度数が増えている。それも、該当頭数が増えたがゆえの勝利度数ではなく、勝率も良い。

 全対象馬で10世代分を見れば市場原理の通り「高い馬ほど勝率・連対率・1走あたり賞金も良い」という傾向にあるのだが、3000万円より上については、その成績差が緩やかに縮小しているイメージだ。

 一部バイヤーがセレクトセールでイケイケだった頃には3000万円など「普通」扱いだったが、いまの時代には3000万円なら「立派な高馬」と評していいだろう。2歳馬プロフィールを見るときには、頭を切り替えて臨む必要がある。

※次回の更新は、3/5(金)を予定しています。

筆者:須田鷹雄
 1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。netkeiba.comでは「回収率向上大作戦」も担当している。


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