限られた情報によって指名馬を選ぶPOGの場合、セール時の価格というのは重要な手掛かりである。
私のようなメディア側の人間としても、高馬はそれなりに大きく扱わねばならない(そうでないと色々と勘繰られる)ので、どうしても高馬の情報は露出しやすくなる。
その一方で、価格というのはアテになりそうでもあり、ならなさそうなものでもある。そこで本連載でも、セールについては機会があるごとに色々と触れてきた。
実際のところ、馬のセール価格と成績にはどのくらいの相関性があるのだろうか?よくよく考えてみたら、ストレートに相関係数を求めてみればいい話でもある。
まずは相関係数というものについて説明しておかねばなるまい(理解している方はこの件は読み飛ばしていただいていい)。相関係数というのは、簡単に言うとAとB、2つのものにどれだけの関連性があるかを求めるものである。
値は-1から1の間で求められ、1になる場合はAとBが完全に対応する関係(正比例など)にあるということになり、-1の場合はその逆になる。0の場合は、全く相関関係が無いということである。
相関係数はエクセルの関数を使うと簡単に求められるので、今回は既に抹消された市場取引馬を対象に算出してみた。
詳しい過程は省略するとして、出てきた答えは約0.06。さすがに逆相関ではないものの、値段と成績の間にはほとんど関係が無いと言っても過言ではないと言える。
ということは、この時点で高馬にこだわる必要はないということになる。少なくとも、「評判が良い安馬」を、「でも値段がそれなりってことは、そんなに強くないんでしょ」とオミットする理由は無い。
今回はもうひとつ興味深い結果が得られた。
実名は明かせないが、相馬眼がすごいと誰もが認める某氏の購買馬について同様に相関係数を調べてみたところ、約0.02という数字が出てきたのだ。
この結果は2通りに解釈できる。それだけのプロでも、高馬を買うことはリスクばかり大きいという解釈がひとつ。もうひとつは、「安くて走る馬」を他人より多くキャッチしているのではないかという解釈だ。
いずれにしても、市場取引馬全体と、特定のサンプルとで違いが出たことは興味深い。0.02も0.06も似たようなもので相関関係は無いんだよという風にも言えるが、差異が出てくるということは「相馬眼」という概念が存在する裏付けであるという風にも言える。
今後、セール別に相関関係を見ていくと面白い結果も出てきそうなので、じっくりと調べていきたいと思う。
※次回の更新は、4/16(金)を予定しています。
筆者:須田鷹雄
1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。netkeiba.comでは「
回収率向上大作戦」も担当している。
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