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大器登場

  • 2002年06月11日(火) 00時00分
 12日「船橋記念」。トーシンブリザード以下帝王賞をめざす一流どころはお休みだが、かわりに大きな目玉が登場する。ベルモントアクター。少し前、当欄で簡単に紹介した。父モガンボ、母エスケイチャーミイ(マルゼンスキー)の牡6歳馬。デビューから15戦15勝、3度に渡る長期休養で、ここに辿りつくまで3年半の月日を要した。すでに名門といっていいだろう、出川克巳厩舎の秘蔵っ子で、大事に大事に暖めてきた未完の大器。それがいよいよ重賞に挑戦する。

 船橋記念(サラ3歳以上・ハンデ・南関東G3・1800m)

 ◎ベルモントアクター (石崎隆)
 ○リガメエントキセキ (佐藤祐)
 ▲セクシーディナー  (内田博)
 △タイコウレジェンド (的場文)
 △ハセノガルチ    (佐藤隆)
 △ミリオンヒット   (早田)

 ベルモントアクターは、3歳1月のデビュー戦を1000m59秒5で圧勝、当時からクラシック級の呼び声が高かった。それでも出川克巳師は慎重の上に慎重という姿勢を崩さず、しばらく様子を見たあと結局ササ針、放牧の充電を選択した。再起はクラシックの余韻もさめた11月。相手の軽い3歳条件戦からスタートし、あっさり4連勝を飾っている。「体質がどうも弱いんですね。能力はありますよ。何とか万全な状態で素質を100%出しきらせたい」。4歳春から再び放牧休養。半年後カムバックすると、今度はC2から8連勝、5歳1月にA2以下(準オープン)を勝ち、いよいよ重賞に手が届くかにみえた。

 そこからの休養が長くなった。今度は骨折もからみ、完治後のリカバリを含め何と1年3か月の時間を要した。出川克巳師をはじめスタッフの根気と辛抱を思うと正直気が遠くなる。そして今季4月18日、B1以下「卯月特別」。さすがに「今回は6〜7分、半信半疑」と弱気のコメントも出たが、いざ競馬になるとユーエムアスキーら4歳の成長株を問題にしなかった。続く前走、今度はジーナフォンテン(マリーンC・4着)、キングリファール(重賞2勝)以下に楽勝。1600m1分39秒3、余裕残しでオープン級の時計が出た。

 しばしば思うことがある。地方競馬のよさ、馬にとって大きなメリットの一つは「ユックリズム」だということ。素質馬を厩舎事情、番組事情など人間の都合でつぶさない。あせらずあきらめず、時間をかけて仕上げていく。よくいわれる「馬と相談しながら…」、その言葉を実践できる環境、システムが、地方競馬にはまだ残っているということだろう。むろんそれには人間の努力と情熱が最も大きく介在する。ベルモントアクターはその名の通り「名優」として素晴らしい才能を持って生まれた。それがようやく開花しつつある。ここは試金石という以上に大きな夢を描きながら注目したい。

 とはいえ現実にアクターはまだA2格。壁があるとすればリガメエントキセキに重賞3勝目のチャンスが回る。東京湾C、報知グランプリを制した地元1800m。前走統一Gかしわ記念5着も、自身確実なパワーアップといえるだろう。ハンデ戦だけに牝馬セクシーディナーが単穴。前走マリーンC大敗はひと息入れて道中折り合いがつかなかった。3歳時ロジータ記念快勝から左回りは適性が高い。久々を叩いた実力馬タイコウレジェンド、中距離ならムラなく走るハセノガルチも争覇圏。東京湾C・2着など、このコース走るミリオンヒットが直線勝負に賭けて穴。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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