今回は本当に「ひとりごと」的な内容である。
現在、赤本の制作まっ盛り。この原稿も、連日牧場に行ってきたという状況下で書いている。そんな今、テーマにしたいのが「厩舎クレジット」だ。
まだPOG媒体が牧歌的だった頃、単に取材不足で「厩舎未定」という扱いになっていた馬はたくさんいた。
そのあとくらいになると、クラブ法人が厩舎明記を嫌がるという時期があったが、これはファンドとして予定厩舎を明記せよと国が指導したことで、POGとは関係のないところから解決した。
さらにそのあと、取材者が増えるにつれて漏れが無くなり、厩舎クレジットのカバーが漏れる率は低くなった。それにより、厩舎未定となっていると、「どこか悪いところがあるんじゃないか」「遅れるんじゃないか」といった憶測を呼ぶようにもなった。
読者のみなさんの中にも、この感覚でいる人は多いのではないかと思う。ただ、昨年今年あたりは別な事情が加わってきていることを知っていただきたい。
その事情とは、ぎりぎりまで厩舎を決めない馬主さんが増えたということである。
単に人数ベースで増えたということだけでなく、高額馬をたくさん持っていて注目度の高いオーナーにそういうケースが出てきている。
その場合、系列の厩舎は決まっているのでその中のどこかしらに行くことは確実だが、具体的にどことは書きようがないわけである。こうして原稿を書いている時期にも、とある大型チームの割り振りが決まりそうとかそうでもないとかいう話が出ているが、確定はしていない。
もちろん、それが高額馬・血統馬に「厩舎未定」の発生する理由のすべてではない。
調教師さんがPOG取材嫌いというケースもある。馬主さんが同様のケースもある(反対に、「俺の馬載ってなかった」というお叱りを受けることもある……)。もちろん、脚元に難があるなどで、牧場持ち&使い出し未定の馬もいる。
赤本の場合、原則として馬主もしくは調教師、あるいはそのいずれかと密接に意思疎通している育成場のOKが無い限り、厩舎クレジットはしない。だから、「厩舎を知ってはいるけど、書かない(or書けない)」というケースもある。
媒体の中には(厩舎クレジットに限らず)情報を手に入れたら強行突破でもなんでもやってしまえというところもあるようだが、それはいずれトラブルになるし、しかもPOGでトラブルがあったというと矛先がいちいちこちらに向かってくるので正直迷惑である。
もちろん、読者にとっては情報が多いほうが良いので、例えばA厩舎かB厩舎のどっちかになるんだけど、どっちみち栗東というような時には、「(栗)」とだけクレジットすることもある。
本物の関係者になるべく迷惑をかけず、その一方で読者になるべく情報を提供する。その両立を目指して赤本は妥当な手法を考えている。それは厩舎クレジットに限らないのだが、厩舎クレジットは好例だと思う。
普通に読んでいるとお分かりにならないだろうが、クレジットひとつにもこのような背景があるということを、知っておいていただけるとPOGなり赤本なりへの理解が増すことだろう。
※次回の更新は、4/30(金)を予定しています。
筆者:須田鷹雄
1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。netkeiba.comでは「
回収率向上大作戦」も担当している。
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