今年はディープインパクト産駒で大騒ぎになるんだろうな〜、と漠然と考えてはいたが、やはりそうなんだと再確認したのがJRAブリーズアップセール。上場馬に1頭ディープインパクト産駒がいるというだけで、鈴木淑子さんまで見に来ちゃうわ、一般紙の取材は来るわでセリ場も例年より混んでいた。
落札後、カメラマンたちがその馬を撮ることになり私も混じらせていただいたのだが、私が「軸ずれてます」とか「詰まってます」とか注文をつけるごとに周囲から「なにやってんだ、さっさと撮らせろ」的な空気が醸し出され、あー、別業界の人なんだなーということが分かって、ある意味面白かった。
そんなことはともあれ、ディープインパクト産駒は走るのか?という命題が一番の問題である。
取材している限りで言うと、馬産地では「ディープインパクト産駒は成功する」という人にしか会ったことがない。
新種牡馬の産駒デビュー前には必ず「どうなんだろ?」といった会話が交わされる。そして、否定的な見解を聞くことも少なくない。今だから言えるが、キングカメハメハの時とか、ゼンノロブロイの時などは、特にそうであった(キンカメは実際に初年度成績はイマイチだったし、ロブロイは当歳時に評判が伸びず、2歳時にはある程度復活していたが)。
一方で、ディープインパクト産駒については良い話しか聞かない。ノーザンでなく社台ファームで聞いても「柔らかい仔が多い。つまらない怪我をしない」という話だった。
最近は初年度で関係者が産駒の特徴をつかみ、2年目でブレイクするという流れができているが、ノーザンファーム早来の秋田場長にうかがうと、初期〜中期育成では現2歳と1歳でやり方を変えたところはほとんど無いそうで、「初年度リスク」も無いのだろう。
私個人は、なにか問題があるとしたら「世間がハードルを上げすぎること」ではないかと思う。
ディープインパクト産駒といえど、すべてが出走してすべてが勝ち上がるわけではない。おそらくPOG期間の出走率は約80%だろうし、出走した中での勝馬率は良くて40%。つまり、故障などを除いて約120頭ほどの候補の中で、POG期間に1勝以上をあげるのは、40〜45頭。強気に見積もっても50頭だ。3歳4月に初勝利をあげるような馬も含めて、である。
参考までに、現3歳世代におけるメジャー種牡馬の4月25日時点でのデータを記しておこう。
◆キングカメハメハ
┗血統登録185 / 中央出走131 / 中央勝利46
◆アグネスタキオン
┗血統登録106 / 中央出走77 / 中央勝利33
◆スペシャルウィーク
┗血統登録125 / 中央出走97 / 中央勝利33
◆クロフネ
┗血統登録160 / 中央出走122 / 中央勝利61
◆ゼンノロブロイ
┗血統登録121 / 中央出走89 / 中央勝利30
◆フジキセキ
┗血統登録163 / 中央出走115 / 中央勝利34
先輩種牡馬をすべてアウトパフォームしたところで、4月末には60〜70頭の「イケてなかったディープインパクト産駒」が残る。一方で、重賞級・GI級の当たりはかなりの確率で出る。それだけ、「外さない意識」が重要ということだ。
では、どのような基準でディープインパクト産駒を選ぶべきなのだろう?
これについても秋田場長に取材したのだが、一番大事なことは「歩きがいいこと」、つまり関節の可動域が広くて父のような動きができることだろうとのことだった。母系が出てサイズが大きくなっても、この点を押さえていれば大丈夫とのこと。「ディープっぽい」と言われるような2歳が有望で、血統を聞くまで父が分からないようなのは良くない、と考えておくといいだろう。
さらに、カリカリしている馬は減点。そうならないよう、早くからガンガンやらないほうがいいかも、というお話も伺った。もちろん、赤本では以上のような点を意識してディープインパクト産駒の取捨を決めている最中である。
※次回の更新は、5/14(金)を予定しています。
筆者:須田鷹雄
1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。netkeiba.comでは「
回収率向上大作戦」も担当している。
出走前日の23:59まで指名OK!「POGダービー」で盛り上がろう!