前回に続いて、ドラフト戦略における超早ウマの扱いについて考えてみたい。
「山内厩舎」「マイネル」といった属性での取捨が難しくなったため、最近では調教時計、特に坂路の時計が人気を左右する傾向が強い。
もちろん、時計で人気になるということは昔からあった。ベテランのPOGファンなら懐かしい、15年前のタヤススリリング(イケてなかった馬的なイメージで記憶されているが、実はPOG期間にはそこそこ稼いでいる)などがその走りだ。
ただその時代は、ファンが未出走2歳馬の時計を知ることは容易ではなかった。いまはJRA-VANなどでその日のうちに坂路の時計が知れ渡るため、それが人気に直結しやすい。
問題は、それが有効な手段なのかどうか?ということである。
参考までに、3週目までにデビューした関西馬を対象に、以下のまとめをご覧いただこう。今年の2歳戦開始前日である6/18までにマークしていた坂路タイムの良い順・上位10頭である(デビューした馬のみが対象なので、いくら好タイムを出してもここには入っていない)。
52.0
ホーマンフリップ→1着
52.1
サミットストーン→6着
52.5
ホーマンルッツ→1着
52.6
タガノキズナ→7着
52.6
ラバーフロー→4着(2戦目1着)
52.8
ダイシンワイルド→4着
53.0
タイセイソルジャー→6着
53.0
ファンシービビッド→11着
53.0
エーシンチャージ→9着
53.5
レベルスピリット→9着
ちなみに関東馬について同様のことを着順だけ抽出してみると、6着(2戦目1着)、4着、15着、6着、1着、4着、2着、4着、12着、8着となっている。
上位10頭まで取ると下の方はたいして好タイムでもないということが影響しているとは思うが、それにしても網をかけるターゲットとしてはいまひとつな感じがする。
そこで負けた馬をよく見ると、特に関西馬において、坂路4ハロンのうち2ハロン目か3ハロン目でペースアップし、ラスト1ハロンの時計がかかっている(しかしトータルではソコソコの時計にまとまっている)ケースが目につく。
これはスタミナが無いか、気性的に抑えがきかないかのどちらかである可能性があり、競馬へ行って結果が出ないのも納得がいく。
そこで発想を変えて、トータルの時計を捨て、4ハロンの流れを考える+上がりを重視するという方法論のほうが良いのではないかと思う。
ドラフト後の時計ではあるが、デビュー直前の6/23にホーマンルッツとホーマンフリップは16.9-14.7から入って3Fめが12.7〜8、上がり1Fが12.1秒という併せ馬を消化している。また、ラバーフローはデビュー前に52.6秒を出したときは14.8-13.5-12.8-13.0だったが、2戦目で勝つ直前は15.2-14.0-12.6-12.4と上がり重視に切り替えている。
1年後の話になるが、ドラフト戦略としては、「トータルの時計が地味、上がりだけが速い」という馬がいちばんありがたいということになるのではないだろうか。
筆者:須田鷹雄
1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。netkeiba.comでは「
回収率向上大作戦」も担当している。