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週刊サラブレッドレーシングポスト

  • 2002年07月24日(水) 00時00分
 今シーズンのイヤリングマーケットの幕開けを飾る、キーンランド・ジュライセール(7月15日・16日、ケンタッキー)は、関係者にとって極めて厳しい結果となった。総売り上げ4238万5千ドルは、前年比32.0%ダウン。平均価格は前年比31.4%ダウンの487,184ドルで、中間価格も前年比29.7%ダウンの30万ドル。販売側の希望価格に届かず主取りになった馬の比率(バイバック・レート、主取り率)も、全体の40.4%に達した。ジュライのマーケットは、1994年を"底"に極端な右肩上がりを続けていたが、今年の数字は、平均価格が4年前の1998年の水準、中間価格が5年前の1997年の水準に逆戻りし、総売り上げに至っては"底"の1994年を下回り、手元に数字が残っている1980年以降では最低の数字で、主取り率も同様に1980年以降の最悪という、大クラッシュとなった。

 御承知の如くアメリカではここ3週ほどの間に、企業の粉飾決算発覚に端を発した株式市場の急落があり、これに連動した世界的ドル売りが始まるなど、一般景気に強い懸念材料があった。従って開催前から、ジュライと言えども決して楽観視は出来ないという見通しはあったものの、実際の結果は事前のあらゆる予測を越えた暴落となった。

 理由のひとつとして取り沙汰されているのが、上場馬の質が芳しくなかったこと。すなわち、カタログに記載されている血統のクオリティーに比べて、馬体考査面での水準が落ちる上場馬が多かったという点が挙げられている。そうした購買者側の評価は、セール2日前から会場で行われていた下見を通じてじわじわと販売者側に広がり、セール開始時には「どうやら購買者たちはあまり高額の投資をしないようだ」という観測が市場を支配していたという。そんな事前予測に敏感に反応した販売者が起こしたリアクションが、上場予定馬の『上場取り消し』であった。希望価格で売れる見通しが立たないのなら、ここでの販売は中止して、秋までに馬体を作り直して、9月のセプテンバーセールで売ろうというのである。大手のレーンズエンド・ファームなどは、2日目に予定していた6頭の上場をすべて取り止めたほどであった。結局、カタログに記載された馬の1/4以上にあたる54頭が上場を取り消し、なおかつ主取り率が高ければ、総売り上げが伸びないのも道理だ。平均価格や中間価格がせいぜい4〜5年の逆戻りで済んだのに対し、総売り上げは20年来の最低となった背景には、そんな事情があったのである。

 さて、これでアメリカのブラッドストック・マーケットは地滑りを起こすのか、と思いきや、実は、ジュライの直後に行われたファシグティプトン・ケンタッキー・イヤリング(7月17日・19日)は、平均価格が前年の微増という堅調に終わった。ファシグティプトン・ケンタッキーは平均価格が10万ドル弱という市場で、この価格帯は購買意欲が強いとの見方もされているが、果たして実態はどうか。月が代わって8月6日からニューヨークのサラトガで行われるファシグティプトン・サラトガ・イヤリングの結果が、これまで以上に注目される展開となっている。

 ちなみに、キーンランド・ジュライにおける日本人によると見られる購買は4頭。日本人による最高価格は、父がヘネシーで、祖母がCCAオークス2着、エイコーンS3着の実績があるフィエスタリブレという良血の牝馬で、32万5千ドルだった。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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