ふと思い立って、馬体重について調べてみた。
きっかけは、某年のダービーの成績表を見て、やけに小さい馬が多いなと思ったからである。
馬体重発表は1961年から行われているのでその気になれば50年分できるのだが、まずはPCで簡単に処理できるところで、1986年以降のダービー出走馬について調べてみた。
なんとなく感覚で「最近のサラブレッドは大きくなった」と思っていたのだが、その感覚はある意味で合っており、ある意味では間違っていた。
まず前提として、ダービー出走馬は現在18頭、昭和末期でも24頭しかいないので、ちょっとしたことで各種指標が変化しやすいということは御承知おきいただきたい。例えば抽選でA馬が通るかB馬が通るかによって、平均馬体重が5キロくらい動くことはありうるわけだ。
だから各年度の細かい数字というよりはおおまかな流れを見たのだが、ダービー出走馬は
×「最大サイズの馬が大きくなった」
○「小さい馬が少なくなった」
という傾向にある。
ここ10年のダービー出走馬で最高馬体重の馬は536キロだが、これは大型ダービー馬として有名なラッキールーラ(1977年)の534キロと大差ない。
一方で、ダービー出走馬中に430キロ未満の馬がいたケースはここ10年だと1回しかないが、それ以前の15年では11回あり、うち6回は410キロ台の馬が出走していた。
大きいサイドがあまり変わっていない一方で小さいサイドが大きくなった(ややこしい)結果、標準偏差は小さくなる傾向にある。
これを1985年以前にまで遡ってみれば日本産サラブレッドの馬格変化が分かるかもしれないし、「相馬眼」という概念の変化にも迫れるような気がするが、とりあえず今日のところは1986年以降に限定して話を進めたい。
続いて調べたのが、1〜6月の3歳重賞に出走した牡馬についてである。
419キロ以下という馬は25年間でのべ60走しかしていないので、420〜439キロ帯について調べてみると、明らかに減っている。2000年を境に、それまで毎年20走前後あったものが、10走前後に減っている。その影響もあって、439キロ以下の重賞勝ちも98年中スポ杯4歳Sのトキオパーフェクト以降出ていない。頭数が減るのだから「当たり」の数が減るのはやむをえないが、率の面でも悪くなっている手ごたえがある。
反対に重い側は、500〜519キロは数も成績も少し良くなったという印象。520〜539キロは出走数が明らかに増えている。馬を大きく作るようになったことと、技術が進んで無事にレースに送り出せる確率が高まったことが影響しているのだろう。
ただ、540キロ以上というとさすがに該当例自体がごく少ない水準で推移したまま。ユビキタス(560キロで重賞勝ち)のようなケースは珍しいと考えてよい。このあたりのサイズが飼養管理の(計算が立つ)限界なのかもしれない。
今回は大雑把に見ただけだが、これはPOGはもちろん、1歳セールの購買方針にも参考になりそうな話ではないだろうか。
筆者:須田鷹雄
1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。netkeiba.comでは「
回収率向上大作戦」も担当している。